労働新聞 2003年9月5日号 トピックス

世界のできごと

(8月20日〜8月29日)

6カ国協議、変わらぬ米の北朝鮮敵視
 北京で開かれていた朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の「核開発」問題をめぐる6カ国協議(米国、中国、ロシア、韓国、北朝鮮、日本)は8月29日、閉幕し、問題の平和的解決、対話の継続など6項目の合意事項が議長総括として発表された。協議の中で北朝鮮の金永日外務次官は、米国との不可侵条約締結や外交関係樹立などを求めた。しかし、米国のケリー国務次官補は「北朝鮮を侵略する意図はない」と繰り返すのみで、不可侵条約締結を拒否。また、核問題でも「検証可能かつ再開不可能」な形で核開発の放棄を求めるなど、敵視政策の根本的な転換は示さなかった。こうした米国の姿勢こそ朝鮮半島における危機の根源だ。(社説参照

米財政赤字、2年連続過去最悪
 米議会予算局(CBO)は26日、今年10月から始まる04会計年度の財政赤字が、4800億ドル(約57兆円)に達すると発表した。03会計年度も4010億ドルの赤字になるとされており、2年連続で過去最大の赤字を計上する。13年までの10年間では、赤字は累積1兆4000億ドルになると予想されている。原因として、3年連続の減税や景気低迷による税収不足、そして2つの戦争(アフガニスタンとイラク)と、テロへの国内治安対策がある。03年上半期の貿易赤字も過去最大となり、80年代に米国経済を苦しめた「双子の赤字」の問題が、より大規模に再燃している。行き詰まるイラク統治問題と併せて、来年の選挙で再選目指すブッシュ大統領にとっては、アキレス腱になるに違いない。

イラク統治で米欧対立するが
 バグダッドの国連現地本部爆弾テロ事件を受けて米政府は20日、米英軍以外の国々に部隊派遣を求める新たな国連安保理決議に向けた準備を開始した。ブッシュ大統領も、イラクへさらに多くの外国部隊が展開することに期待を表明した。しかし、あくまで米英などの暫定占領当局(CPA)が主導権を握ることを狙っており、国連主体のイラク統治を主張している仏独などとのあつれきが、再び表面化している。フランスのドビルパン外相は22日、米英軍による占領体制を改めて批判した。しかし、イラク国民にとっては米国主導であれ、国連主体であれ一方的な占領・統治には違いなく、抵抗は今後も続くであろう。

パレスチナ情勢、米戦略行き詰まり
 パレスチナ自治区ガザで21日、イスラエル軍によるミサイル攻撃でイスラム武装勢力ハマスの最高幹部が死亡した。その後もイスラエルは、ハマス活動家を次々に殺害した。またイスラエルはガザ地区を3区域に分断、ヨルダン川西岸のジェニンに侵攻、住民へのさらなる弾圧を行っている。これに対し、ハマスなどは6月末から実施してきた停戦協定を破棄するなど、米主導のロードマップ(行程表)は瓦解の危機にひんしている。パレスチナ情勢の新たな激化は、イラク占領の行き詰まりと共に、米国の中東政策が窮地に陥っていることを示すものだ。

人民のたたかい

(8月20日〜8月29日)

 韓国で21日、トラック運転手らによる労組、貨物連帯が輸送料値上げなどを求め無期限ストに突入した。全国で輸送網が混乱し、港湾機能もマヒした。また7月末から続いていた起亜自動車で続いていたストは26日、労組が会社側から基本給8.8%昇給、一時金支払い、週休2日制導入などを約束を取り付け、終息した。
 ブラジルで貧困地域で働く女性約4万人が、ルラ大統領に対し、土地の再分配と、暴力・差別の一掃という公約を果たすよう求めてデモを行った。
 パレスチナ自治区ガザ市で22日、イスラエルによるハマス幹部殺害に抗議して数万人がデモ行進を行った。2000年9月のインティファーダ以来最大規模。参加者は、イスラエルへの反撃を叫んだ。

日本のできごと

(8月20日〜8月29日)

政府、6カ国協議で拉致問題に終始
 朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の「核開発」問題をめぐる6カ国協議が8月27〜28日、中国・北京で行われた。日本政府は拉致問題にこだわり、米国の敵視政策のお先棒を担いだ。(社説参照

万景峰号入港で異常な敵視策動
 北朝鮮の貨客船「万景峰号」が25日、新潟港に入港した。厳戒態勢の下、国土交通省は執拗(しつよう)な「検査」を実施、5項目の「是正」を命じた。だが、命令はいずれも軽微なもので、ためにするものである。現に、安倍官房副長官は以前、「万景峰号の整備不良を指摘すれば、北朝鮮を経済的に追い込める」などと発言した。また、23〜24日、岡山では在日朝鮮人系金融機関に銃弾が撃ち込まれる事件が発生、福岡でも、朝鮮総聯県本部と金融機関近くで不審物が発見された。これら、テロを含む排外主義、北朝鮮敵視は、アジアと共生すべきわが国の国益に反するものだ。

小泉首相、改憲案とりまとめを指示
 小泉首相は25日、05年11月までに憲法「改正」案をとりまとめるよう、自民党に指示した。首相は、「戦争放棄」を規定した第9条は「常識的に考えておかしい」などと述べ、「戦力」解釈の見直しを強調した。これは支配層が、イラク派兵など、対米追随の集団的自衛権行使と政治軍事大国化に踏み込んだ現状を、さらに押し進めようとしていることの現れ。菅・民主党代表は「思いついたような話」と小泉を「批判」したが、民主党の大部分は改憲派で、小泉と変わらない。

産業再生機構、「支援」3社を決定
 産業再生機構は28日、対象の第1陣として、九州産業交通、ダイア建設、うすい百貨店の3社を決めた。近日中に三井鉱山も指定され、3年以内の再建を目指すという。同生機構は10兆円枠の血税を使って不良債権を買い取るなどし、債務処理を進める。金融機関のもつ不良債権処理の一環であると同時に、不採算部門売却や労働者の解雇などリストラを断行、身軽になった企業を外資に売り渡す露払い役でもある。「5年間に100社を再生する」というが、膨大な中小零細企業は倒産・廃業で「再生」どころではない。

コメ作柄、東北などで「著しい不良」
 8月15日時点のイネの作柄状況が27日、発表された。北海道、青森、岩手、宮城の4道県が「著しい不良」となるなど、93年以来の不作となることは確実。東北地域を中心に、農家収入は「半分くらいになる」ともいわれる。昨年の「コメ政策大綱」で減反が「自主化」され、さらに世界貿易機関(WTO)交渉で関税上限枠が問題になるなど、わが国農業は土壇場だ。農民が安心してコメづくりを行える農政確立こそが、求められている。

合併債急増へ、財政難いちだんと
 総務省は来年度予算で、合併自治体だけに認める合併特例債の発行枠を大幅拡大する方針を決めた。予算額は、今年度の2.5倍に当たる5000億円を予定。来年度は、合併特例法の期限(05年3月)前の最終年度であり、特例債で市町村合併を誘導しようというもの。市町村合併は、多国籍大企業の国際展開を支えるための、効率的で強力な行政システムづくりを狙うものだ。特例債で国・地方の借金はさらに拡大、結局、住民負担に跳ね返る。

非正規社員が 年で5割も増加
 厚生労働省は26日、03年版「労働経済白書」を発表した。それによると、パートや派遣など非正規社員は1451万人と、92年比で5割以上も増加した。白書は、これを「必然的な流れ」と開き直った。これは、国際競争力強化を目指す多国籍大企業が狙う、低賃金で、いつでも解雇できる労働形態を合理化するもの。非正規労働者を組織化して生活と権利を守る、労働組合の役割は重大だ。

消費支出減、失業率も高止まり
 7月の勤労者世帯の実質消費支出が、前年同月比で6%も減ったことが29日、明らかになった。減少幅は9年4カ月ぶりの水準。ボーナスの厚生年金保険料負担額が増えたことや、失業率が5.3%と高止まりしていることなどが背景。この上、奥田・日本経団連会長は消費税増税などを主張しており、国民収奪への反撃は必至だ。


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