20021125 トピックス

労働新聞　2002年11月25日号トピックス

世界のできごと

（11月10日～11月19日）

イラク査察団がバグダッドに到着
　国連決議に基づくイラクの「大量破壊兵器」査察団先遣隊が１１月１８日、首都バグダッドに到着した。査察は４年ぶりだが、大統領官邸への立ち入りや科学者の国外連れ出しまでも認める明らかな内政干渉で、今後、イラクが査察に抵抗したとしても当然である。また、米マクレラン大統領副報道官は同日、米英が一方的に設定したイラクの「飛行禁止区域」を飛行する米英機に対するイラク軍の対空砲火について、「国連決議違反」と難クセを付けた。米国の態度は「初めに攻撃ありき」であり、口実づくりのためのイラクへの内政干渉は、断じて許せない。

ますます北朝鮮圧迫強める米国
　朝鮮半島エネルギー機構（ＫＥＤＯ）は１４日、米ニューヨークで理事会を開き、94年のジュネーブ合意に基づく朝鮮民主主義人民共和国（北朝鮮）への重油供与を、１２月以降凍結すること決めた。米国は北朝鮮への圧迫強化のためにＫＥＤＯの枠組み自身をなくそうとしているが、当初、韓国はこれに抵抗、重油供与の継続を求めた。だが、わが国は逆に韓国を「説得」するなど、米国の「提灯持ち」として、朝鮮半島の緊張を激化させる役回りを演じた。核開発を口実に北朝鮮への圧力を強め、北朝鮮経済と人民に打撃を与え屈服を迫る米国の悪らつなたくらみを、許してはならない。

経済・政治危機を深める中南米
　アルゼンチン政府は１４日、世界銀行債務の返済不履行を発表した。国際通貨基金（ＩＭＦ）は、追加融資の条件として「公共料金の３０％引き上げ」など無理難題を要求した。同国は１８日、政府と州知事、政党代表がＩＭＦとの協定に調印したが、首都を含む４州知事はこれを拒否した。ＩＭＦとの合意を履行すれば、人民の生活はさらに悪化、大きな反発は避けられない。また、ベネズエラでは、自主外交を貫くチャベス大統領に対し、米国の後押しを受けたペニャ・カラカス市長が警察の１一部を使って反乱、大統領を支持する軍は１６日、首都警察を制圧した。自らの「裏庭」である中南米の経済・政治を意のままにできぬ米国は、焦りを募らせている。

中国共産党、資本家の入党を公認
　北京で行われていた中国共産党の第１６回大会は１４日、閉会した。大会では、国有企業の民営化加速、経済発展が遅れた西部地域の開発推進などと併せ、資本家の入党を認める「３つの代表」論を規約に明記した。これにより中国共産党は、労働者階級の前衛党であることを自ら放棄したことになる。この後、江沢民氏に代わって新総書記に胡錦濤国家副主席を据えるなど、新体制が発足した。

人民のたたかい

（11月10日～11月19日）

　韓国のソウルで１０日、民主労総による「全国労働者大会」が開催され、２万5000人の組合員が参加した。労働者は、週５日制などを含む労働法の改悪などに反対した。１３日には、「全国農民大会」がソウルで開かれ、１５万人の農民が参加した。また、ソウルで１０日、イラク攻撃に反対する集会が開かれ、1000人が参加した。
　インドのニューデリーで１４日、米国によるイラク攻撃に反対し、労働者や学生1500人がデモを行った。
　イタリアの自動車会社、フィアットの解雇攻撃に反対して１５日、全国の同社工場で８時間ストが闘われた。３大労組が呼びかけたもので、機械関連労組も連帯ストを闘った。閉鎖予定のシチリア州の工場労働者は、近隣の港を封鎖、座り込み行動を行った。
　ポルトガルの公務員労組が１４日、賃上げを求めて５０万人のストライキに突入した。ストには官公庁、港湾、学校、病院などの労働者が参加、１０年ぶりのゼネストとなった。
　英国消防士組合が１３日、大幅賃上げを求めて４８時間ストに突入した。消防士のストは、２５年ぶり。

日本のできごと

（11月10日～11月19日）

平壌宣言を順守せず、敵視強める日本
　朝鮮民主主義人民共和国（北朝鮮）の外務省スポークスマンは１１月１４日、日本人拉致事件の被害者５人について、「日本側が帰還させるとした合意を完全に順守しないかぎり、安保関連会談の無期限延期を含む重大な結果が生じる」とけん制した。日朝国交正常化交渉が遅れている責任は、米国に追随し、朝鮮半島エネルギー機構（ＫＥＤＯ）の重油供給停止決定を積極的におし進めるなど、敵視政策を強めたわが国政府にある。（社説参照）

民主党菅前幹事長が李登輝と会談
　李登輝前台湾「総統」は１１日、日本の大学で講演するためにビザ申請したが、外務省は１３日、講演などを目的に申請しても発給しない方針を李登輝に通告した。ところが、こうした中で民主党菅前幹事長は１５日、台湾を訪問して李登輝と会談。李訪日問題では、「政府の姿勢は残念。受け入れない理由は特にない」と述べた。菅氏の言動は、「１つの中国」をうたった日中共同声明に反するもので、民主党が意図的にこうした役回りを担っていることは明らかだ。

中教審、教育基本法改定を報告
　中央教育審議会（文部科学相の諮問機関）は１４日、教育基本法を「愛国心」などの理念を加えて改定し、教育改革のための教育振興基本計画を策定するという中間報告を提出した。教育基本法の改定は、グローバル資本主義に対応した国際競争に勝ち抜くための、効率的人材育成をめざした教育改革の一環であると同時に、支配層が「憲法改悪に手をつける突破口」（中曽根元首相）として位置づける危険なものだ。

市長選で自民分裂、敗退が相次ぐ
　１０日投開票された熊本市長選では、無所属新人で前自民党県議の幸山政史氏が現職（自民、公明、保守推薦）を破り当選した。同日行われた新潟市長選挙では無所属新人の篠田昭氏が前助役（自民、公明推薦）を破り当選した。また、１７日に投開票された尼崎市長選では無所属の白井文氏が現職（自民、民主、公明、自由、保守推薦）の現職を破って当選した。いずれも投票率は低く、市民の政党不信が表れている。また、自民党が候補者擁立で分裂したり、敗北した背景には自民党支持基盤、特に中小業者らの自民党からの離反・反抗の激化があることを示している。

沖縄知事選、稲嶺氏１５年期限を公約
　沖縄県知事選挙が１７日、投開票され、現職の稲嶺恵一氏（自民、公明、保守推薦）が当選した。中央直結の景気対策を売り物に再選された稲嶺氏だが、県民の強い意思に押され、普天間代替基地の「１５年期限」を公約に掲げた。当選後の記者会見でも「この問題が解決しない限り、新基地建設着工はありえない」と、強調せざるを得なかった。稲嶺氏は今後、公約実現のために政府と闘うのかが問われてくる。
　
イラク有事にらみ、さらに自衛艦派遣
　政府は１９日、テロ対策特別措置法に基づく基本計画の１部変更を閣議決定した。変更内容は、①インド洋への海上自衛隊の派遣を来年５月１９日まで半年間延長する②アフガニスタンの米軍飛行場の補修用機材をタイから輸送するために新たに海自輸送艦１隻と護衛艦１隻を派遣するの２点。また、高性能の防空システムを搭載するイージス艦のインド洋への派遣について、引き続き検討課題とした。テロ特措法によるインド洋への自衛艦派遣の延長は２度目であり、政府は着々と海外派兵の実績をつくろうとしている。また、今回の派兵は、イラク有事をにらんだ米軍支援態勢でもある。

米軍が日本海で水中爆破訓練を強行
　米軍は１４日、島根県・隠岐諸島沖の日本海で水中爆破訓練を強行した。訓練を漁業関係者が知ったのは前日で、訓練海域はズワイガニ漁の最盛期。島根、鳥取県は、外務省を通じて中止を要請したが、米軍は訓練を強行した。これに対し、島根、鳥取、兵庫の３漁連が首相官邸・米大使館などに訓練中止の要請を行ったのをはじめ、連合島根も１５日、澄田島根県知事に同様の要請を行った。米政府は１５日にも、同訓練を種子島沖などで実施すると通告、政府はこれを容認する対米追随ぶりをあらわとした。（５面参照）