労働新聞 2002年12月15日号 トピックス

世界のできごと

(11月30日〜12月9日)

イラク、国連に申告書提出
 イラクは12月7日、国連査察団に対し、「大量破壊兵器」に関する申告書を提出した。今後、国連監視検証査察委員会(UNMOVIC)が、報告書を「検証」することとなる。報告書は1万ページ以上の膨大なもので、申告範囲は「大量破壊兵器」どころか、民生分野のスリッパ工場をも含む。そもそも、申告の義務づけ自身が内政干渉だが、その内容にかかわらず、米国は「(イラクの大量破壊兵器)保有を裏付ける証拠がある」と、何ら証拠を示さぬまま主張している。あくまでイラクへの攻撃をもくろむ米国にとっては、査察や報告書も手続きに過ぎず、「『大量破壊兵器問題』自身が茶番で、米国は攻撃の口実を求めているだけ」(イラク)である。

米、閣僚更迭で景気てこ入れめざす
  米ブッシュ政権は6日、オニール財務長官、リンゼー大統領補佐官を事実上更迭、スノー新財務長官らを任命した。ブッシュ政権は閣僚交代を機に、景気刺激策の具体化にとりかかる。当初、経済閣僚の交代は「対イラク戦後」といわれてきたが、失業率が7カ月ぶりに6六%代に上昇、航空大手のUALが破たんするなど、米経済の景気後退色が強まったことにより、ブッシュは景気てこ入れへの早期の決断を余儀なくされた。世界中で武力を振りかざす米国だが、自国経済の後退で、足元には火がついている。

欧州中銀が金融緩和
 欧州中央銀行(ECB)は5日、0.5%の大幅利下げを行った。金融緩和は1年1カ月ぶりで、欧州の株価低迷やデフレ深刻化に対処しようとしたもの。しかし、欧州経済、とくにドイツ経済は低迷を続けており、7〜9月の国内総生産(GDP)成長率はわずか0.3%。景気後退により財政赤字の対GDP比率は2年連続で3%を突破、欧州単一通貨制度の必要基準を超えている。欧州経済の先行きは、域内GDPの3分の1を占めるドイツの不振により、手詰まり感が強まっている。米日欧の同時不況の中、世界資本主義をけん引できる国は、1つとしてない。

中ロ首脳会談、改めて協調を確認
 中国訪問中のプーチン・ロシア大統領は2日、江沢民国家主席らと会談した。両首脳は、イラク問題の「国連の枠内での解決」で合意した。朝鮮半島問題では、94年の米朝枠組みによる米朝関係の改善と併せ、北朝鮮の核開発中止を求めた。また石油・天然ガスのパイプライン建設プロジェクトなどで合意した。中国にとっては、石油供給国を中東以外にも広げることも懸案であった。プーチンの対米協調路線で関係が微妙な両国だが、ひとまず協調が再確認された。

人民のたたかい

(11月30日〜12月9日)

 米軍による女子中学生れき殺事故に関して、国全土で7日、10万人規模の被害者追悼・反米集会が開かれた。ソウルでの集会には、労働者など5万人が参加した。
 イタリアで、合理化攻撃を受けている自動車会社、フィアットの労働者数千人が5日、政労資交渉の決裂を受けてローマの首相府に押しかけた。翌6日には、労働者が加盟する金属労組が8時間ストに突入、会社側が5600人の一時帰休を強行した9日には、本社トリノ工場で4時間ストを敢行し、7000人の労働者が市内をデモした。
 欧州連合(EU)への加盟が決まっているチェコのプラハで4日、同国と隣国スロバキアの農民1万人以上が、EU加盟に伴う農業補助金の削減に反対してデモを行った。
 トルコのイスタンブールで1日、隣国イラクへの攻撃に反対するデモが行われ、5000人が参加した。
 オーストラリア全土で11月30日、イラクへの攻撃とオーストラリア政府の参戦に反対する集会とデモが行われた。シドニーでは、労働組合員など1万人以上が参加した。

日本のできごと

(11月30日〜12月9日)

小泉政権がイージス艦派遣を決定
 政府は12月4日、高度な情報収集能力と攻撃力をもつイージス艦を、今月中旬にインド洋に派遣する方針を決めた。米国の圧力を受け、イラク攻撃を準備する米軍を支援するもの。憲法で否定した集団的自衛権行使にも踏み込むもので、きわめて危険な選択だ。(社説参照)

イラク「復興」に自衛隊派兵を検討
 政府は5日、イージス艦派遣に続くイラク戦争の米国支援策の目玉として、戦争終結後のイラク「復興」に自衛隊を派遣する方向で検討に入った。国連平和維持活動(PKO)が編成されない事態を想定し、新法制定も念頭においているという熱心さだ。米国に追随してイラク戦争に協力、参戦し、戦後は石油利権にありつこうとする売国的な外交姿勢は、中東諸国の大きな反発に直面するだろう。

道路民営化委最終報告に強い反発
 政府の道路関係4公団民営化推進委員会は6日、高速道路の新規建設の抑制を主張する最終報告を決定し、小泉首相に提出した。一定の道路建設は必要と主張してきた今井敬・新日本製鉄会長が委員長を辞任するなど、推進委員会は混乱をきわめた。この最終報告に対しては、「到底容認できない」(木村・和歌山県知事)と地方自治体などが強く反発しており、法案作成に向けて政府・与党内の対立はさらに激化するもようだ。

消費税、たばこ・発泡酒など増税へ
 与党3党の税制協議会は5日、消費税の特例措置を大幅に縮小し、免税点、簡易課税を引き下げて中小零細業者に課税する方針を固めた。また、自民党税制調査会は嗜好品への増税を検討。1本当たり約7円のたばこ税を1円、発泡酒にかかる酒税を10円、ワインの酒税を10円引き上げることを決めた。これに対しビール大手5社は、「大衆商品の増税は容認できない」として、発泡酒の増税反対署名を呼びかけた。また、自民党本部に5日、商工団体幹部ら800人が結集、外形標準課税の導入反対を訴えた。中小商工業者を中心に、増税への反撃が強まっている。

沖縄暴行未遂事件、米国引き渡し拒否
 米政府は5日、在沖縄米軍海兵隊少佐による強姦(ごうかん)未遂事件について、犯人の少佐の起訴前の身柄引き渡しを拒否した。95年の日米合同委員会で合意した凶悪犯罪に関する身柄引き渡しの「運用改善」後、米軍が引き渡しに応じなかったのは初めて。沖縄では全自治体で地位協定見直しを求める決議が採択されるなど、地位協定見直しの要求が高まっている。(関連記事1面)

コメ政策大綱、減反の廃止打ち出す
 政府・与党は3日、コメ政策見直しの方針を定めた「コメ政策大綱」をまとめた。国主導の減反を2008年度までにやめ、農業者・同団体が自主的にコメの生産量を調整する、新たな仕組みをつくることを明記した。70年代から30年以上続けたコメ減反政策の強制によって水田は荒廃し、日本農業は衰退した。さらに大綱では、大規模な農家への助成を手厚くし、零細農家をいっそう切り捨てようとしている。

人材派遣業、製造現場への派遣解禁
 厚生労働省は5日、工場など製造現場への人材派遣を条件付きで解禁する規制緩和案を労働政策審議会の部会に提出した。労働者派遣法改正案を来年1月召集の通常国会に提出し、来年中の施行をめざす。背景には、人件費を抑制して雇用調整しやすい労働者を求める企業の要望がある。派遣労働者は急増しており、製造業で解禁されれば数十万の労働者が派遣に切り替えられるという予測もある。不況の中で、労働者をいっそう不安定な雇用に追い込む動きだ。

日本経団連が企業献金あっせんへ
 日本経団連が政治献金をあっせんする方針で検討を始めたことが、8日までに明らかになった。財界は今年5月、従来の経団連、日経連を統合、多国籍企業の頭目、奥田・トヨタ会長が会長に就任した日本経団連を発足させている。政治が混迷する中で、多国籍企業の利益にそって国内政治の再編を進めるために、政治資金を使って政界を強力にコントロールしようとする、露骨な動きだ。


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