労働新聞 2002年11月15日号 トピックス

世界のできごと

(10月30日〜11月9日)

国連、イラクに査察受け入れ迫る
 国連安全保障理事会は11月8日、イラクに「大量破壊兵器」の査察を迫る決議案を、全会一致で採択した。決議はイラクに対して査察を来月下旬までに再開することや、イラク側が「非協力的」であれば、「重大な違反」として、安保理に報告するなどとした内容。なお、イラクは、決議の受け入れを表明した。対イラク攻撃の口実づくりのため、国連決議採択を狙った米国だが、「安保理とは別に行動する」(パウエル国務長官)とも述べており、イラク攻撃の機会を虎視眈々(こしたんたん)と狙っている。世界最大の核・大量破壊兵器保有国の米国に、イラクの武装解除を迫る資格はない。(1面参照

選挙「勝利」も、経済は深刻
 米経済は、ますます不透明さを増している。これまで経済を下支えしてきた個人消費が、9月前期比0.4%減少、10カ月ぶりにマイナスとなった。また10月の失業率も5.7%となり、前期比0.1ポイント上昇した。これを受けて、米連邦準備制度理事会(FRB)は11月6日、金利の誘導目標を0.5%引き下げ、年1.25%にすることを決定した。こうした中、5日に投票された中間選挙で、共和党が下院で過半数を維持、上院でも過半数を奪還した。だが、国民の関心は低調で、投票率はわずか39%だった。ブッシュ・共和党は深刻な経済問題には口を閉ざし、もっぱら「対テロ戦争」を全面に押し出して選挙運動を展開、一方の民主党も対イラク戦争について争点にしないとの姿勢を示し、経済問題でもブッシュ政権への明確な対抗軸を打ち出せなかった。勝利したブッシュ政権だが、足元の経済は揺らいでいる。(1面参照

イスラエル、シャロン政権崩壊
 イスラエルのシャロン連立政権が10月30日、労働党の政権離脱によって崩壊した。シャロン首相は、2003年度予算案で7億シェケル(約172億2000万円)をユダヤ人入植者対策として計上したが、労働党が反対、ペレス外相ら計6人の閣僚が辞任した。イスラエルは総選挙に突入することとなる。労働党はこれまで与党として政権を支えてきたが、長引くパレスチナとの紛争に対して国民の批判が拡大、こうした声に配慮せざるを得なかったもの。

南北朝鮮、経済協力推進で合意
 朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の平壌で開かれていた南北第3回経済協力推進委員会は11月9日、合意書を発表して終了した。内容は、鉄道・道路の南北連結、開城工業団地の造成などの経済協力の具体化と、その日程が盛り込まれている。韓国代表団は、「(北朝鮮の)核開発問題の解決は、南北経済協力の前提条件ではない」と言明、核問題を理由に経済協力を停滞させる考えのないことを示し、米日両国との違いを見せた。米ブッシュ政権の北朝鮮武装解除策動が強まる中での今回の合意は、南北対話の推進と朝鮮半島の平和の上で、重要な意味を持つものである。

人民のたたかい

(10月30日〜11月9日)

 イタリアのフィレンツェで、欧州を中心とした各国の労組、非政府組織(NGO)などによるグローバル化問題を討議する「欧州社会フォーラム」が開かれたが、フォーラム参加者など約100万人が9日、米国の対イラク攻撃に反対するデモを行った。参加者は「米国こそ暴力国家」などと書かれたプラカードを掲げながら、米ブッシュ政権の戦争策動に抗議の声をあげた。
 アルゼンチンのブエノスアイレスで7日、数千人の労働者が、政府が計画している失業手当の打ち切りに反対して市内をデモ行進した。
 ロシアで7日、10月革命85周年を記念する集会が全国で行われ、約30万人が参加した。独立国家共同体の一部の国でも、同様の記念集会が開かれた。

日本のできごと

(10月30日〜11月9日)

日朝交渉で、正常化延ばす小泉政権
 日朝国交正常化交渉が10月29〜30日、約2年ぶりにマレーシアで開かれた。日本側は、肝心の国交正常化問題をまったく無視して、最初から拉致問題解決や核兵器開発計画の即時撤廃を要求。これらの問題の解決が、「国交正常化の前提」と主張した。朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)側は話し合いの余地を残しながらも、拉致問題は本質的に解決済みとし、核問題も米国との協議で解決すると反論。国交正常化や経済協力問題を最優先課題とすべきだと強調した。交渉は双方の対立を残したまま終了し、核・ミサイル問題などを協議する安全保障協議を11月に開催することで合意した。小泉政権は米国の戦略を背景に、北朝鮮へ不当な「難題」を高圧的に押し付け、譲歩を迫っている。小泉政権は平壌宣言を直ちに履行すべきであり、最も優先すべき国交正常化を先送りすることは、断じて許されない。

「デフレ対策」で、国民犠牲激増へ
 小泉政権は30日、不良債権処理の加速と企業再生策を一体で進めるとともに、雇用・中小企業対策を盛り込んだ「総合デフレ対策」を決定した。銀行と竹中財政経済相が対立して焦点となった税効果会計の厳格化は先送りされ、早くも不良債権処理がうまく進むか疑問の声が上がっている。景気対策も極めて中途半端で、結局「不良債権処理・企業再生は中途半端、景気は悪化」の結果になる可能性が大きい。「安全網」とは名ばかりで中小企業対策、雇用対策も非常にお粗末であり、今回の「デフレ対策」が実施されれば、多大な国民犠牲は免れない。中小企業はつぶれ、債権処理加速で165万人の失業が発生するという試算さえある。(社説参照

衆院調査会が改憲地ならしの報告書
 衆議院憲法調査会は11月1日、2000年1月発足以来の議論をまとめた中間報告を衆院議長に提出した。調査会などでの議論を、安全保障、天皇制、基本的人権など項目ごとに論点整理したもの。改憲と護憲の両論を併記しているものの、自民党、民主党の改憲論の委員が多いことを反映して、憲法を改正すべきだとする意見が大勢だとしている。調査会は、2005年をメドに最終報告をまとめる。すでに、この中間報告公表を進めた自民・民主両党と公表反対の社民・共産両党との対立が激化している。この段階での報告公表は、第9条を中心にした改憲に向けての環境づくりを狙った、極めて反動的なものである。

ASEANとFTA交渉を来年開始
 小泉首相は5日、カンボジアで東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳と会談し、自由貿易協定(FTA)を「10年以内の早い時期」に締結することを盛り込んだ共同宣言に署名し、来年に交渉を開始することでも合意した。小泉首相は1月に「包括的経済連携構想」を発表し、シンガポールと初めてFTAに調印している。だが、中国は早くからASEANとのFTA締結を打ち出しており、4日にはFTAを具体的に進める「枠組み協定」にも調印するほどに先行している。また米国も、アジアでのFTA実現を急いでいる。小泉政権の一連の対ASEAN政策は、真にアジアとの友好・共生をめざしたものではなく、近年、経済面でもアジアでますます存在感を増す中国に対抗しようとするものにすぎない。

地方分権会議が、地方犠牲の報告書
 政府の地方分権改革推進会議が10月30日、地方に義務付けている事務事業の見直しについての最終報告を首相に提出した。義務教育関係への国庫補助負担金の廃止・縮減案などを盛り込んでいる。地方への税源委譲もなく、地方の負担増加ばかりで、「われわれの死活問題。巨額の負担を地方に押し付けるのは断固反対だ」(土屋全国知事会会長)と、地方自治体から猛反発が出ている。

トヨタ、リストラで中間期も最高益
 トヨタ自動車は30日、2002年9月中間連結決算で、経常利益が前年同期比51%増の7940億円になったと発表した。半期では日本企業として過去最高を記録。トヨタのもうけは北米市場での売上増とともに、労働者へのベアゼロ、下請け単価引き下げ強要などのリストラで絞り出した悪どいものだ。


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