労働新聞 2003年3月25日号 トピックス

世界のできごと

(3月10日〜3月19日)

ブッシュ、なりふりかまわず戦争追求
 米ブッシュ大統領は3月17日、演説を行い、イラクのフセイン大統領などに亡命を要求、それに従わない場合には、イラクに対して軍事攻撃を行うとの「最後通告」を行った。演説の中でブッシュは、フセイン政権の打倒が攻撃の目標であることをあけすけに述べると共に「中東に先例を示す」とも言うなど、フセイン政権打倒後もイランなど中東各国に対して、イラクと同様に圧倒的な軍事力を背景に武装解除・政権転覆を行うことを示唆した。また、早期の攻撃に反対していたフランスなどを念頭に「国連が機能を果たさない」と責任を転嫁、あらためて攻撃の正当性を主張した。当然にもイラクはこの要求を直ちに拒否した。これに先立ち、米英両国とスペイン三国は国連安保理に提出していた武力行使を認める新決議修正案について、同調する国が少数にとどまることや、フランスなどによる拒否権発動の可能性もあり、取り下げていた。また、米国務省は18日、対イラク軍事行動を「支持」するとした諸国のリストを発表したが、わずか30カ国にとどまった。一方、アラブ連盟は緊急声明を発表、あらためてイラク戦争反対を訴えた。もはや、米国の国際的な孤立は明白であるにもかかわらず、なりふりかまわぬ醜い姿は、もはやその強大な軍事力でしか力を誇示できなくなった米帝国主義のこんにちの姿を現している。

韓国、北朝鮮へコメ支援
 韓国政府は14日、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)へ今年中に43万トンのコメ支援を行うことを発表した。盧政権発足後、北朝鮮への具体的な支援策としては初めて。米国などによる北朝鮮圧殺攻撃が強まっている中で、韓国は、2000年の南北共同宣言に基づく対話路線を堅持している。

労働者犠牲進める独社民政権
 ドイツのシュレーダー首相は14日、失業給付期間の大幅削減を打ち出した。これは失業給付金をこれまで最大二年八カ月保証していたものを、約一年あまりに短縮するというもの。これに対して、与党・社民党の支持基盤である労組からは「明白な選挙公約違反」(労働総同盟)と批判が噴出している。シュレーダー政権は、財政赤字を国内総生産(GDP)の3%以内に抑えるという欧州連合(EU)の基準を達成するために、社会保障切り捨てなどの改革政策をとってきた。対イラク戦争問題では、国民の支持が高いシュレーダー政権だが、一方で国民への犠牲転嫁を強めている。

人民のたたかい

(3月10日〜3月19日)

 対イラク戦争に反対する国際反戦統一行動が3月15日、各国で行われた。
 米国ではロサンゼルス、サンフランシスコ、ボストンなどの主要都市で緊急集会が開かれ、数十万人が参加。ワシントンの集会では「悪の帝国主義者がいるホワイトハウス」(集会主催者)へデモ行進した。
 スペインではマドリードで100万人、バルセロナでは50万人が参加。
 イタリアではミラノで約70万人が集会に参加。参加者は「労働者は団結して戦争反対」と訴え、戦争開始時にはストライキを打つ姿勢を明らかにした。
 ヨルダンでは国内への米軍駐留に反対して約5000人がデモ。
 パレスチナ自治区でも約2000人がデモし、ブッシュ米大統領の人形や米・英国旗などが焼かれた。

日本のできごと

(3月10日〜3月19日)

イラク攻撃支持で売国性露呈の小泉
 小泉首相は3月18日、ブッシュ米大統領がイラクに「最後通告」を行ったことを受け、「日本政府としてこの決断を支持する」と言明した。これに基づき、小泉は国内治安強化や為替市場安定などの経済政策を指示、内外政策ともに、米国によるイラク攻撃に全面協力を行おうとしている。小泉政権の対米追随の売国性は、ここにきわまった。また、米国は同日、わが国を「紛争処理後の支援国」と明確に位置づけ、日本をイラク「復興」で最大限に利用する意思を表明した。米国の無法な侵略に追随し、「支援国」として「評価」されることを喜ぶ与党やマスコミ、「国連決議の有無」でしか米国を批判できぬ野党では、中東・アジアと共生するわが国の進路を切りひらくことはできない。

「宣言破棄」ちらつかせる小泉政権
 福田官房長官は18日、昨年9月に日本と朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)両国が結んだ「平壌宣言」を破棄する可能性を示唆した。これは、外務省幹部が「(北朝鮮が)『誤った対応を取らないように』という警告だ」と述べたように、北朝鮮のミサイル発射や核再処理施設再稼働を、不当にもけん制したもの。また、政府は13日、北朝鮮がミサイルを発射した場合の対応について、迎撃ミサイルを発射することや、首相が防衛出動を命令する前に迎撃できるように自衛隊法を「改正」することも含め、検討に入った。すでに、3月初旬からの日米合同演習をはじめ、海上自衛隊はイージス艦「みょうこう」を日本海に出動させている。政府は「ミサイル」など「北朝鮮による挑発」を問題視しているが、軍事挑発・圧迫を行っているのは米国と日本の方である。ミサイル演習などは独立国として当然の権利であり、非難するような問題ではない。米国のひ護の下で北朝鮮敵視を進める小泉政権の姿勢は、わが国の国益に真っ向から反するものだ。

政府、都道府県合併で道州制もくろむ
 総務省は19日、市町村と同様に都道府県が合併できるよう、地方自治法を改める方針を固めた。現行法では、都道府県の合併には特例法が必要で、しかも、関係都道府県での住民投票が義務づけられている。政府はこの規定を削除し、都道府県議会と国会の議決で合併できるようにしようとしている。「奥田ビジョン」に示されるように、財界は道州制により地方政治の効率化、低コスト化を狙っているが、これと軌を一にするもの。市町村合併に続く都道府県合併は地方自治を根こそぎ破壊するもので、許されない。

税調、納税者番号制で国民負担増狙う
 政府税制調査会(首相の諮問機関)は19日、納税者に番号を付けて徴税に活用、国民管理を強める「納税者番号制度」の導入に向け、検討を開始する方針を決めた。株式配当など「金融所得の流れを透明化させる」とうたってはいるが、狙いは税務の効率性を増し、国民からいっそう税金を取り立てやすくするもの。税調は、05年度にも導入をめざす方針だ。財界が「消費税16%」を主張していることと併せ、納税者番号制で、国民の税負担がいっそう増すことは必至。あの手この手で国民総犠牲を進める小泉政権の下、国民各層の生活はますます厳しくなっている。

「定昇維持」できぬ大手春闘
 電機、自動車などが加盟する金属労協(IMF・JC)の大手労組への回答が12日、出揃った。「ベア論外、定昇凍結・見直しも対象」という態度で臨んだ経営側に対し、電機、鉄鋼などがベア要求ゼロ、連合も統一要求を放棄するなど、指導部は闘うことを自ら放棄した。笹森・連合会長は「定昇は維持された」などというが、多くの企業は今後「定昇見直し」を協議のテーブルに乗せる方向で、闘わぬ方針の下では「定昇維持」すら危うい。すでに、昨年の正社員労働者(平均40.1歳)の1カ月の平均賃金が、76年の調査開始以来初の対前年比1.0%減少で30万2600円となったことが19日、明らかになっている。しかも、これは正社員が十人以上の事業所が対象で、管理職を含む。中小を含む労働者の生活実態は、もっと深刻だ。長引く不況とリストラの嵐の中、ナショナルセンターとしての存在意義を投げ捨てる連合指導部に対し、労働者の批判が高まることは必至だ。


Copyright(C) Japan Labor Party 1996-2003