20030505 トピックス

労働新聞　2003年5月5日号トピックス

世界のできごと

（4月20日～4月29日）

米朝中３カ国協議、どう喝強める米国
　北京で開かれていた朝鮮半島の核問題を議論する米朝中３カ国協議は４月２５日、協議を終えた。協議の中でケリー米国務次官補は朝鮮民主主義人民共和国（北朝鮮）に対して核開発の放棄を要求、一方、李根・北朝鮮外務省米州局副局長は、米国による北朝鮮敵視政策の変更を強く求めた。その後、米一部メディアが北朝鮮が協議の中で、核保有と使用済み核燃料棒の再処理開始を認めたと報道、米政府もこれを追認した。この北朝鮮の「核保有」発言を口実に、ブッシュ大統領は「北朝鮮に対する国連の制裁措置を追求する可能性について同盟国と協議する」と述べ、国連安全保障理事会で核拡散防止条約（ＮＰＴ）違反として、非難声明を採択することを狙っている。さらに、海上封鎖も検討するという報道もある。しかし、米国は協議の中で、北朝鮮に対しては「検証可能な査察」を前提とした核開発の放棄を執拗（しつよう）に要求、一方で、北朝鮮が求めている先制核攻撃の放棄を受け入れていない。当然にも、北朝鮮には米国による軍事的威嚇に対して、自国を防衛する権利がある。先のイラク戦争が証明している通り、国連も国際法も紙切れ同然に破り捨て去る米国にとって「査察」も内政干渉の道具にすぎない。

南北閣僚級会談、共同宣言遵守で合意
　北朝鮮と韓国との第10回南北閣僚級会談が２７日、開かれた。会談の中では、歴史的な2000年６月の南北共同宣言の基本精神について双方が確認、共同宣言発表３周年を迎え、今年６月に南北で行われる民族統一大祝祭への取り組みや、東西海線の鉄道、道路連結行事と開城工業地区の着工式問題などについて互いに積極的な措置をとることで合意した。また北朝鮮の核問題については「対話を通じて平和的に解決するため引き続き努力する」との原則を確認した。

欧ロ、独自防衛政策追求へ
　ドイツ、フランス、ベルギー、ルクセンブルクの４カ国は２９日、ブリュッセルで首脳会議を開催、①来年度末をメドに北大西洋条約機構（ＮＡＴＯ）に頼らず、欧州連合（ＥＵ）による軍事能力ある組織を創設②共同作戦のための多国間参謀本部設置③「欧州軍備局」の設置などを内容とした「欧州安保・防衛同盟」をＥＵ加盟国に提案することで合意した。ユーロ導入の際と同じように、希望し準備の整った国から準次参加する方式。合意した４カ国は先のイラク戦争の際に、米英の軍事行動を支持しなかった。イラク戦争で欧州は英国、イタリア、スペイン、そして来年５月に新規加盟する中・東欧諸国が米国に追随、フランス、ドイツなどと対応を異にした。今回の４カ国の合意は、ＮＡＴＯからも独立した独自の安全保障政策で欧州の統合を推進する狙いがあると見られている。また、ロシアもプーチン大統領が２８日、旧ソ連圏５カ国（アルメニア、ベラルーシなど）と首脳会議を開き、集団的安全保障条約を結ぶことで合意した。米国の旧ソ連圏内での影響力拡大をけん制する意味合いがあると見られている。欧ロの独自防衛路線の追求は、イラク戦争を機に生じた米国との亀裂のいっそうの拡大を予見させるものだ。

人民のたたかい

（4月20日～4月29日）

　イラク・バクダッドで２２日、米軍によるシーア派指導者の逮捕に抗議して、約１万人のシーア派信徒がデモを行った。参加者は「新植民地主義反対」「米国と闘う」と訴えた。また２８日にも米国による暫定行政機構の準備会合に反対して１万人が抗議行動を繰り広げた。
　ドイツ全土で２１日、米国のイラク戦争・占領に反対する復活祭平和行動が行われた。各地で市民や労組員、宗教者など、のべ数万人が参加、「ブッシュ、ブレアを国際法廷で裁こう」と訴えた。

日本のできごと

（4月20日～4月29日）

統一地方選後半戦、投票率は過去最低
　４月２７日に投票された第１５回統一地方選後半戦の全国平均投票率は、いずれも過去最低となった。１２３市長選が５７．０％、３８７市議選が５６．７４％、東京特別区長選は４３．５５％、区議選は４３．２３％で、投票率の下落傾向に歯止めがかからず、有権者の政治、政党不信を浮き彫りにした。市議選では共産党が９１人減の惨敗、自民党は過去最低だった前回を６７人下回った。また、女性市議が最多の１２３６人当選し、全議席の１２％となった。（社説参照）

民主党が有事法制定にゴーサイン
　民主党は２４日、有事関連法案の対案を正式に決定した。３０日に国会に提出して与党と修正協議に入る。小泉首相も修正協議に積極的に応じるかまえで、有事法案は与党３党と民主党の賛成によって成立する見込みとなった。有事法制は支配層が長年画策してきたが、平和を願う国民の強い反対によって実現が封じられてきた。しかし、民主党は不審船問題などで朝鮮民主主義人民共和国（北朝鮮）の脅威を騒ぎ立て、それを口実に進む法制化を促進する役割を果たした。この党の対米追随、北朝鮮敵視の本質がいっそう明らかとなった。

銀行株下落止まらず、金融不安深刻化
　大手銀行株の値下がりが続いている。２５日には、三井住友フィナンシャルグループが年初比で４５％、みずほフィナンシャルグループも５４％の水準まで下がった。景気後退が続く中で、大手銀は株式を持ち合う事業会社株の下落によって自らの株価を押し下げ、銀行株をもつ事業会社の財務内容も悪化させるという悪循環に陥っている。大手銀の自己資本比率は、保有株の含み損拡大でいちだんと低下している。これまで市場を牽引してきたソニーなどのハイテク株も売られており、２８日の東京株式市場の終値は７６０７円と、バブル経済崩壊後の安値を更新した。株安の悪循環は、金融破たんに向かって突き進んでいる。

02年度の失業率、最悪の5.4％
　総務省が２５日に発表した2002年度平均の完全失業率は５．４％で、53年の調査開始以来最悪を更新した。倒産・解雇など非自発的失業者が１５３万人で３４万人増。就業者数は製造業で５３万人減、卸・小売業・飲食店で３３万人減となった。同時に発表された３月の失業率も５．４％と前月を０．２ポイント上回り、失業者数も過去最多の３８４万人となった。小泉改革で企業倒産や人員削減が促進され、労働者の生活はますます脅かされている。

雇用保険改悪、５月１日から実施
　失業手当の給付削減を柱とする改正雇用保険法が２５日、参院で可決、成立した。失業手当の給付水準について、失業前の賃金日額の６割としている下限を５割に引き下げるとともに、「自発的」に離職した正社員の給付日数を最長１８０日分から１５０日分へと減らすという改悪で、５月１日から施行される。失業者の増加は、政府が進める構造改革に責任がある。それに追い打ちをかける改悪は許せない。

勤労者世帯実収入が3.2％減
　総務省が２５日発表した家計調査報告によると、02年度の勤労者世帯の実収入は実質で３．２％減で２年ぶりのマイナスとなった。ボーナスを中心とした臨時収入・賞与は１０．４％の大幅減。月平均消費支出は１世帯あたり３２万８７４９円で、６年連続減。労働組合の連合指導部が闘いを放棄して賃下げを容認している現状が、全労働者の賃金水準を引き下げている。

中小企業白書、借り入れさらに厳しく
　平沼経済産業相が２５日の閣議に提出した「中小企業白書」で、金融機関から「借入金の金利引き上げ要請を受けた」という中小企業は、取引銀行が大手行の場合は３２．８％に上り、地方銀行（２１．１％）、信金・信組（１５．２％）よりも厳しいことが明らかになった。とくに、97年以降に合併した金融機関から追加融資を受けられなかった零細企業は２６．４％で、銀行が合併後に融資基準を厳しくし、貸し渋っていることは明らか。政府は、中小零細企業を締め上げる大手銀行の横暴を規制すべきである。