労働新聞 2003年2月5日号 トピックス

世界のできごと

(1月20日〜1月29日)

イラク査察継続に追い込まれた米国
 国連安全保障理事会は1月29日、国連監視検証査察委員会(UNMOVIC)によるイラクへの「大量破壊兵器」査察を2月14日まで延長することを決めた。これは、UNMOVICが27日に提出した報告書に基づくもの。27日は当初、査察の期限であったが、イラクによる「大量破壊兵器」開発の証拠は見つからなかった。査察延長の背景には、攻撃に反対する国際世論が高まり、米国がまたも譲歩を余儀なくされたことがある。また、米国は査察を継続して時間を稼ぎ、攻撃への国際的支持を狙っている。一方、ブッシュ大統領が28日、一般教書演説で述べたように、米国は依然として「国連決議なしの攻撃」も想定している。武力だけに頼る米国の現状は、帝国主義としての末期の姿を示している。 (関連記事1面

「双子の赤字」で危機深まる米経済
 米国の「双子の赤字」が急拡大していることが、27日までに明らかになった。昨年の経常収支赤字は9月までで3600億ドルを超え、通年では過去最大の4900億ドルに達する見込み。赤字の対国内総生産(GDP)比は、5%近い。財政赤字は、軍事費増大や不況による税収減などで、02会計年度(01年10月〜02年9月)は1500百億ドルの赤字。赤字転落は、97年以来5年ぶり。90年代に経常赤字を埋め合わせてきた米国への資金流入は、景気後退や米経済への不信感の増大で、「双子の赤字」が再燃、米帝国主義の基礎を掘り崩している。

南北朝鮮、交流継続で一致
 朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)を訪問した韓国の林東源・特別補佐官は28日、金永南・最高人民会議常任委員長と会談した。北朝鮮は、韓国の求めた核拡散防止条約(NPT)脱退の撤回には応じなかったが、南北交流の進展では合意した。両国は27日、軍事実務協議を行い、北朝鮮の観光地開発に関係する南北間の臨時道路建設について合意している。米日の北朝鮮圧迫政策にもかかわらず、南北朝鮮は、2000年の南北共同宣言に基づく対話の道を着実に歩んでいる。

世界で1年に2000万人が失業
 国際労働機関(ILO)の調査で24日、2002年末の全世界の失業者は1億8000万人に達し、前年比で2000万人(12.5%)も増えたことが明らかになった。99年比では3000万人増で、この1年の急増が目立つ。世界同時不況が背景で、特に女性や若年層の失業が顕著。地域別では、北アフリカ・中東地域が最悪。米国主導のグローバリズムは、全世界人民を悲惨な境遇に追い込んでいる。

人民のたたかい

(1月20日〜1月29日)

 ブラジルのポルトアレグレで行われた「世界社会フォーラム」に際して23日、米国のイラク攻撃とグローバリズムに反対し、世界中から集まった労働組合や非政府組織(NGO)、7万人がデモを行った。
 ニューヨーク、ボストンなど全14都市で29日、イラク攻撃とブッシュの一般教書演説に抗議するデモが行われた。ニューヨークでは500人が参加、「戦争でなく、仕事に予算を」と訴えた)。
 ドイツ各地で25日、イラク攻撃に反対しデモが行われた。ケルンでは1万人、北大西洋条約機構(NATO)基地のあるアーヘンでも、ドイツの参戦反対を訴え5000人が行動した。
 トルコのイスタンブールで26日、イラク攻撃に同国の基地を使うことに反対し、5000人が集会を行った。また、マレーシアイエメンスーダンシリアなどでも同様の集会が行われた。
 スロバキアで29日、赤字を理由とするローカル線廃止・民営化計画に反対し、国営鉄道労働者が6時間のストを闘った。同国の鉄道ストは、93年の独立後初めて。

日本のできごと

(1月20日〜1月29日)

通常国会始まる、国民犠牲の法案続々
 第156回通常国会が1月20日始まった。期間は6月18日までの150日間で、02年度補正予算、03年度予算、有事法制関連法案などが審議される。小泉改革によって国民生活はますます痛めつけられているが、与野党ともいっそうの「改革」を競うばかり。こうした国会劇場に期待を寄せることはできない。小泉首相は23日の衆院予算委員会で、公約を守れないのは大したことではないと暴言をはくなど、冒頭から国民無視の姿勢をあらわにした。

経済財政諮問会議、計画見直しへ
 政府の経済財政諮問会議は20日、07年度までの経済・財政運営の指針となる「中期展望」(02年1月作成)の改定を決めた。03年度までのデフレ克服は05年度以降になるなど、当初の目標は軒並み先送り。また、国債発行計画を大幅に上方修正し、新規国債発行額は40兆円を突破する。デフレの深刻化の中、小泉改革はわずか1年で大幅な見直しを強いられている。諮問会議では一般歳出の4割を占める社会保障関係費の見直し、消費税引き上げ議論も浮上。経済政策が打つ手のない状況の中で、国民負担増だけを突出させようとしている。

大銀行が不良債権処理加速へ
 不良債権処理を加速させるため、大手銀行が大規模増資に動き出した。みずほフィナンシャルグループは21日、1兆円の資本調達を発表した。国有化を恐れる銀行家たちは、「竹中プラン」を先取りし、不良債権処理を加速している。「破たん懸念先」の処理、新たな不良債権の発生に備えた貸出先の選別、経営不振企業への融資停止などを強めようとしている。3月期末を控えて、これまで以上に貸し渋り、貸しはがしが強化され、中小業者の経営がいっそう圧迫されるのは必至だ。こうした銀行の横暴は、断じて許されない。

公明党、イラク攻撃に「理解」示す
 公明党の冬柴幹事長は20日、米国がイラク攻撃を準備していることに対して、「米国の気持ちがわかる気がする。日本も国際協調の中で自主的、主体的に憲法の許す範囲でどうかかわるのか、どう貢献するのかが問われる」と述べ、米国のイラク攻撃に理解を示した。小泉政権を与党として支えている公明党が、平和や弱者の党ではないことがますますはっきりしてきた。

介護報酬見直し、保険料値上げへ
 社会保障審議会(厚労省の諮問機関)は23日、介護保険から介護サービス事業者に支払う介護報酬の改定案を了承した。介護報酬は3年おきに見直すことになっており、4月から実施される。全体の報酬が下がる中、訪問介護報酬は2.3%引き上げる。在宅介護事業の普及をはかり利用者の在宅促進を狙うが、介護報酬が引き上げられれば費用の1割を負担する利用者の自己負担も重くなる。また、厚生労働省は03年度に徴収する介護保険料月額が前年度比4.3%増の3043円になるとの見込みをまとめた。収入が上がらない中での負担増は、生活をさらに圧迫する。

もんじゅ設置無効判決で、国に打撃
 95年にナトリウム漏れ事故を起こし停止中の高速増殖炉原型炉もんじゅをめぐる行政訴訟の判決が27日、名古屋高裁金沢支部であり、「設置許可を無効」とした。原発をめぐり、住民側が勝訴したのは初めて。判決は「もんじゅの不備を原子力安全委員会は無批判に受け入れた」と国の姿勢を批判。核燃料サイクル政策の要とされるもんじゅの設置が否定されたことで、プルサーマルや使用済み燃料再処理など国の計画は大きな打撃を受けた。

ホンダが定昇までも廃止へ
 ホンダが定期昇給制度を廃止したことが25日、明らかになった。成果主義を徹底し、会社の評価が低い社員の給与引き下げにも踏み込むもの。同資格(主任)の場合で、給与の差は月約5000円だったものが、約2万円に広がる。トヨタ自動車のベア見送りに続くもので、日本のこれまでの給与体系を崩し、低賃金化を進めようとする経営側の狙いは鮮明だ。こうした経営側の攻撃と闘わず、積極的に受け入れる労働組合の恥知らずな裏切りを許してならない。


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