労働新聞 2003年2月25日号 トピックス

世界のできごと

(2月10日〜2月19日)

内外共に孤立深まる米国
 国連監視検証査察委員会(UNMOVIC)は2月14日、国連安全保障理事会に対して、イラクに対する「大量破壊兵器」査察報告を行った。報告は、イラクが「大量破壊兵器」を保有しているという明白な証拠を示せないまま、U2偵察機の上空飛行実施などを盛り込んでいる。これを受け、米英は査察の打ち切り、武力行使容認決議の提出を策動したが、フランス、ドイツ、ロシア、中国が査察継続を主張、米英と激しく対立した。また、ベルギーのブリュッセルで行われた欧州連合(EU)緊急首脳会議は十七日、英国が狙った査察の早期終結を求める文言は盛り込まれず、「戦争は不可避ではない」などとする共同声明を発表した。英国にお先棒を担がせ、東欧諸国など新規EU加盟国をも引き込んで武力行使容認を狙った米国の策動は成功しなかった。「国連決議なしでも攻撃」と「強気」のブッシュだが、全米九十議会が戦争反対の決議を行うなど、米国の孤立は内外共に、かつてないほどに深まっている。(社説参照)

米、国連使い、北朝鮮への包囲強める
 国際原子力機関(IAEA)は12日、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の「核開発」再開を「査察協定違反」として国連安保理に付託(報告)することを決めた。この決定には、ロシアとキューバが棄権、他二カ国が退席した。付託は、国連による制裁など、北朝鮮にいっそうの圧力をかけて武装解除を迫ろうとする、米国の意図を受けてのものである。事実、付託を受けて16日付米紙は、米国が国連による北朝鮮制裁案を検討し始めたと報じた。制裁案は、北朝鮮からの兵器輸出禁止や在日朝鮮人からの送金停止などを含むという。これに対して北朝鮮は、制裁が行われれた場合は「(53年の)朝鮮戦争休戦協定を破棄する」と激しく反発している。また米国は、米韓合同軍事演習を3月4日から実施すると、北朝鮮に通告した。北朝鮮は昨年、同演習に対して「事実上の宣戦布告」と反発した経過がある。平和的解決などと言いながら、米国は軍事を含む対北朝鮮敵視政策を続けている。

WTO東京会議、合意なく閉幕
 東京で開かれていた世界貿易機関(WTO)非公式閣僚会合は16日、合意できぬまま閉幕した。会議では農業自由化をめぐり、米国など農産物輸出国と、EU・日本などが対立した。また、エイズ患者激増に悩む途上国は、医薬品輸入に関して製薬会社の特許権の一部制限を求めたが、米国などが応じなかった。米国は他国に自由化を押し付けて多国籍大企業の利益をむさぼる一方、特許権保護をタテに膨大な途上国人民の命を危機に追いやっている。残酷な米国流グローバル資本主義の正体が、またも暴露された。

人民のたたかい

(2月10日〜2月19日)

対イラク戦争に反対し全世界でデモ
 米国によるイラク攻撃に反対する大規模な行動が2月15日、全世界でいっせいに行われた。行動は60カ国600都市に及び、1000万人以上が集会とデモを行った。英国ロンドンで200万人、イタリアのローマで300万人、スペインのマドリードで200万人、同バルセロナで150万人、米ニューヨーク50万人など、ベトナム戦争当時をもしのぐ空前の規模となった。この日を前後して、オーストラリアのメルボルンでは16万人(14日)、米サンフランシスコで25万人(16日)、インドのニューデリーでは6000人(10日)が対イラク戦争に反対してデモを行った。ドイツのライプチヒでも10日、1万人が「石油のための大量殺人反対」と訴え、デモした。同日は、プラウエンで1500人、ドレスデンでは1000人と、各地で同様の集会が取り組まれた。13日には、ブレーメンで8000人、ハンブルクで4000人が行動した。

日本のできごと

(2月10日〜2月19日)

孤立する米国を援護する小泉首相
 政府はイラクへの対応について、米国を支援する動きをあからさまに開始した。安保理非常任理事国のチリ大統領、カメルーンとギニアの駐日大使などへ、武力行使を容認した新決議への同調を働きかけ、2月18日に開かれた国連安全保障理事会の公開討論会では、米国を支持する発言を行った。また、小泉首相は17日、世界各国で相次ぐ反戦集会を批判するなど、積極的に米国を擁護している。その親米ぶりはきわめて特殊であり、対米追随の外交はわが国の進路を誤らせるものだ。

イラク攻撃あおる公明党
 公明党の冬柴幹事長は16日、イラク問題で戦争反対をいうことは「利敵行為」、査察継続を求めるフランス、ドイツ、ロシア、中国を批判し、フセイン体制の転覆は「世界中が賛成する」と述べた。最近の公明党の発言はきわめて反動的であり、この党の本質を示している。

世論調査、イラク攻撃反対が69%
 商業新聞が7〜9日に行った世論調査によれば、米国によるイラク攻撃に「反対」が69%にのぼり、「賛成」の14%を大きく上回った。また、イラク攻撃に反対する世界行動が行われた15日、東京、大阪、名古屋、札幌、沖縄など全国20カ所でデモなどが行われ、イラクを力づくで抑え込もうとする米国、それに追随する小泉政権に抗議した。米国の横暴を批判する声は日増しに高まっている。

農業自由化をさらに迫る米国
 東京で開かれた世界貿易機関(WTO)の非公式閣僚会合が16日閉幕した。農業問題では、自由化推進の米国の意図を受けた議長原案(関税額を現行より45%以上削減)が出された。この案を受け入れれば、日本農業はさらに壊滅的な打撃を受ける。全国農協中央会・宮田会長は「とうてい認められない内容だ」と強く批判した。政府は今のところ議長案反対のポーズをとっているが、日本農業を守る意思も決意もないことは、オレンジ、牛肉、コメの自由化の経過をみれば明らかである。農民を裏切り続けてきた政府に、いささかの幻想ももてない。(5面参照)

名古屋刑務所で暴行致死事件が多発
 名古屋地検特捜部は12日、保護房に収容した受刑者に暴行を加えて死亡させたとして、同刑務所副看守長を特別公務員暴行陵虐致死で逮捕した。同刑務所では受刑者が99年から60人も不審死しており、日常的に暴行が行われていたことは疑いない。国家権力そのものの暴力性を示すものであり、受刑者を死に至らしめた政府の責任は、厳しく問われなければならない。

財界の忠犬=自動車労組が賃上げ放棄
 自動車大手の労働組合が12日、春闘要求を提出した。史上最高の利益をあげたトヨタもベア要求を見送り、日産を除く各労組はベアなしで足並みをそろえた。多国籍企業が主導する財界は春闘を解体し、賃上げそのものを消滅させようとしている。自動車各労組の幹部たちはその意図にそって忠実に役割を果たし、労働組合を「リード」することをもくろんでいる。しかし、労働者たちの生活は日に日に悪化しており、いつまでもこうした労組幹部の存在を許せるはずはない。

02年の給与が前年比2.4%減
 厚生労働省が17日発表した毎月勤労統計調査によると、02年平均の月間現金給与総額は34万3480円となった。前年より2.4%減少し、調査開始以来の最大の落ち込み幅を更新した。現金給与総額のうち所定外給与(残業代)は前年比0.9%減、ボーナスなどの特別給与は7.3%減となった。賃金が上がらない中で消費はますます冷え込み、デフレを加速させている。


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