労働新聞 2003年10月5日号 トピックス

世界のできごと

(9月20日〜9月29日)

窮地の米国、復興分担呼びかけ
 国連第58回総会の一般演説が9月23日、ニューヨークの国連本部で始まった。ブッシュ米大統領は、イラク「復興」のための負担分担を呼びかける演説を行い、国際社会に頭を下げることに追い込まれた。イラク統治が破たんし、国際社会で孤立を深めている米国は、国連新決議で現状を打開しようと画策しているが、独仏を中心とする欧州などの反発で守勢に立たされている。イラク戦争を事実上容認したアナン事務総長が、米国のイラク先制攻撃を強く批判する演説を行ったことも、その反映である。しかし、米国はイラク統治の主導権を国連に移すことは執ように拒否しており、この身勝手な態度に、国際社会はさらに反発を強めている。

マハティール首相が米帝を鋭く批判
 マレーシアのマハティール首相は25日の国連一般演説で、「今われわれが目にしているのは、欧州帝国主義の再来だ。われわれはもはや古い植民地主義は形だけのものとなったと考えていた。しかし、こんにち外国の軍隊による物理的占領という事態に現実に直面している。国連は足下から崩壊しており、弱者や貧困を救済できなくなっている」と、米帝国主義を鋭く批判した。国連総会では、首相以外からも米国の無法なイラク攻撃を激しく批判する声がごうごうとわき起こり、米帝国主義への批判は世界の大勢となっている。

米国と独、仏、ロのかけひきが激化
 仏独ロ首脳は24日会談し、イラク「復興」のための国連新決議に関し、3カ国が共同歩調をとることを確認した。こうした中で、ブッシュ米大統領は23日にシラク仏大統領、24日にはシュレーダー独首相、27日にはプーチン露大統領と会談、関係修復を演出した。しかし、イラク統治や朝鮮民主主義人民共和国の「核」問題などでの対立は深く、帝国主義国間の激しいかけひきと闘争が繰り広げられている。

G7で為替問題が最大の課題に
 アラブ首長国連邦のドバイで開いていた7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議は二十日、「市場原理に基づいた為替相場の柔軟性」の必要性を強調した共同声明を発表して閉会した。為替問題が最大の課題とされたことは、膨大な借金を抱えた米国への輸出に、日本や欧米などの経済が依存している構造が原因。会議では日本の円売り介入が批判され、日本は為替政策をしばられる結果となった。一方、日米は中国元の切り上げ圧力をかけようとしたが、欧州との足並みがそろわず、人民元の切り上げでは合意できなかった。会議では、イラク復興資金の分担問題も話し合われた。

人民のたたかい

(9月20日〜9月29日)

 英国の「戦争ストップ連合」は27日、「ノーモア戦争、ノーモアうそ」をスローガンにロンドンで集会とデモを行った。25日の世論調査によればブレア首相に「不満」が61%となり、補欠選挙で労働党が敗北するなど首相への批判が高まっている。
 米自治領プエルトリコ東部にあるルーズベルトロード海軍基地閉鎖が24日、米下院で決まった。プエルトリコでは、米軍基地撤去の運動がねばり強く闘われており、闘いの成果である。
 中米のパナマで23日、年金や公的医療制度などの基礎となる社会保障基金の民営化に反対する労働者の24時間ストが全国で行われた。ストには、公立学校教員、建設労組など主要な労組が参加。首都パナマ市やコロン市など全国で数万人がデモを行った。
 イスラエルのテルアビブで20日、平和行進が行われ、6000人が参加。参加者は強硬姿勢を強めるシャロン政権を厳しく批判し、退陣を求めた。

日本のできごと

(9月20日〜9月29日)

小泉再選、総選挙と米国、財界に配慮
 自民党総裁選挙が9月20日、行われ、小泉首相が再選された。再選後、小泉は内閣改造と党役員人事に着手、21日に党の新3役を、22日には第2次改造内閣を発足させた。小泉は党幹事長に、拉致問題などで朝鮮民主主義人民共和国への敵視と排外主義を先頭であおった、安倍前官房副長官を起用した。また、米国や多国籍大企業からの要請が強かった竹中金融・経済財政担当相や川口外相を続投させ、彼らの意向に忠実な人事を行った。一方、奥田・日本経団連会長は、小泉政権を支持しつつも「50点〜60点」と、改革のいっそうの加速化を迫っている。

民主・自由合併、2大政党制策動進む
 民主党の菅代表と自由党の小沢党首は24日、合併協議書に署名した。これにより、所属国会議員204人の新しい民主党が発足した。これを受け、支配層はマスコミを使って「政策論争による政権交代」への幻想をあおり、総選挙を経て2大政党制をつくりあげようと画策している。連合も、「好意を持って見守っていきたい」(草野事務局長)など、率先してその実現に加担している。だが、自民党以上の対米追随と財界優先の政策を掲げる新民主党に期待することなど、まったくできない。

財界、献金エサに改革競争あおる
 日本経団連は25日、会員企業に政治献金を呼び掛ける際に示す、政党の成績表の評価項目とする10項目の「優先政策事項」を発表した。財界として重視する法人税率引き下げなどの税制改革や、消費税率引き上げの検討を含む社会保障改革のほか、道路公団、郵政民営化なども盛り込んでいる。この「成績表」を踏み絵にした政治献金をエサに、財界のための改革を競わせるという、悪らつな策動である。

デフレ深化、深刻な国民経済
 総務省は26日、9月の東京都区部の消費者物価指数を発表した。価格変動の激しい生鮮食品を除いた指数が前年同月比0.3%下落の97.6で、前年割れは99年10月から48カ月(4年)連続となった。例外は医療費とたばこで、自己負担増などから「保健医療」は同5.3%上昇、たばこも増税で8.2%上昇した。これらは、デフレのいっそうの深刻化を示しており、政府の「景気上向き」の声とは裏腹に、デフレの深化と国民経済の深刻な状況を裏付けている。

コメ不作、求められる農民への救済
 農林水産省は26日、9月15日現在の作況指数を正式発表した。全国平均は92の「不良」で、10年ぶりの不作。都道府県別の作柄は北海道、青森、岩手、宮城の4道県が「著しい不良」(作況指数90以下)。野菜も「93年冷害時より悪い」(種市・青森県農協中央会会長)と見込まれている。加えて、北海道では十勝沖で起こった地震の被害も甚大だ。政府は、東北や北海道を中心に、苦境を強いられている農民への救済措置を急ぐべきだ。

旧日本軍遺棄の毒ガス、国に賠償命令
 東京地裁は29日、旧日本軍が中国に遺棄した毒ガス兵器や砲弾で被害を受けた中国人被害者と遺族計13人に対し、慰謝料計約1億9000万円を支払うよう、政府に命じた。片山裁判長は「日本政府は遺棄された兵器に関する情報を中国側に提供せず、被害を防止する措置を取らなかった」と指摘した。旧日本軍の遺棄兵器による被害者は約2000人に上るといわれ、現在も中国に約70万個の兵器が残っている。被害者に対する補償と遺棄兵器の安全な処分に日本政府は責任があり、緊急の課題だ。

社民弾圧目的の「脱税」キャンペーン
 東京国税局が、印刷会社「印刷センター」に対し、2002年3月期までの5年間で6千数百万円の所得隠しを指摘、追徴課税していることが25日、分かった。印刷センターは社民党や自治労などが出資している会社で、既に追徴課税の納付を済ませている。マスコミは「社民党関連会社が悪質な所得隠し」と、総選挙前のこの時期のに大々的な報道を行っている。これは、2大政党制の完成を急ぐ支配層の、意図的な攻撃であることは明白だ。


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