労働新聞 2002年10月25日号 トピックス

世界のできごと

(10月10日〜10月19日)

北朝鮮核開発問題、圧力強める米国
 米国は10月16日、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)が今月はじめの米朝高官協議の際、核兵器開発を継続していたことを認めていたことを明らかにし、北朝鮮に開発の即時中止を求めた。だが実際は、ブッシュ政権が朝鮮半島エネルギー開発機構(KEDO)への資金拠出を遅らせるなど、米国こそ「合意違反」を行っている。核によって圧迫する米国に対して、北朝鮮が主権を守るために武装するのは、独立国として当然だ。(社説参照

国連緊急公開会議、相次ぐ米国批判
 国連安保理で16日、非同盟諸国の要請で、イラク問題をめぐる緊急公開協議が行われた。協議では、「武力行使決議は国連憲章に反する」(南アフリカ)、「攻撃につながるいかなる対決も拒否」(アラブ首長国連邦)など、米国への非難が相次いだ。これに押されて、米国は、対イラク武力行使決議案の一部修正案を提案する意向を明らかにした。米国では、上下両院で大統領に武力攻撃への権限を付与する決議を採択したが、上院で2割、下院も3割と、予想を超す反対票が投じられた。ブッシュはあくまで攻撃に固執しているが、孤立化は深まっている。

マレーシア首相、鋭い米批判
 マレーシアのマハティール首相は15日、クアラルンプールで開かれた核問題の国際会議で演説を行い、「若干の国が他国に一方的な断定を下す傾向がある」「同盟国であれば、核の開発・保有を規制せず、同盟国でない場合は、軍事力で圧力をかける」と、北朝鮮やイラクに圧力をかけ続けている米国を批判した。こうした意見は、まったく正当である。

米銀、不良債権問題が深刻に
 米国の大手銀行が抱える不良債権が9月末で昨年比約35%も増加していることが16日、分かった。また、シティーグループなど大手10行の最終処理額は、7〜9月期で前年同月比1割増の70億3100万ドルに達した。ワールドコムの破たんなど、通信、エネルギー業界などの経営悪化が、不良債権を押し上げた形。不良債権処理を進めれば、企業が淘汰(とうた)され、いっそうの景気下降要因となる可能性がある。米国内では、悪化する経済に打つ手がないブッシュ政権に対する批判が強まっている。

グローバル経済の下、飢餓人口減らず
 国連食糧農業機関(FAO)は15日、「世界における食料不安の状態2003年版」を発表した。同報告では、「飢餓削減の歩みが事実上止まっている」と、厳しい警告を発した。発表によると、98〜2000年、世界の栄養不足人口は約8億4000万人と推定され、その95%が発展途上国に集中し、先進国でも貧富の格差が拡大している。こんにち、米国主導のグローバル経済の下、膨大な資金が世界中をかけ巡っているが、経済格差はいっそう拡大している。報告は、そうしたグローバル経済のもたらす凶暴性の一端を示すものである。

人民のたたかい

(10月10日〜10月19日)

 イタリアで18日、ベルルスコーニ政権が狙う解雇規制緩和や生活予算削減に反対する8時間ゼネストが行われた。労働総同盟(CGIL)の呼びかけで、120都市でデモや集会が行われ、約100万人が参加した(写真)。11日には、自動車企業フィアットの人員削減案に抗議して、3大労組が4時間ストをうち、本社のあるトリノなど各都市で、数千人の労働者がデモを行った。17日には、閉鎖が計画されているシチリア工場の従業員・家族1500人以上が、ローマの首相府に押しかけた。
 フランスで12日、イラク攻撃に反対するデモが全国30都市以上で行われた。パリでは約1万5000人が、「石油のために血を流すな」と訴えた。
 メキシコで12日、米国主導の米州自由貿易地域(FTAA)構想に反対するデモが行われ、労働者や先住民代表など、約5万人が参加した。「FTAA=貧困と失業」と書かれたプラカードも掲げられた。

日本のできごと

(10月10日〜10月19日)

臨時国会開幕、経済に策なしの小泉
 第155臨時国会が10月18日、召集された。所信表明演説を行った小泉首相は、経済再生、構造改革、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)との国交正常化など外交政策に触れた。だが、デフレ対策にはまったく具体性がなく、補正予算にも言及がなかった。一方、1兆円規模の大企業減税や不良債権処理の加速を表明するなど、大企業優遇、中小つぶしは鮮明だ。経済の深刻化を受け、「改革なくして成長なし」という言葉とはうらはらに、「国債30兆円枠」はすでに実現不可能となるなど、改革政治は事実上の政策転換を余儀なくされている。マスコミでさえ「首相の指導力欠如こそ政策迷走の主因」(日経)と言うほどで、小泉政権は瀬戸際に追い詰められた。

政府、安保を日朝交渉の前面に掲げる
 米国は16日、北朝鮮が核兵器の研究を行っていることを認めたと発表した。これを受けて小泉政権は、29日に行われる日朝国交正常化交渉に対し、「中断を辞さない」姿勢で、拉致問題に加え「核」やミサイルなどの安全保障問題を持ち出すことを決めた。これは事実上、「早期の国交正常化」をうたった平壌宣言をホゴにすることを表明したもの。独立・自主の外交を確立し、北朝鮮と国交を正常化することこそ、重要である。(社説参照

拉致被害者5人が一時帰国
 北朝鮮による拉致被害者5人が15日、一時帰国した。5人は、家族、友人らと再会を喜びあった。だが、マスコミは帰国を利用して、悪らつな北朝鮮敵視キャンペーンを強めている。排外主義をあおり、国交正常化を妨害しようとする政府、マスコミの策動を許してはならない。

「愛国心」掲げる教育基本法見直し案
 中央教育審議会(会長・鳥居泰彦慶応大学塾長)の基本問題部会は17日、中間報告素案を公表した。素案は、国など「『公』にかかわる意識や国や郷土を愛する心」などを盛り込むとして、教育基本法を見直すことを明示している。また、「学校の役割や教員の使命感」「家庭の役割」を規定することも求めた。中間報告は、来月中旬に発表される予定。教基法見直しの動きは、支配層のたくらむ対米追随の有事法制整備などと結びついたものであり、国民の反撃は必至だ。

東証株価続落バブル後安値更新
 米国の景気悪化、企業業績不振を背景に、世界同時株安が止まらない。わが国も10日、ついに一時8400円台と、83年4月以来となるバブル崩壊後の最安値を記録した。とりわけ、小泉改造内閣発足後、竹中経済財政・金融担当大臣が不良債権処理の加速を宣言、産業再編のため、銀行や企業の倒産を辞さない姿勢を露骨に打ち出したことで、いっそうの暴落を誘っている。株安は、銀行の株式含み損を急拡大させ、総額五兆円超となったもよう。株安は、実体経済にも深刻な影響を与えている。小泉が「腹をくくった」不良債権処理は、最悪の環境下で立ち往生している。

失業者に「痛み」強いる失業手当削減
 厚生労働省は10日、失業手当の給付の削減案をまとめた。失業手当は、離職前賃金の6〜8割を90〜330日の範囲で受け取るが、今回の見直し案では、給付水準の比較的高い、中高年層の給付率の下限を6割から5割に引き下げる。給付日額の上限も、730円へと約3割削減される。離職前賃金が約49万円だった45〜59歳の給付月額は21万9000円と、現行より7万4000円も低くなる。厚労省はこれを「再就職のための活動に本腰を入れる人が増える」などとし、失業者の実態を無視した、許しがたい策動を進めようとしている。これが支配層のいう、雇用の安全網(セーフティーネット)再構築の狙いである。

上期の上場企業倒産が最多を記録
 帝国データバンクは15日、今年度上半期の全国企業倒産状況を発表した。倒産件数は前年同期比0.2%減の9642件と、上期としては戦後4番目だったが、上場企業の倒産は13件で、過去最高を記録した。倒産原因は、販売不振が6523件と過去最高。業歴30年以上の「老舗倒産」が構成比で26.8%に達し、過去最悪。深刻なデフレ、不況が国民生活、営業を直撃している。


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