労働新聞 2003年7月5日号 トピックス

世界のできごと

(6月20日〜6月29日)

米EU首脳会議、対立変わらず
 米ブッシュ大統領とプロディ欧州委員会委員長、欧州連合(EU)議長国のギリシアのシミティス首相が25日、ワシントンで会談した。会談は、イラン、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の核武装阻止では一致したが、具体的中身はなかった。また、EUはブッシュが求めた、欧州諸国からハマスなど中東の「テロ組織」の送金停止要求を拒否、世界貿易機関(WTO)会合でも懸案となっている遺伝子組み換え食品の解禁にも反対した。さらに、プロディEU委員長は「年齢を重ねると、世界の現実が見えてくる」「米国が若すぎる」と述べ、ラムズフェルド米国防長官による「古い欧州」発言を皮肉った。米欧の間の矛盾・対立は、さまざまな方面で大きくなっている。

北朝鮮への圧迫強める米国
 米国が国連を利用し、北朝鮮への圧力を強めている。米国は20日までに、北朝鮮の核開発を非難する安全保障理事会議長声明案を提示した。だが、韓国はもちろん、ロシアや中国も消極的な姿勢を示すなど、国際的支持はない。北朝鮮は、声明案が上程されれば「強力な非常措置で対抗する」と、米国を批判した。さらに27日、べーカー米駐日大使は、朝鮮半島エネルギー機構(KEDO)会合に際し、「北朝鮮がやり方を変えないなら、KEDOの軽水炉の完成を支持しない」とどう喝した。米国によるあの手この手の北朝鮮敵視政策は、東アジアの緊張を高めるもので、許せない。

世界の多極化に備える中印会談
 10年ぶりに中国を訪問したインドのバジパイ首相は23日、温家宝首相と会談し、貿易や投資など、経済協力の拡大などで合意した。また、インドは、両国の自由貿易協定(FTA)締結を提案したとされる。実現すれば、世界人口の3分の1を占める市場が統合することを意味する。イラク戦争後の米欧の対立激化、欧州の独自化を横目に、中国が世界の多極化に対応しようとしていることがうかがえる。

米、同時デフレ危機で利下げへ
 米連邦準備理事会(FRB)は6月25日、短期金利の指標であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を0.25%引き下げ、年1%とした。またFRBは、当面の金融政策を「デフレ懸念の広がり防止」とすることを決めた。日本に続き、欧州でもドイツを中心にデフレ傾向が強まり、FRBに先立って欧州中銀が利下げを行ったばかり。FRB内には、0.5%の利下げを求める声もあったほどで、米国でも広がるデフレ懸念への対処にやっきだ。各国が低金利政策をとっても、この世界同時デフレの危機を脱却できる当てはない。

人民のたたかい

(6月20日〜6月29日)

 旧東ドイツ地区での、労働時間短縮を求める金属産業労組(IGメタル)のストライキが四週目に突入した。この影響で23日には、自動車大手BMWのミュンヘン工場などが操業停止に追い込まれた。労組は、09年までに旧西独部と同じ週35時間労働制に移行することを求めている。
 韓国の民主労総傘下の6万6000人の労働者は25日、労働条件の改善を求め、4時間の時限ストを闘った。また、全国鉄道労組は28日、国鉄の民営化計画に反対してストライキに突入、全土で7割以上の鉄道がストップした。政府は5000人の機動隊を動員、労働者1000人以上を不当逮捕した。
 韓国の全国農民連帯に結集する1000人の農民は20日、チリとの間の自由貿易協定に反対して大会を開催、国会に押し掛けた。
 ロサンゼルスで27日、ブッシュ大統領がイラク攻撃の口実とした「大量破壊兵器」が見つからないことについて、1000人が「大統領はウソつき」と抗議デモを行った。

日本のできごと

(6月20日〜6月29日)

ヨルダンに自衛隊派兵へ
 国連平和維持活動(PKO)協力法に基づく国際的な人道救援活動を名目にして、イラク周辺国へ自衛隊を派兵する実施計画の概要が6月28日、明らかになった。航空自衛隊のC 輸送機2機、約100人の自衛官を7月中旬、イラク隣国のヨルダンに派兵する。イラク新法が成立した場合、そのままイラク国内へ移動し、イラクへの自衛隊派遣の第一弾となる。小泉政権は法律的根拠もないままに、イラク派兵への準備を強引に進めている。

民主党が米支援のイラク「復興」容認
 衆院本会議で24日、イラク法案の審議が始まった。小泉首相は25日、「将来の課題として海外派兵のための恒久法を検討すべきだ」と述べるなど、米国と一体となった本格的な自衛隊海外派兵を狙っている。政府は23日、自衛隊が携行する武器の種類については、装甲車や対戦車砲などの重火器装備を検討しており、本格的戦闘を念頭においた派遣となる。民主党の岡田幹事長は「法案には反対だが、イラク復興への協力には賛成だ」と述べている。「法案に反対」とのポーズは選挙対策であり、民主党があてにならないことは有事法制でも証明済みだ。(社説参照

労基法改悪、企業の解雇権認める
 改正労働基準法が27
日、参院本会議で可決、成立した。企業が労働者を解雇する際の基準となる「解雇ルール」を初めて法制化した。これによれば「合理的な理由」があれば解雇は自由にできることとなる。企業の解雇権を認めたことになり、リストラ解雇などを合法化する。この法案には民主党も賛成した。民主党が労働者の利益を平気で踏みにじる政党であることは疑いようがなく、連合は民主党を支持すべきではない。

共産党綱領、天皇制、自衛隊容認へ 
 共産党は21日、第7回中央委員会総会を開き、綱領の全面改定案を提示した。党内論議を経て11月の党大会で正式決定する。綱領の全面的な改定は61年の現綱領策定後初めて。現行綱領で廃止・解散を主張していた天皇制と自衛隊の容認を明文化し、綱領から「米帝国主義」という言葉を大幅に削除して米帝国主義との闘いを放棄した。共産党は97年の第21回党大会以降、保守政党との連立による政権入りを視野において天皇制や自衛隊容認を打ち出しており、綱領改定はそれを追認したもの。政治的危機が深まる中、支配層へ恭順の意を示す、「月並み」な議会政党となったことを意味する。これは労働者階級への恥ずべき裏切り行為である。

「骨太の方針」でさらに国民犠牲
 政府は27日の閣議で、小泉政権の経済運営の指針として経済諮問会議がまとめた「経済運営と構造改革に関する基本方針2003」(骨太の方針第3弾)を決定した。国と地方の税財政改革(三位一体の改革)や社会保障改革など7改革を推進する方針を明記し、多国籍企業が求める「小さな政府」づくりを急ごうとしている。深刻なデフレ不況下での改革路線の強行は、国民生活にいっそう深刻な影響を及ぼすものだ。

連合、統一要求基準を放棄へ
 連合は26日の中央委員会で、来春闘では統一要求基準を示さず、賃金制度整備などすべての労組が取り組むべき最低限の課題を提示する方針を提案した。事実上、ナショナルセンターとしての機能を放棄したといえる。今春闘では、経営側の攻撃を受ける中で、多くの労組がベア要求を断念、定期昇給制度の見直しや賃下げに追い込まれた。労働組合の組織率は下がる一方で、こうした事態を招いた連合指導部の責任が厳しく問われている。

国の借金、最大の668兆円
 財務省が25日発表した03年3月末時点の政府債務残高は、前年同月比10.1%増の668兆7600億円に上り、過去最高を更新した。国民1人当たり525万円という巨額だ。このうち国債残高は前年度末よりも56兆円多い、504兆2500億円と初めて500兆円を突破した。小泉首相は国民に「痛み」を押しつけるために「財政再建」を口実にしてきたが、それは真っ赤なウソであることが明らかとなった。財政危機は、ますます深刻な状況となっている。


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