労働新聞 2003年4月15日号 トピックス

世界のできごと

(3月30日〜4月9日)

米国、バグダッド制圧へ
 イラク国民の果敢な抵抗にもかかわらず、米英軍の侵攻によって4月9日、イラクの首都バクダッドが陥落、フセイン政権は崩壊した。米軍は劣化ウラン弾など文字通りの「大量破壊兵器」でイラク人民を大虐殺、米軍に批判的な中東の通信社アルジャジーラの支局も攻撃するなど、「短期集結」に向けてなりふりかまわない攻撃を続けた。だが、米国のこうした姿勢には、アラブ各国などから強い批判の声があがり、中東全域で反米の闘いが起こりつつある。米国は「イラク人民を解放した」などというが、いまなお米軍に対するイラク人民の抵抗は続いている。「戦後復興」をめぐる米欧の対立など、米国の狙い通りの占領と「復興」は、大きな困難に直面しよう。

イラク「戦後復興」めぐり深いミゾ
 
ブリュッセルで3日、北大西洋条約機構(NATO)・欧州連合(EU)合同外相会談が行われ、イラクの「戦後復興」問題が協議された。この中でパウエル米国務長官は「米英が主導的な役割を」と主張したが、国連中心の「復興」を唱えるドイツ、フランス両国の外相は強く反発、協議は物別れに終わった。さらに、仏独ロ3カ国の外相は4日、パリで会談し、イラクの「戦後復興」問題で「国連が中心的役割を」との認識で一致するなど、米主導の「戦後復興」を強くけん制した。一方、ブッシュ米大統領とブレア英首相は7日、会談したが、仏独などとの関係修復を図りたい英国が国連の役割を強調、米国も国連に「一定の協力」を求める方針を示した。しかし、米国はイラクの「戦後統治機構」について「血を流した国が主導的役割を担うのが当然」(ライス米報道官)と、露骨に米主導の「復興」を画策している。米国と「国連中心」を主張する欧州など各国とのあつれきは、激しさを増すだろう。

安保理、北朝鮮非難で合意できず
 国連安全保障理事会は9日、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の「核開発問題」について非公式協議を行った。北朝鮮が、今年1月に核不拡散条約(NPT)からの脱退を宣言し、これを受けて米国が国連安保理での協議を求めていた。米国は安保理の場で「議長声明」という形で北朝鮮に圧力をかけようとしたが、中国などが「米朝間での解決」を主張、反対した。そのため、非難声明の合意は先送りとなった。この問題をめぐっては、韓国も「国連を通さずに問題は解決できる」と主張、米朝間の対話再開を促している。イラクをめぐっては国連安保理の合意を無視し、わずかな同盟国と共に戦争を引き起こした米国だが、北朝鮮の「核問題」では国連安保理を利用し圧力をかけようという米国のダブルスタンダードは、世界の諸国の不信を買っている。

人民のたたかい

(3月30日〜4月9日)

 韓国で2日、政府のイラク戦争への派兵法案採決に抗議して、労組や学生、市民など約2000人が抗議行動を繰り広げた。参加者の一部は国会に突入、「米国の虐殺同盟ではなく、反戦同盟に立つことが私たちの義務」と叫んだ。
 スペイン各地で1日、イラク戦争反対の学生行動が行われ、バルセロナでは5万人の学生がデモ行進した。参加者は米国を支持するアスナール政権を厳しく批判した。
 イタリア全土で2日、米英によるイラク戦争に抗議する8時間のゼネラルストライキが行われ、約100万人以上が参加した。ストとあわせて、全国の主要都市でも集会やデモが行われた。
 イラク隣国のヨルダンやサウジアラビア、パレスチナなどで4日、イスラム教の金曜礼拝と合わせて反戦集会やデモが行われた。ヨルダンのアンマンの集会には約3000人が参加、「米軍は中東から出ていけ」と訴えた。

日本のできごと

(3月30日〜4月9日)

小外交青書「日米同盟」追求と公言
 川口外相は4月1日、閣議に「2003年版外交青書」を報告した。青書はイラク問題への対応で「国連中心の国際協調体制」と「日米同盟」の双方を追求するなどとした。これは、イラクへの侵略戦争を強行した米英と攻撃に反発する仏ロ中などの対立激化で国連安全保障理事会が事実上機能停止に陥る中、わが国が相変わらず日米同盟優先と対米追随を基本姿勢とすることを公然と居直ったもの。しかも米国の意を受け、イラク「戦後復興」などをにらみ、深刻な亀裂の入った米欧同盟や国連安保理での米国主導の関係修復、調整を買って出る意図を明らかにしたものでもある。事実、川口外相は9日に訪欧、独仏などに対米協力を呼びかける。わが国の自主性のかけらもない対米追随外交は、全世界で不信を高め、反発を招くことは必至。青書はまた、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の核開発、拉致問題などを強調、北朝鮮敵視の継続も表明した。

ミサイル発射のデマで朝鮮敵視あおる
 扇国土交通省は1日、突如北朝鮮の地対艦ミサイルが黄海に向け発射されたと発表した。これは米国の一方的な情報に基づくもので、防衛庁はいったん「発射を確認」としたが、その後「確認中」と訂正。韓国が「発射はなかった」と発表する中、3日には赤城防衛副長官が「確認は難しい」などと、事実上発表を訂正した。一連の経過は、米国製のデマに乗って北朝鮮敵視をあおるわが国政府の意図に貫かれたもの。石破防衛庁長官の「北朝鮮のミサイル基地攻撃を検討」などの発言と併せ、有事関連法案の早期成立や日米共同のミサイル防衛(MD)構想推進を狙う、最悪の世論操作である。

日中外相会談、関係修復で険しさ
 川口外相は6日、中国を訪問、李肇星中国外相、温家宝首相らと会談した。胡錦濤新指導部成立後初の会談。会談では「ハイレベル対話の促進」などで合意したが、歴史認識問題では李外相が小泉首相の靖国神社参拝について「中国人民の感情が傷つけられたのは簡単な問題ではない。考慮してほしい」と発言、首脳レベルの相互訪問も進展が見られず、関係修復への道のりの険しさを見せた。

郵政公社が発足、さっそく労働強化
 郵便、郵便貯金、簡易保険の三事業を郵政事業庁から引き継いだ日本郵政公社が1日、発足した。民間の経営手法の導入、効率化の名で、いっそうの合理化が目指される。すでに郵政公社には多国籍大企業のトヨタから役員が配置され、悪名高い「カンバン方式」導入など労働強化のためのさまざまな手法が導入され始めた。また、公社発足に合わせて郵便事業への民間参入も解禁、民間バイク便業者らが同日、総務省に許可申請を行った。営利優先の私企業の参入は、郵政事業の公益性、公共性を危うくするものだ。

大島農相が辞任
 大島農相は3月31日、一連の元秘書の献金流用疑惑などの「監督責任をとる」などとして辞任した。大島農相自身は「(疑惑は)辞任の理由ではない」などと居直っている。今後の有事関連法審議などの国会審議に影響を与えることを恐れた、自民党の「トカゲのしっぽ切り」。小泉首相の任命責任が厳しく問われる。

有事法制成立に協調姿勢強める民主党
 与野党幹部が4月6日、有事関連法案の審議に当たり、修正協議に柔軟に対応することで一致した。民主党の枝野政調会長は「急いで法制化の作業を進めたい」と述べ、協議に応じる考えを示した。民主党は8日、役員会で「緊急事態基本法案」の素案を示して党内論議を開始、18日をめどに対案のとりまとめを目指すとしている。8日の代議士会では、所属議員のイラク戦争を侵略戦争と表現した国会質問の原稿をめぐり「政権を取ったときに日米関係が持つのか」と党内矛盾が表面化、民主党のイラク戦争反対と、米国批判の実態が厳しく問われる。

道府県議選など告示
 東京、茨城、沖縄を除く44道府県議選と北九州を除く12政令市議選が4日、告示された。13日に投開票される。道府県議選には前回より159人少ない3854人が立候補、政令市議選には1159人が立候補し、激戦が開始された。


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