労働新聞 2003年7月15日号 トピックス

世界のできごと

(6月30日〜7月9日)

中韓、北朝鮮「核」の平和解決で合意
 中国訪問中の盧武鉉・韓国大統領は7月8日、温家宝首相らと会談した。両国は、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の核問題を「対話を通じて平和解決すべき」などとする共同声明を発表、情報技術(IT)分野での協力拡大など、「全面的な協力パートナーシップ」をうたった。共同声明は、「北朝鮮の安全保障上の憂慮が解消されなければならない」と、北朝鮮の体制保障を求める中国の主張も明記された。北朝鮮への敵視政策を強める米日と、対話を重視する中韓両国の姿勢の違いが、いっそう明白となった。

米欧の争奪戦、各方面でさらに激化
 ブッシュ米大統領は7日、アフリカ5カ国の歴訪に出発した。ブッシュは8日、旧フランスの植民地で、奴隷貿易の拠点だったセネガルで演説、奴隷制度は「歴史上の大きな犯罪」と、心にもないリップサービスにつとめた。また米国は、かねて退陣を要求していたリベリアのテーラー大統領が亡命を発表したことを機に、1000人規模の米軍を同国に派遣することも決めた。米国は、歴史的に欧州の勢力圏であり、資源も豊富なアフリカ諸国を援助で引きつけ、あるいは軍事介入することで欧州をけん制、とりわけフランスのこの地域への影響力にくさびを打つことを狙っている。一方、欧州議会は2日、遺伝子組み換え農産物の禁輸解禁条件として、組み換え農産物を一定以上含む食品や飼料に、表示を義務づける法案を可決した。これは、組み換え農産物の無条件解禁を求める米国の反対を押し切ったもの。世界貿易機関(WTO)農業部門の年内合意は、事実上、不可能となった。イラク戦争後、米欧はし烈な勢力圏争いを強めている。

経済回復の根拠ない世界同時株高
 世界的に株価の乱高下が進んでいる。米国では、ダウ工業株30種平均が上昇、2日には、6月末から200ドル以上高い9200ドル台を記録したが、その後下落した。これにつられ、欧州・日本でも株価が変動、8日、日経平均が一時1万円を突破するなど、不安定な動きを示している。米国の大幅減税などが契機といわれるが、背景には、行き場のないマネーが投機先を求めていることがある。株高の影響を受け、米国の長期金利が3.7%上昇するなど、債券市場も不安定さを増している。米国の失業率が6.4%に上昇するなど、株高は実体経済の裏付けに乏しいものだ。

グローバリズムで、貧困さらに深刻化
 国連開発計画は8日、「人間開発報告書」を公表した。それによると、90年代を通じ、サハラ以南のアフリカでは1人当たり取得が0.4%減少、1日1ドル以下で暮らす貧困層は、47%から49%に増えた。中東欧・旧ソ連圏でも、所得は1.9%減り、貧困層は7%から20%へと急増している。グローバリズムにより、2割の先進国が世界の富の約9割を独占する一方、アフリカなど圧倒的多数の貧困層の状況は、悲惨さを増している。

人民のたたかい

(6月30日〜7月9日)

 韓国最大のナショナルセンター、韓国労総が6月30日、週休2日制の法制化などを求め、全国ストライキを行った。ストには8万人が参加、ソウルなど5都市での集会には5万人が参加した。また、民主労総も7月2日、9万人が参加して4時間ストを闘った。週40時間労働の法制化などを求めたもの。
 ブラジルで8日、政府の年金引き下げに反対して、公務員労組が72時間ストライキに突入した。ルラ政権は、公務員の年金受給資格年齢の7年引き上げなどを提案している。
 ブッシュ米大統領が訪問中のアフリカ、セネガルの首都ダカールで7日、イラク戦争などに抗議するデモが行われた。参加者は、「ブッシュは人殺し」と訴えた。
 アフリカのナイジェリアで9日、ナショナルセンターの労組会議(NLC)が石油値上げに反対して、8日間のストライキを打ち抜いた。

日本のできごと

(6月30日〜7月9日)

イラン石油開発に米圧力
 訪米中の谷内内閣官房副長官補(外交担当)は7月2日、アーミテージ米国務副長官らと会談した。米側はイランの核開発を理由に、日本がイランでの石油やガス開発計画を進めることは好ましくないと圧力を加えた。イランのアザガデン油田開発計画は、わが国の石油公団や商社が合同して進めてきたもの。日本側の正式な態度は明らかになっていないが、政府は近く、外務省高官をイランに派遣、米国が求める査察に応じることを求めるという。米国は、第3国企業をも制裁できる「イラン・リビア制裁強化法」の発動をちらつかせながら、日本側に開発断念を迫っている。「読売新聞」はこれに呼応、米国に従えと、売国的見解を公然と主張している。石油はわが国の死活にかかわるエネルギーである。こうした米国の高圧的な姿勢に屈し、イランへの圧力に組みするとすれば、わが国の国益を大きく損なうことになる。

米国に呼応しKEDO見直し提案
 朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の核開発に関する日米韓3カ国の局長級協議が2日、米国で行われた。日本は朝鮮半島エネルギー開発機構(KEDO)による北朝鮮での軽水炉建設事業の一時停止を提案、米国も同意した。米国は軽水炉建設について以前からその中止を主張しており、今回の日本の提案は、日米両国でさらに、北朝鮮に圧迫を加えようという狙いがある。しかし、韓国は慎重な姿勢を崩さず、合意は得られなかった。また韓国は、日韓両国を中心とした経済支援など、「新たな提案」を行った。米国に付き従い、共同して北朝鮮への圧力を高めようというわが国の姿勢は、問題の平和解決を求める、韓国など、アジア諸国と敵対する道である。

財界主導の政治たくらむ 世紀臨調
 新しい日本をつくる国民会議(21世紀臨調)は4日、新体制の発足総会を開催した。佐々木東大総長を代表に財界人、北川前三重県知事や労組幹部などが加わっている。また同会議は次期総選挙に向け、政権公約(マニフェスト)作成を呼びかる「緊急提言」を発表、2大政党制を押し進める考えを改めて示した。北城・経済同友会代表幹事も、この動きを支持した。21世紀臨調の前身である民間政治臨調も2大政党制を主張、こんにちの衆院小選挙区制導入への世論誘導の先頭に立ってきた。21世紀臨調の動向には、警戒を要する。

ASEM、「アジア債券市場」で合意
 インドネシアのバリで行われていたアジア欧州会議(ASEM)財務相会議は6日、アジア地域の通貨安定を図るため、現地通貨建ての「アジア債券市場」の育成に取り組むことなどを盛り込んだ共同声明を採択した。会合では、塩川財務相が米国の意に沿い、中国・人民元の切り上げを求めた。これは声明にも盛り込まれたものの、「中心的議題ではない」(インドネシア・ディオノ財務相)と、アジア諸国との温度差も明らかとなった。また、アジアと欧州の長期的発展に向け、地域的な金融協力に関する経験交流、財政・金融分野の人的開発などについて協力することでも合意した。今回の「債券市場」のような構想は、「アジア通貨基金」など以前から議論されてきたが、その都度、米国の反発とそれに屈服するわが国の態度によってとん挫してきた。わが国はアジアの声にこたえ、米国の圧力を排し、アジアと共生する国の進路を選択すべきである。

大学への統制狙う独法化法案成立
 国立大学法人化法案が9日、参院本会議で、可決・成立した。大学の人事や研究への統制・権限を強化し、大学の中期目標を大臣が策定すること、大学財政への国の負担を後退させること、職員の身分を公務員から一方的にはく奪するなど、多くの問題をはらんでいる。法案は成立したが、その実施に当たっては、教職員や学生など、各大学での矛盾の激化が避けられない。(関連記事8面)

中田市長の側近市議、収賄で逮捕
 昨年の横浜市長選で当選した、中田市長を擁立した中心人物である佐藤市議が、公共事業の受注業者から違法な選挙資金を受けていた容疑で1日、市幹部や業者などと共に逮捕された。「改革」を旗印に誕生した中田市政だが、さっそくそのバケの皮がはがれつつある。


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