労働新聞 2003年11月5日号 トピックス

世界のできごと

(10月20日〜10月29日)

イラク復興資金拠出、米の思惑適わず
 スペインのマドリードで開かれていた「イラク復興支援国会議」は10月24日、総額400億ドル(約4兆4000億円)規模の資金を拠出することを決めた。米国がトップの203億ドルと5割以上を占め、次いで日本が4年間で総額50億ドル(約5500億円)を拠出、世界銀行、国際通貨基金(IMF)などと合わせると300億ドル以上に及び、逆に、資金拠出に対する各国の消極姿勢を示すものとなった。会議に出席したパウエル米国務長官は会議の「成功」を強調したが、米国が目指した550億ドルには到底及ばなかった。欧州では開戦に反対したフランス、ドイツは外相級を派遣せず、国別拠出を見送った。欧州委員会は欧州連合(EU)共通予算からの拠出を決めたが、これも04年分に限ったもので、アフガニスタン向けのような多年度拠出には応じないなど、イラク「復興」をめぐる米欧対立を反映した。今回の会議は、戦況悪化などイラク統治で困難に直面した米国が肝いりで開いたものであったが、逆に米国の孤立ぶりばかりが目立った。

APEC、米日の北朝鮮敵視策空振り
 アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議は21日、議長総括を発表して閉幕した。本来、同会議は経済問題が中心議題だが、今回は米国の強い意向により、安保や政治問題が中心に据えられた。しかし、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の核問題について「6カ国協議の継続を支持する」とした議長総括の文書化は中国などの意向で見送られ、あくまで文書化を目指し北朝鮮への「国際包囲網」を強めたかった米日の思惑は空振りに終わった。また会議に出席したブッシュ米大統領は「反テロ戦争」を強調、イラク「復興」への支援も求めたが、議長総括では触れられなかった。また経済分野では、参加国の間で意見の違いが目立つ為替問題について、本格的議論を避けた。先の世界貿易機関(WTO)閣僚会議の失敗を受け、市場開放では一般的合意が図られたが、「自由競争は途上国には脅威」(マハティール・マレーシア首相)との正論が表明されるなど、米主導のグローバル経済の押しつけにも批判が出された。

イスラエル、さらなる占領固定化策す
 イスラエルのシャロン首相は24日、ガザ地区に続き、ヨルダン川西岸の東側にもフェンスを構築、同地域全域を分離する方針を明らかにした。ヨルダン川西岸は第3次中東戦争でイスラエルがパレスチナから奪った地域であり、フェンス建設はその占拠を固定化するもの。米国の支援を受け、パレスチナ住民に対する事実上の圧殺攻撃を加えているイスラエルだが、国内では与党が地方選で大敗するなど、国民からも批判の声が出ている。

人民のたたかい

(10月20日〜10月29日)

 イタリアで24日、ベルルスコーニ政権による年金改悪に反対して労働総同盟(CGIL)など3大労組による全国4時間ゼネストが闘われた。約1100万人が参加、労組側は政府の方針転換がなければ12月後半にも8時間ストを行うとしている。
 ワシントンなどで25日、米軍によるイラク占領に反対してデモや集会が開かれた。ホワイトハウス前では「ブッシュはうそつき」と書かれたプラカードを手に約10万人が参加した。
 インドネシアのジャカルタで20日、イスラム政党関係者ら約1000人が抗議デモを行った。参加者は「ブッシュは世界のテロリスト」と叫んだ。
 オーストラリアの首都キャンベラで23日、数千人の市民がイラク占領反対を訴えてデモ行進した。またメルボルンなど3大都市でも同様の行動が行われた。

日本のできごと

(10月20日〜10月29日)

衆院選告示、強まる財界の策動
 第43回衆議院選挙が10月28日、告示された。小泉政権下で初の総選挙となるが、480の議席に対して1159人が立候補した。争点であるべき小泉政権の対米追随外交、国民に痛みを強いる構造改革路線や、財界の進める保守2大政党制への態度について、与野党の政策に大差はない。財界は「マニフェスト選挙」「政権選択問う選挙」などと、総選挙を通じた保守2大政党制への策動を強めている。(社説参照)

日本の突出際立つイラク「復興」支援
 スペインのマドリードで開かれたイラク「復興」支援国会議で24日、川口外相は、07年までの4年間で総額50億ドル(約5500億円)の支援を表明した。うち15億ドルは、04年度分として無償供与する。また、米国は、わが国の約70億ドルに及ぶ対イラク債権を削減または繰り延べすることをも求めている。支援は増額を求められる可能性もあり、イラク占領はもちろん、「復興」支援金問題でも窮地にある米国への「貢献」は、わが国を国際的孤立に導くものだ。

財務省、地方債の財投引き受け縮小へ
 財務省は24日、財政難を口実に、地方自治体の発行する赤字地方債を、郵貯・簡保などを原資とする財政投融資(財投)で引き受ける総額を縮小、段階的に廃止する方針を決めた。赤字地方債や地方の公共事業向け財投は、地方の財政危機が深刻さを増した2000年以降急増し、現在は年間総額約50兆円に及ぶ。すでに、小泉政権の「3位一体改革」で地方交付税の削減などが行われようとしており、地方向け財投が縮小されれば、地方自治体は行政を行うことさえ不可能になる。多国籍企業のための効率的で強力な行政システムを狙う地方行財政改革に対して、地方の怒りはいっそう高まるだろう。

りそな、中小犠牲の「健全化計画」
 実質的に国有化されているりそなグループの「経営健全化計画」が29日、明らかになった。計画では、05年3月までに4000人もの労働者をリストラする。また、中小企業向け融資を前年度比で1兆円減らすという。竹中金融・経済財政担当相は「計画」を「今後のモデルになる」と高く評価している。公的資金(血税)投入を受けながら、中小に過酷な貸し渋り・貸しはがしを行い、地域経済を崩壊に追い込んできた大銀行に、これまで以上にリストラや中小への融資削減を認めるとは、まさに労働者・中小犠牲の政治である。

日産、ソニーなどが大リストラ発表
 日産は25日までに、全国に約170ある系列販売会社を、05年までに100程度にまで統合・整理する方針を決めた。これは、ゴーン社長による経営合理化策の最終仕上げというべきもので、当然、労働者に犠牲を強いる。ソニーも28日、2万人(国内7000人)ものリストラ計画を発表、傘下の金融部門も統合・合理化する。カネボウも化粧品部門を、事実上花王に売却、2800人を削減する。大企業による、グローバリズムに生き残るための容赦のないリストラが続いており、労働者のがまんは限界だ。

小泉「農業鎖国」発言に怒り続々
 小泉首相は21日、タイで各国とのFTA(自由貿易協定)締結に関して、わが国が「農業鎖国」をしているかのように述べた。しかし、歴代売国農政により、すでにわが国は先進国随一の農産物輸入国であり、食料自給率はカロリーベースで40%に過ぎない。発言はこの事実をねじ曲げ、世界貿易機関(WTO)やFTA交渉でのさらなる市場開放に道を開くもの。小泉発言に対し、農民から「農業の現場を知るべきだ」(原拓生・JA全青協会長)など怒りの声が上がっているが、当然だ。

コメ作況、青森で最悪の53
 コメ作況(10月15日時点)が28日発表され、「著しい不良」(90以下)が7道県となった。青森が前月より18ポイントも悪化し最低の53となったのをはじめ、宮城69、北海道73などで、全国平均も90。低温や日照不足が理由とされているが、真の責任は、国の独立の基礎である食料生産を犠牲にしてきた、歴代農政にある。


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