労働新聞 2002年10月15日号 トピックス

世界のできごと

(9月30日〜10月9日)

景気後退鮮明となる米経済
 米経済の深刻さが増している。7〜9月期の企業業績見通しは、大手でさえも6%の増益にとどまることが10月4日、明らかになった。9月時点では10%増が見込まれていたが、軒並み下方修正された格好。とくにハイテク業界は深刻で、予想増益率は28%と、7月時点の予想(81一%)を大きく割り込む見込みだ。また、金融業界も、ワールドコムの破たんなどで不良債権が増大、JPモルガンは不良債権処理費用が前期比四倍以上の約14億ドルにもなるという。同時テロ後の落ち込みからの「V字回復」がいわれた米国だが、その期待は完全に吹き飛んだ。これを受け、ニューヨーク株式市場が7日、7500ドル割れするなど、5年ぶりの安値を記録、店頭株式市場(ナスダック)も6年ぶりの安値となった。

米、新決議でイラク政権転覆狙う
 米国のパウエル国務長官は1日、新たな国連決議が採択されなければ、大量破壊兵器をめぐるイラクへの査察に反対する考えを示した。米英は、イラクが受け入れを表明しているものよりも、より強硬な国連決議(武力行使を含む)を新たに採択させることで、イラクへの全面査察、武装解除と政権転覆を狙っている。すでにイラクと国連が9月30日、査察再開をめぐる準備協議を始めているにもかかわらず、米国はあくまで武力攻撃を前提とする態度を維持している。この理不尽な姿勢に対しては、フランス、ロシアをはじめ、各国から批判の声が高まっている。

北朝鮮の武装解除求めるごう慢な米国
 ケリー米国務次官補は3日、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)を訪問した。ブッシュ政権下、初の政府高官の北朝鮮訪問だが、ケリーは「ブッシュ・ドクトリン」に沿い、ミサイルや大量破壊兵器などで北朝鮮の武装解除を要求する、どう喝外交を繰り広げた。ケリーは直後、韓国と日本を訪問、日朝首脳会談を受けた、両国の対北朝鮮外交にタガをはめた。これに対し北朝鮮は7日、「米国は極めて圧力的かつごう慢」とする談話を発表した。(関連記事1面)

米経済揺るがす港湾スト
 米国の国際港湾倉庫労働組合(ILWU)は9月27日より、経営側の進める荷役業務の自動化、保険制度の改悪などに反対し、西海岸の港湾でストライキに突入した。経営側は同日、これにロックアウトで対抗した。労働者の闘いは、景気後退色を強める米経済はもちろん、日本やアジア経済にも影響を与え、原材料不足で操業停止に追い込まれる企業も出始めていた。これに対して、ブッシュ政権は10月8日、封鎖の強制解除を命令するところまで追い込まれた。港湾労働者の断固とした闘いは、グローバル資本主義を大いに揺さぶった。(関連記事4面)

人民のたたかい

(9月30日〜10月9日)

 全土で6日、イラク攻撃に反対する集会とデモが行われた。ニューヨークでは、退役軍人やイスラム教徒など2万人がデモを行い、ブッシュの戦争政策に反対した。集会は、サンフランシスコ、ロサンゼルス、シカゴなどでも行われた。
 イタリアで5日、イラク攻撃に反対する集会が全国70都市で取り組まれ、ローマでは3万人がデモを行った。同様の行動は、ギリシアなどでも行われた。また、フィアット・グループが9日、自動車部門などで従業員の2割に当たる8100人を削減する方針を示したことに対して、シチリア工場の労働者数百人がデモを行った。労働組合は、「あらゆる手段を用いて解雇と工場閉鎖を阻止する」としている。
 フランスのパリで3日、電力、ガスなど国営企業労働者6万人が、政府の民営化政策に反対しデモ行進した。労働者は「公共サービスを守れ」と訴えた。

日本のできごと

(9月30日〜10月9日)

小泉改造内閣、柳沢金融相を更迭
 小泉首相は9月30日、内閣改造を行い、銀行への公的資金注入に慎重だった柳沢金融担当相を更迭、竹中経済財政担当相に検討させる体制をつくった。また、BSE問題での武部前農相の責任もあいまいなまま、農水大相、防衛長官など6人の閣僚の首をすげかえ、政権基盤の強化をはかった。しかし、内閣改造直後から株価は続落し、3日には19年ぶりに9000円を割り込むなど、小泉政権を取り巻く環境は、とめどなく悪化している。(社説参照)

深刻な金融危機、ペイオフ延期を決定
 政府は7日、来年4月に予定されていたペイオフの解禁時期を05年4月まで、2年間延長することを決めた。小泉首相はその2年間で不良債権処理を終えるとしているが、そのために銀行に膨大な公的資金を投入する見込みだ。金融システムの現状がペイオフ解禁には耐えられないと認めたわけで、小泉首相の改革政治が破たんし、方向転換をよぎなくされたことを証明している。

民主党、やっと人事が決定したが…
 代表選挙以降、人事問題で混乱していた民主党は3日、ネクストキャビネットなど新体制人事をやっと決定した。代表選挙を争った菅前幹事長、横路元副代表、鳩山ー中野体制に批判的な若手は執行部に入らず、党内はばらばらの状況。世論調査によれば、民主党の支持率は5%に急落している。国民の生活苦、経済危機をよそに、お家騒動にうつつをぬかす民主党に対する国民の目は、さめきっている。この野党第1党のていたらくが、行き詰まっている小泉政権の延命に手を貸しているわけで、民主党の罪は重い。

海上自衛隊派遣、なし崩しの再延長へ
 政府は7日、テロ対策特別措置法に基づき11月19日までの期限でアラビア海に派遣した海上自衛隊の派遣期限を、最大で6カ月延長する方向で最終調整に入った。派遣期限の延長は5月に続き、2度目となる。海上自衛隊は米軍などに艦船燃料の補給支援を行っている。これまでのべ3000人、15隻の自衛艦を派遣。米英軍に約20万キロリットルの燃料を無料で提供し、アフガニスタン攻撃に協力してきた。米国はイラク攻撃に踏み切ろうとしており、この地域にとどまることは事実上、なし崩し的にイラク戦争に加担することにもなる。米軍に追随して、歯止めなく軍事行動に踏み込む道を絶対に許してはならない。

連合、ベア統一要求来春闘も見送り
 連合は3日、中央委員会を開き、今春闘に続き、来春闘でもベアの統一要求を見送る方針案を了承した。全国一般や私鉄総連、連合宮崎など、中小労組をかかえた組合からは「これでは春闘は闘えない」と、強い不満が出ている。方針案では当面の最重要課題として、景気回復や雇用確保、パート労働者の労働条件引き上げ、サービス残業の撲滅などをあげたが、一丸となって闘わずしてどのようにして要求を獲得しようというのだろうか。賃下げ攻撃が続く中で、資本にすり寄り、闘いを放棄した連合幹部の姿勢は、組合員から手痛いしっぺがえしを受けるに違いない。

合併推進のために罰則で締め付け
 3200自治体を1000に集約するという目標達成が困難になった政府は6日、強引に市町村合併を進める方針を打ち出した。合併しない小規模自治体の権限を窓口サービスに限定し、地方交付税・職員定数を削減するなど、罰則で締め付けようというもの。政府が地方自治を守る気がないことは、まったく明らかだ。こうした中、山口県熊毛町で6日、合併に反対する住民が請求した議会解散の是非を問う住民投票が行われ、合併反対が過半数を占めた。住民の声を無視した合併に、批判が高まっている。

通知表に「愛国心」を3段階評価 
 福岡市の小学校6年生の通知表に「国を愛する心情や日本人としての自覚」を3段階で評価する項目が新たに盛り込まれていることが8日、明らかになった。市内のほぼ半数の69校が本年度から使っている。全国でも異例の措置で、福岡県内の市民団体が「人権教育上、重大な問題」として、同県弁護士会に人権救済を申し立てている。


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