労働新聞 2003年3月15日号 トピックス

世界のできごと

(3月1日〜3月9日)

新決議提出も窮地の米国
 米英などは3月7日、17日を期限としてイラクの武装解除を迫る新決議を国連安全保障理事会に提出した。これは、国連監視検証査察委員会(UNMOVIC)が同日提出した、「大量破壊兵器」査察の追加報告を受けてのもの。イラクがミサイル廃棄を実施しているにもかかわらず、米英は、この決議で査察打ち切りと開戦をもくろんだ。これに対し、フランス、ロシアは拒否権の発動も辞さない構えを見せ、ドイツも強く反発。米国は決議なしでも攻撃する構えを崩していないが、英ブレア政権内では対米協力に反発が広がり、数人の閣僚や私設秘書議員が辞任、または辞意を表明している。米国はいっそう追いつめられ、ブレアは、イラクの武装解除期限を延期する修正案提出の動きを見せている。イラク攻撃の有無やその結果にかかわらず、米国を中心とする戦後の国際政治の枠組みは、大きく変わろうとしている。

トルコが米軍駐留を否決、米に打撃
 トルコでは1日、議会が米軍駐留を否決した。100人近い与党議員が造反、反対に回ったことで、可決充足数を割り込んだ。イラク北部を攻略する上で、同国を出撃基地にすることを狙った米国は、60億ドルの無償経済援助などで駐留を画策した。その上での否決は、米国には打撃であり、トルコ国民をはじめイスラム諸国の反米気運が反映したものだ。

米経済・財政の危機、さらに深刻に
 米国の2月の失業率が5.8%(前月比0.1ポイント増)と悪化、雇用者が30万人も減少したことが7日、明らかになった。これは、自動車大手のGMが国内2工場の一時閉鎖を発表するなど、企業が戦争に伴う需要減退を見越してリストラを進めたことなどによる。また、天然ガス価格が3カ月で2倍となるなど、原油・天然ガスの価格の高騰を受け、米企業は製品・サービス価格を軒並み値上げ、景気はいっそう冷え込んでいる。さらに米議会によると、04会計年度(04年9月まで)の財政赤字が過去最悪の3380億ドルに達する見込み。しかも、最低1000億ドルはかかるとされる対イラク戦費を含んでいない。イラク攻撃を振りかざす米国だが、経常収支赤字ともども「双子の赤字」が拡大、屋台骨が激しく揺さぶられている。

東アジアで軍事挑発強める米国
 米韓両軍は4日、野外共同訓練を中心とする実戦演習「フォール・イーグル」を韓国内および周辺海域で開始した。米空母や特殊部隊を含むもので、4月2日までの予定。前日には、米偵察機が朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)領空近くを飛行、北朝鮮を挑発した。9日からは、これと連動して日米合同演習も始まった。米国の言う北朝鮮との「対話」は真っ赤なウソで、実際は北朝鮮に対する軍事的挑発・圧迫を強めている。

人民のたたかい

(3月1日〜3月9日)

戦争に反対し、世界で青年などがデモ
 ニューヨーク、シカゴ、ロサンゼルスなど全米で五日、大学生・高校生が350以上のキャンパスで授業をボイコットし、イラク戦争に反対して集会・デモを行った。ベトナム戦争当時以来の規模で、シカゴでは1000人、ワシントンでも1000人が行動した。フランスのパリで5日、労働組合員など2万人が反戦デモを行った。スペインでも5日、学生5万人がマドリード市内をデモした。また同日、高校の95%、大学の80%がストに突入、授業をボイコットした。スイスのローザンヌで5日、高校生など4000人がデモを行った。インドネシアのスラバヤで9日、イスラム教徒を中心に80万人が集会を行った。エジプトのカイロで5日、労働者、学生など百万人が参加して反戦集会が開かれた。パキスタン北部のラワルピンディで9日、青年を中心とする40万人が反戦デモを行った。バングラディシュの首都ダッカで6日、3万人が反戦デモを行った。

日本のできごと

(3月1日〜3月9日)

日米共同軍事訓練で北朝鮮を挑発
 自衛隊は3月9日、沖縄周辺から東シナ海の海域で4日間の日程で、日米共同訓練を開始した。海上自衛隊からはイージス艦など4隻と対潜哨戒機P3Cが参加し、米海軍からは空母「カールビンソン」など6隻が参加して通信訓練を実施する。日本のイージス艦が米空母を守る大規模な軍事訓練は、自衛隊が米軍と一体化して実戦態勢に入っていることを示している。米国は同時に韓国とも、合同軍事訓練も行っており、こうした軍事力の展開は、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)にとって重大な軍事的脅威となっている。朝鮮問題での「平和的解決」などという言葉と裏腹に軍事的緊張を高め、北朝鮮を意図的に挑発する米国に追随するわが国の対応を許してはならない。

イラク攻撃支持を鮮明にした公明党
 公明党の神崎代表はアーミテージ国務副長官と会談するために、急きょ訪米した。4日の会談では「日本はイラク攻撃のための新決議案を支持している。公明党は政府の立場を理解し同じ考えに立っている」と米国支持を表明、小泉政権と一体であることを強調した。また、公明党は米国が安保理の決議なしでイラクを攻撃した場合、米国の武力行使を支持することを決めている。もはや、公明党は「平和の党」などでは決してなく、小泉政権を支え、戦争を支持するという犯罪的役回りを積極的に担っている。

株価続落、バブル後最安値を更新
 東京市場で7日、日経平均株価がバブル後最安値を更新し、終値は8144円となった。米ブッシュ大統領の「国連安保理決議なしでもイラク攻撃に踏み切る」との発言を受け、戦争が避けられないと予測からいっせいに株が売られた。金融機関の「3月危機」説がささやかれる中で、株安は金融システム不安や景気後退に拍車をかける。小泉政権はきわめて難しい経済状況に直面した。

小泉首相が世論批判の暴言
 小泉首相は5日の参院予算員会で、イラクへの武力行使に批判的な世論が高まっていることについて、「世論の動向に左右されて正しいかどうかは、歴史の事実を見ればそうでない場合も多々ある」と世論敵視の暴言を吐いた。対米追随一辺倒の態度は、国民世論から離れるばかりだ。経済危機への不満と重なって、国民各層のイラク戦争反対の意識は急速に高まってきている。

自民党・坂井衆院議員が逮捕
 衆院本会議で逮捕許諾が議決された自民党・坂井議員が7日、東京地検に政治資金規制法違反で逮捕された。人材サービス会社などから受領した約1億2000万円の献金を収支報告書に記載しなかったため。政治資金規正法違反で逮捕されるのはきわめて異例。間近に迫った統一地方選への影響を恐れた自民党は、坂井議員をはやばやと除名するなど、火消しにやっきとなっている。

破たん金融機関への国民負担10兆円
 預金保険機構は6日、今年3月までに168の破たんした金融機関に総額17兆9000億円の資金贈与を行ったと発表した。うち9兆9000億円は政府から交付された国債を原資としており、国民の血税が投入されたことになる。援助先では97年に破たんした日本長期信用銀行が約3兆2000億円で首位。日本債券信用銀行が3兆1000億円、北海道拓殖銀行1兆8000億円、木津信用組合が1兆円。この四金融機関だけで全体の51%を占める。巨額の支援を受けた破たん金融機関は、外資に二束三文で買い取られている。あまりの売国、国民不在ぶりに、あきれるばかりだ。

朝鮮学校などに大学入試資格与えず
 文部科学省は6日、大学入試資格を与える国内の外国人学校の対象を、米国と英国の学校評価機関の認証を受けた学校だけに認める方針を明らかにした。朝鮮学校などアジア系学校卒業生はこれまで通り、大学入学資格検定(大検)に合格しなければ受験は認められない。対象とされた学校の74%は朝鮮学校であり、北朝鮮敵視を教育の場にも持ち込むものだ。在日朝鮮青年同盟など3団体は6日までに、「重大な人権侵害」として闘いを開始している。

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