労働新聞 2003年4月5日号 トピックス

世界のできごと

(3月20日〜3月29日)

米英のイラク侵略に果敢な抵抗強まる
 米英などは3月20日、イラクへの無法な侵略戦争を開始した。米軍は連日の空爆をはじめ、劣化ウラン弾や巡航ミサイルなどの大量破壊兵器で、多数のイラク人民を殺りくしている。だが、「米英は解放軍」という宣伝とはうらはらに、フセイン政権とイラク人民あげての果敢な抵抗で戦線はこう着。フセイン政権打倒による「数週間内での早期決着」を狙った米国だが、地上軍十万人の増派を余儀なくされた。イラク人民の祖国防衛の闘いは、ブッシュが「終戦は遠い」と言わざるを得ないほどの大誤算だ。また、イラク侵略を受け、米国への国際的批判もいっそう高まった。マレーシアのマハティール首相は24日、「米英は帝国主義的行動をとっている」と厳しく批判、さらに国連は意味を失ったとし、アナン事務総長の辞任を要求した。国連安全保障理事会公開協議でも、多くの国々が戦争を「国際法違反の侵略」と非難した。無法な侵略を続ける米帝国主義の孤立はますます深まり、その世界支配は大きく揺らいでいる。(社説参照)

イラク戦で米経済の危機深刻化
 イラク開戦と共に、全米の小売業売上は10%も低下、2月の個人消費も前月比で横ばいに終わるなど、景気後退色が強まっている。株価も、イラク戦開始直後は「早期終結」の観測とともに上昇したが、戦線こう着とともに世界的な米株離れが明確になりつつある。欧州の投信は今年に入り、米国株を8億ドル売り越した。このような中、米上院は26日、ブッシュ大統領が打ち出していた減税の半減案を可決した。財政赤字の拡大や、最低1000億ドルとされるイラク戦争の戦費を懸念したものだが、政権への打撃であると同時に、経済への影響は避けられない。武力を振りかざす米国だが、戦争は景気悪化を深刻化させている。

米軍支援への批判強まる韓国
 韓国国会で28日、政府が提出したイラク戦争への派兵を認める決議案の採決が延期された。採決延期は二度目だが、与党・新千年民主党の議員も多くが反対、野党ハンナラ党も、若手議員が反対に回った。韓国では、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)への「太陽政策」と民族統一、反米感情の高まりは一体となっており、イラクと同様に北朝鮮を敵視する「ブッシュ・ドクトリン」に距離をおく政府の政策に、大きな影響を与えている。

WTO農業交渉が決裂
 世界貿易機関(WTO)の農業交渉が27日、合意できず決裂した。これは、米国などの意を受けて農産物関税の45〜60%引き下げを盛り込んだハービンソン議長提案が、欧州、日本などの拒否にあったことによる。これにより新多角的通商交渉(新ラウンド)は、早くても9月までは合意できないことが確実となった。一方、米国内では、WTOが米国の鉄鋼緊急輸入制限(セーフガード)をルール違反と裁定したことなどから、「WTO離脱」論も飛び出している。農産物で他国に市場開放を迫りながら、自らは鉄鋼などで市場開放しない米国に、国際的批判が集中するのは必至だ。

人民のたたかい

(3月20日〜3月29日)

 米国で20日、サンフランシスコなどで大規模な反戦デモが行われた。警官は、1000人を逮捕する大弾圧を行った。
 英ロンドンで22日、若者を中心とする百万人が反戦集会とデモを行った。
 イタリアのローマで21日、農民20万人が反戦と独自の農業政策を求めてデモした。
 シリアのダマスカスで23日、50万人がデモを行った。参加者は、米英軍の空爆で自国民五人が巻き添えになったことにも抗議した。
 28日、エジプトのカイロで10万人、イランのテヘランでも数万人が「米国に死を」と叫んで集会を行った。米軍の戦争司令部があるバーレーンでは1万人がデモした。
 アフガニスタン北東部のメータルラムで23日、1000人以上がデモし、星条旗・日の丸・英国旗が焼かれた。

日本のできごと

(3月20日〜3月29日)

小泉首相、イラク開戦で米英を支持
 米英などによるイラクへの大規模攻撃が始まった3月20日、小泉首相は直ちに米英のイラク侵略に支持を表明した。「国連中心主義」をも投げ捨て日米同盟を優先した小泉首相は、米国の忠実な下僕であることをブッシュ大統領に宣誓した。こうした中で24日、べーカー駐日米国大使は与党三幹事長と会談し、自衛隊の派遣、戦後「復興」に関する国連安保理決議案の起草などを要請した。これを受けた政府は28日、ヨルダンへ難民テントを積んだ政府専用機の派遣を決定。同機は航空自衛隊が保有しており、短銃などを携行した同隊員約60人が同乗する。また、小泉首相は28日、戦後イラクの「復興」のために新法の成立を待たずに自衛隊を派遣すると表明した。小泉首相は米国の要請にこたえつつ、イラク戦争に乗じて自衛隊派兵を進め、集団的自衛権の突破を狙っている。

スパイ衛星打ち上げ、東アジアに脅威
 日本初の情報収集衛星が28日、種子島宇宙センターから打ち上げられた。当日は付近がものものしい警戒態勢下におかれたように、東アジア周辺を偵察するスパイ衛星である。日米で共同研究を進めているミサイル防衛(MD)構想の一翼を担うもので、情報は米国に提供される。日本の宇宙開発は、建前に過ぎなかったにしても、これまで平和利用、情報公開を原則としてきたが、それを投げ捨てて軍事利用の性格をあらわにしたもの。朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)は28日、「双方が他方の脅威となる行動はしないとした日朝平壌宣言の精神に公然と違反した。これで日本はわれわれの衛星打ち上げについてうんぬんする名分や資格を完全に失った」と批判した。衛星打ち上げは北朝鮮や中国に軍事的圧力をかける挑発行為であり、東アジアの緊張を高めるものだ。

菅代表、ミサイル防衛着手を提言
 民主党の菅代表は24日、日米で共同研究を進めているMD構想について、従来の技術研究から開発・配備への移行すべきだとの考えを示した。ミサイル防衛については、開発に巨額の費用がかかる、日本向けの攻撃かどうかが判別困難な段階でのミサイル迎撃は憲法が禁じる集団的自衛権の行使に当たる、中国など周辺諸国の反発を招くなどの問題が指摘されており、与党内にも慎重論がある。こうした中で菅代表の発言は一歩踏み込んだものであり、北朝鮮の弾道ミサイル「ノドン」を口実としたものだ。民主党の対米追随、北朝鮮敵視の危険な性格を表している。

統一地方選、11知事選告示
 統一地方選挙の先陣を切って27日、東京など11の知事選挙が告示された。今回の知事選では表立って政党の支持を受けない「無党派候補」が激増し、与野党相乗り候補は福岡、福井の2県だけとなった。「地方には保守も革新もない」と、オール与党体制で相乗りを続けてきた政党の無責任な対応が、政党不信に拍車をかけたものだが、その与党体制が、改革政治の下で深まる矛盾を背景にして、維持できなくなっている。

75歳以上対象に医療保険制度新設
 政府は28日、医療制度改革の基本方針を閣議決定した。新方針の柱は、08年度から75歳以上の「後期高齢者」全員が保険料を負担する新しい保険の創設だ。現在保険料を払っていない会社員などの扶養家族にも負担を求めるもので、200万人を超す高齢扶養者が新たに保険料を負担することになる。厚労省は74歳以下の扶養家族も公的年金受給者から、保険料を徴収する方向を検討している。高齢者からさらに搾り取りとろうとする改悪を許してはならない。

元従軍慰安婦裁判に不当判決
 第二次大戦中に従軍慰安婦や挺身隊員として強制的に働かされたとして韓国人女性10人(うち1人死亡)が国に損害賠償などを求めた「関釜裁判」で最高裁は25日、不当にも上告を棄却した。この裁判は一審判決で、戦後補償裁判で初めて国に賠償を命じたものの、二審で逆転敗訴していた。最高裁の上告棄却により、国の責任は否定された。女性側の弁護団は「最高裁が司法的救済を放棄したもので、是認できるものではない」と、強く批判した。


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