労働新聞 2003年6月25日号 トピックス

世界のできごと

(6月10日〜6月19日)

ASEAN、朝鮮問題平和解決を主張
 カンボジアのプノンペンで6月16〜19日、東南アジア諸国連合(ASEAN)外相会議、ASEANプラス日中韓中外相会議、ASEAN地域フォーラム(ARF)閣僚会議などが相次いで開かれた。ASEAN外相会議では、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の核開発問題について「平和解決」(議長声明)を明記、また各国とも「経済制裁などの手段を取るのは、ASEANのやり方ではない」(フィリピン・オプレ外相)などと主張した。一連の会議を北朝鮮への「国際的な包囲網」づくりのために利用することを狙った米国の思惑は、成功しなかった。

米、IAEA使いイランに圧力
 オーストリアのウィーンで開かれていた国際原子力機関(IAEA)定例理事会は19日、米国の意を受け、イランの核開発問題について核査察への協力を要求する議長総括を発表した。米ブッシュ大統領はこの前日、イランを名指しし、「核開発は許さない」などと非難していた。米国はイラン国内での学生デモに対しても「支持」を表明するなど、内政干渉を含む圧力を加え続けている。中東支配強化を狙う米国によるこうした横暴は、中東各国人民から大きな反撃を受けざるをえない。

米英のイラク占領に抵抗続く
 イラクを占領している米軍は15日、イラク中北部で旧フセイン政権支持者らを掃討する「砂漠のサソリ作戦」の展開を発表した。米英軍などによる占領政策に対するイラク人民の抵抗はねばり強く続いており、戦争以降、イラク全土での米兵の死者は約50人にも達している。米軍などは自らを「解放軍」などと自認しているが、イラク戦では大量の民間人を殺傷し、占領後もイスラム教徒女性への身体検査や強引な家宅捜査を行うなど、横暴な態度に終始、反米感情はむしろ拡大している。イラクを中東支配のテストケースにしたい米国だが、早くもイラク国民の抵抗にあい、その狙いは大きな困難に直面している。

EU、大統領職創設で権限強化狙う
 欧州連合(EU)初の憲法を起草していた諮問会議は13日、ベルギーのブリュッセルで最終草案を採択した。草案では外国首脳と折衝する「大統領」「外相」職の創設などを明記している。来春の調印に向け、加盟国間で調整・批准を経て、2005〜06年に発効させたい考え。EUは来年5月には旧東欧諸国などを加え、25カ国体制に拡大することを控え、共同体としての枠組みを強化するのが狙い。また「大統領」職の創設はEUとして政治権限を強化し、米国とも対等に渡り合おうという戦略がにじみ出ている。

人民のたたかい

(6月10日〜6月19日)

 フランスで10日、年金額の削減などを主な内容とする年金制度改悪案の撤回を求め、労働総同盟(CGT)や労働者の力(FO)など4つのナショナルセンターによるストライキとデモが行われた。仏全土で150万人の労働者が参加し、国鉄の60%以上が運休した。
 米軍装甲車による女子中学生れき殺事件から一周年を迎えた韓国で13日、ソウルなど全国89カ所で、殺された2人を追悼し、米国の責任を追及する集会やデモが行われ15万人が参加した。ソウルで開かれた集会には約2万人が参加、参加者は追悼のろうそくを手にしながら、米韓地位協定の改定やブッシュ米大統領の謝罪などを求めた。
 韓国で18日、政府による売却に反対して朝興銀行の労組が全面ストを打った。政府は同行を持ち株会社に売却したい考えだが、労組は反対を表明、全組合員約6600人のうち約4500人が参加した。

日本のできごと

(6月10日〜6月19日)

米国の要請に従い、イラク新法国会へ
 政府は6月13日、イラク復興支援法案とテロ対策特別措置法改定案を国会に提出した。与党3党は16日、40日間の国会延長で合意するなど、成立にやっきとなっている。新法には相手国の同意なしの自衛隊派遣を盛り込んでおり、従来の国連平和維持活動(PKO)の枠を大きく踏み出した、自衛隊の本格的海外派兵の第1歩。イラク全土はまだ戦闘が続いている。今回の派遣は「ブーツ・オン・ザ・グラウンド」(地上部隊の派遣)という米政権の要請に応じたものであり、中東人民に敵対すると同時に、米国が要求する集団的自衛権行使の突破口となる危険なものだ。 (1面参照

日米韓会合、米国のお先棒担ぐ日本
 日米韓三カ国は13日、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)政策をめぐる外務省局長級の政策調整会合を開き、米朝中協議に日韓を加えた五カ国協議を求めることで一致した。米国は日韓を加えることで、北朝鮮への締め付けを強めようと画策しているが、韓国はあくまで平和的な解決を求めている。この席でケリー米国務次官補は、万景峰号など北朝鮮船舶への入港規制や、北朝鮮に部品を輸出した日本企業の摘発など、最近の日本の取り締まり強化を評価した。小泉政権が米国のお先棒を担いで、北朝鮮への圧力を強めていることは明白だ。

沖縄米兵暴行事件、容疑者逮捕へ
 5月に起こった沖縄の女性暴行事件の容疑者である米兵の身柄引き渡し問題で米側は18日、起訴前の身柄引き渡しに応じた。米軍犯罪が後を絶たない状況の下で、与党内にすら日米地位協定の改定論議が起こっており、米国はこの事件が韓国のような大規模な反米運動になることを恐れて火消しにやっきとなった。しかし、暴行事件糾弾の県民大会も準備されるなど、県民の大きな怒りを呼び起こしている。(5面参照)

りそなへ約二兆円の公的資金投入
 政府は十日、りそなグループへの1兆9600億円の公的資金注入を決めた。同グループは事実上の国家管理銀行なる。同グループには過去にも1兆1000億円の公的資金が注入されており、合計約3兆円の国民の税金が投入される。りそなは関西の中小企業へ融資しており、厳しい「貸しはがし」が関西の中小企業に大きな打撃を与えるのは必至だ。こうして「健全化」した銀行を、外資へ安く売りさばくのが売国奴・竹中金融担当相の思惑だ。

予定利率下げ法案、衆院通過
 生命保険会社が破たんの危機を迎えた場合、契約者に約束した運用利回り(予定利率)を引き下げることを可能にする保険業法改正案が12日、衆院を通過した。今国会で成立する見通しとなり、7月末にも施行される。予定利率が引き下げられた場合、契約者は満期となっても契約時に約束された金額を受け取れない。これは、破たん回避の名目で生保の経営の失敗を契約者に押しつけるものだ。こんな身勝手が許されていいのか。

補助金を三年で四兆円削減へ
 政府の経済財政諮問会議は18日、国と地方の税財政改革(三位一体改革)を決定した。2006年度までに地方向け補助金を4兆円削減し、削減分の8割を地方に税源移譲するというもの。義務的経費(義務教育、福祉、消防など)は全額税源移譲されるが、徹底的な削減が予想される。どの補助金を削減するかはあいまいなままで、毎年末の予算折衝で決まることになる。地方交付税も総額が抑制される。こうしたことは地方行政のサービスの切り捨てを意味しており、教育や福祉切り捨てを許さない闘いが求められる。

政府税調、増税路線鮮明に
 政府税制調査会(首相の諮問機関)は17日、税制改正の将来像を示す中期答申を小泉首相に提出した。「少子化」を口実に、年金受給者の控除縮小、消費税率の2ケタへの引き上げを明記するなど、増税路線を鮮明に打ち出した。非課税扱いの遺族年金や失業手当も課税対象に加える方針。また、納税者番号制度の導入も打ち出した。増税路線は国民の個人消費をいっそう冷え込ませることは、過去の消費税率アップで証明済みだ。かえって「少子化」に拍車をかけるもので、明らかな国民収奪の強化で許されない。


Copyright(C) Japan Labor Party 1996-2003