労働新聞 2003年10月25日号 トピックス

世界のできごと

(10月10日〜10月19日)

米欧対立の中、国連が新決議採択
 国連安全保障理事会は10月16日、イラクへの多国籍軍派遣と復興に関する「決議1511」を採択した。全会一致で採択されたものの、米国が提案した決議案は、国連の役割拡大を求める欧州などの抵抗で、4回にわたり修正を余儀なくされ、米国の思惑通りに進まなかった。決議採択後、シュレーダー独首相は「決議案には不満が残る」と述べ、独仏ロ3カ国は米国が求めるイラクへの派兵や追加資金支援にはそろって応じない方針を明らかにした。ブッシュがもくろむ米国一極支配は破たんしつつあり、多極化の流れが加速している。

韓国大統領、信任投票実施を発表
 韓国の盧武鉉大統領は13日、自らの信任を問う国民投票を12月に行うことを電撃的に発表した。就任直後に90%以上あった支持率は、経済悪化や前秘書官の逮捕などで、16.5%までに下がるなど、苦境に立たされている。盧大統領は盛り上がる反米気運を背景にして生まれたが、米日両政府は、少数与党下で朝鮮民主主義人民共和国への「太陽政策」を堅持する同政権にさまざまな圧力を加えていた。国民的支持の高い盧大統領は、再度国民に信を問うために国民投票に打って出た。

ボリビアで親米サンチェス政権崩壊
 南米ボリビアのサンチェス大統領は17日、天然ガス資源を米国に売り渡すことに反対する抗議行動の高まりを受けて辞任に追い込まれ、米国に亡命した。大統領は軍隊を使って反政府デモ参加者70人を殺害するなど弾圧したが、交通労働者や公務員が全国ストで闘うなど、大統領辞任を求める闘いは全国に広がっていた。親米政権の崩壊は、南北米大陸にまたがる米州自由貿易地域(FTAA)の交渉にも影響を与えるもので、米国の南米政策には大きなつまづきとなる。

中国が有人宇宙船打ち上げに成功
 中国は15日、初の有人宇宙船「神舟5号」の打ち上げに成功した。有人飛行はロシア、米国についで3番目となる。胡錦涛国家主席ら新指導部は、中国の産業力の象徴として航空宇宙方面での高い技術水準を世界に誇示し、国際社会での存在感と発言力をいっそう高めようとしている。宇宙航空・軍事技術で圧倒的な力をもつ米国は、軍事戦略の見直しを迫られるだろう。

人民のたたかい

(10月10日〜10月19日)

 イラクのバグダッド北東部サドルシティーで10日、駐留米軍とイラク人との間で発生した銃撃戦でイラク人2人が殺害されたことに地元住民が抗議。約1万人が集まって米国非難のスローガンを叫んだ。
 韓国のソウル、釜山など10都市で11日、イラク追加派兵に反対する集会、デモが行われた。ソウル集会には4000人が参加し、「米国は侵略戦争を中止し、イラクから出ていけ」と声をあげた。
 ブッシュ大統領がフィリピン入りし米比首脳会談が行われた18日、マニラ市内で数千人が反米デモを繰り広げた。参加者は米国旗を燃やすなど、抗議行動を繰り広げた。
 アジア太平洋経済協力会議(APEC)の一連の会合が開かれているタイのバンコクで19日、経済のグローバル化や対テロ戦争を主導するブッシュ米政権に反対するデモが行われ、約2000人が参加した。参加者は「APECは貧しい人たちを犠牲にする吸血鬼」「米国は平和に対する脅威」などと書いたプラカードを掲げ、「ブッシュは出て行け」とシュプレヒコールしながら、デモ行進した。

日本のできごと

(10月10日〜10月19日)

日米首脳会談、イラク支援で踏み込む
 小泉首相は10月17日、来日したブッシュ米大統領と会談した。ブッシュの来日は、米国のイラク占領に対し、日本にカネと兵隊を出させるための「圧力」。日本政府はこれに合わせてイラク「復興」への無償資金供与を決定、自衛隊の派遣準備を指示するなど、米国の要求に最大限こたえた。ブッシュは「小泉は指導力を発揮した」とほめあげた。世界で孤立する米国にきりなく追随するわが国政府の売国的本質が露呈した会談となった。(社説参照

政府、イラク占領に巨額拠出決める
 政府は15日、イラク復興支援に2004年分として総額15億ドル(約1650億円)の無償資金供与を行うことを発表した。総額は、4年間で、50億ドルにも及ぶ見込450億円)や欧州連合(EU)の2億ユーロ(約260億円)の拠出と比べても突出している。ばく大な国民の血税を米国のイラク占領に使うことなど、許されない。

政府、イラクへ自衛隊派兵準備を指示
 政府は14日、イラク復興特別措置法に基づく自衛隊のイラク派遣について、陸上自衛隊の派遣先をイラク南部とする方針を固め、防衛庁に対し派遣手続きとして必要な派遣準備指示を出した。政府は陸自の先遣隊約150人を年内に派遣する準備を進めている。中東人民に銃口を向ける自衛隊のイラク派遣は、許されない。

衆議院解散、総選挙へ
 衆院が10日、解散された。これを受けて臨時閣議は、衆院選の日程を「10月28日公示、11月9日投票」とすることを正式決定した。支配層はマスコミを使い、連日のように、保守2大政党制に向けたキャンペーンを展開している。「マニフェスト選挙」などとも言われるが、与野党とも財界の意を受けたマニフェスト・政策を掲げており、目立った違いはない。「政権選択問う選挙」という宣伝はまったくの幻想で、欺まんでしかない。このペテンを打ち破り、真に闘う砦(とりで)を形成することが、求められている。

メキシコとのFTA延期に
 日本とメキシコの自由貿易協定(FTA)締結に向けた閣僚交渉が16日、農産物などの分野での対立が解けずに決裂した。財界・多国籍大企業は、世界貿易機関(WTO)の多国間交渉がとん挫する中、FTAを推進し世界で荒稼ぎしようとしている。シンガポールとのFTA実績しかない日本は、メキシコを皮切りにFTA拡大をもくろんでいたが、それがつまづいた格好。危機感を持った財界は、マスコミなどを使い「もっと農業改革を」とさらなる農民・農業への犠牲転嫁をあおっている。こうした農業への犠牲押し付けに対する、農民の反撃は当然だ。

日本経団連が新たに規制改革要望
 日本経団連がまとめた2003年度の規制改革要望(306項目)が、17日までに分かった。医療分野では、医薬品の一般小売店での販売や医師の処方せんが必要な医療用医薬品に関する規制緩和、株式会社による病院経営参入などをあげている。また労働分野においては、派遣対象業務の拡大と派遣期間制限のさらなる見直し、さらに、大店立地法の緩和や、郵便貯金と簡易保険の見直しなどをあげている。総選挙を前に財界の要求を公けにしたことは、候補者に財界ための改革の実行をより強力に迫るためである。財界の利益のために中小商工業者の経営や国民生活に犠牲を強いる規制緩和は、絶対許されない。

道路公団騒動、小泉の改革つまづく
 日本道路公団の藤井総裁が石原国土交通相からの辞表提出要求を拒否して以降、藤井総裁の解任をめぐっての騒動が続いている。17日に行われた聴聞でも、藤井総裁は辞任要求に激しく抵抗した。小泉首相は総選挙を控え、わざわざ新民主党の結党大会に合わせて解任を発表してみせた。道路公団総裁の人事に手をつけることで、公団の民営化を中心とする改革の「実行力」をアピールすることを狙った小泉だが、思わぬ「抵抗」で、そのもくろみはつまずいている。


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