労働新聞 2002年9月15日号 トピックス

世界のできごと

(8月30日〜9月9日)

米、イラク攻撃協力狙うが大きな反発
 イラクへの軍事攻撃を計画するブッシュ米大統領は9月6日、プーチン・ロシア大統領、江沢民・中国国家主席、シラク・フランス大統領と相次いで電話会談を行い、イラク攻撃への理解、協力を求めた。しかし、3カ国とも従来通り、攻撃に強い疑念と反対の意思を示した。そのため、翌7日にはワシントンで、ブレア・英首相と首脳会談を行わざるを得なくなった。その中で、ブッシュ大統領はあらためてイラク攻撃の必要性を強調、ブレア首相も協力する考えを示した。そして、各国の理解が得られなくても、米英両軍のみでイラク攻撃を開始する方針で合意した。しかし、各国の反対に加え、英国内でも国民の大多数がイラク攻撃と英国の参戦に反対を示している。イラク攻撃への支持・協力取り付けにやっきになっている米国だが、大きな反発を受け、国際的に追いつめられている。

アラブ外相会議、イラク攻撃反対決議
 エジプトのカイロで開かれていたアラブ外相会議(アラブ連盟21カ国とパレスチナ自治政府が出席)は5日、イラクに対する攻撃を「アラブ諸国、特にイラクに対する攻撃の脅迫を完全に拒否する。この脅迫は、アラブ地域全体の安全保障に対する脅迫である」とした決議を採択し、閉幕した。また、パレスチナをめぐる問題についても議論が行われ「なぜ、イラクにだけ国連安保理決議の履行を求めるのか不思議」(パレスチナ自治政府・ムーサ事務局長)と、国連決議をまったく無視してパレスチナ占領を続けるイスラエルと、それを支援する米国に対する批判が相次いだ。

環境開発サミット、植民地主義に反発
 南アフリカ・ヨハネスブルクで開かれた環境開発サミットは4日、国連機関や各国政府の環境政策や途上国援助政策の指針などを示す「世界実施文書」などを採択し、閉幕した。遅れて参加した米国は、地球温暖化問題や再生エネルギーでの目標設定に反対するなど、まったく独りよがりな態度に終始した。このため、会議では途上国や各国の非政府組織(NGO)から先進国、とりわけ米国への不満の声が爆発した。米国を代表して演説に立ったパウエル国務長官は、「良きガバナンス(統治)がない国には支援しない」などと、発展途上国への内政干渉を当然視する姿勢を示したが、「ブッシュくたばれ」の声やブーイングが会場に充満、一時演説が中止に追い込まれた。また、ジンバブエのムカベ大統領は演説の中で、旧宗主国のブレア・英首相を名指しで批判、「発展の邪魔者はブレア政権。我々は独立を自力で勝ち取り、それを守るために血を流す覚悟だ」と発言、大きな拍手を受けた。今回の会議は、環境問題や経済発展の分野においても、米国の独善ぶりと孤立を明白に示すものとなった。

人民のたたかい

(8月30日〜9月9日)

 メキシコシティーで8月30日、約5万人の労働者、市民が、政府の進める電力事業民営化に反対してデモ行進を行った。「外国資本に国の貴重な財産を売り渡すもの」とするメキシコ電気労組(SME)が呼びかけたもの。
 環境開発サミットが開かれている南ア・ヨハネスブルクの旧黒人居住区で31日、「人々のためのサミット」と名付けられた集会が開かれ、約1万人の参加者が「貧困解決の約束を」と叫びサミット会場までデモ行進を行った。
 同時テロ1周年を前に、9月8日、・ニューヨークで市民数百人がイラク攻撃反対のデモを行った。参加者は、「石油利権のために血を流すな」と書かれたプラカードを掲げた。
 米軍による女子中学生殺害事件に抗議して8月31日、韓国各地で米軍を糾弾する「汎国民大会」が開かれた。ソウルでは約2000人の市民が参加、ブッシュ米大統領の謝罪や全面的な再調査・真相究明などを要求した。 。

日本のできごと

(8月30日〜9月9日)

株安止まらず、実体経済に深刻な影
 日経平均株価は、9月4日まで7日間にわたって続落、一時9000円の大台を下回った。4日の終値は前日比141円95銭(1.54%)安の9075円9銭と1983年8月以来の水準に落ち込み、バブル経済崩壊後の安値を連日で更新した。米国の株、ドル安に見られる米経済の先行き不安を背景に、米、欧、日を巻き込む連鎖株安が広がっている。5月に「景気回復宣言」(竹中経済財政相)をしたのもつかの間、米国依存で輸出主導の景気回復を描いてきた日本経済は株安の波に襲われ、改めてそのぜい弱ぶりをさらし、危機はいっそう深刻さを増している。この株安で、大手銀行保有株式の含み損は4兆円を超えたもようで、9月の中間決算では大手銀行も最終赤字に転落する可能性が強まった。銀行は自己資本比率の低下を恐れ、「貸し渋り」「貸しはがし」を強めている。これにより、中小企業は資金調達、経営に行き詰まり、倒産の危機に直面させられる。個人消費も冷え込みが予想され、実体経済にも深刻な影響が広がりだした。このような事態を受けて、財界、政府与党はいっせいに「緊急デフレ対策」を要求、大企業減税、銀行への税金投入などを騒ぎ立て始めた。小泉は9月中旬にも「デフレ対策」をまとめる予定で、経済危機を前に、売り物の「改革」は行き詰まり、目前の不況対策に追われることとなった。

小泉、突然の訪朝発表
 小泉首相は8月30日、9月17日に朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の平壌を日帰りで訪問し、金正日総書記と会談すると発表した。小泉は、首脳同士の直接対話で「懸案」解決に向けた糸口を見い出し、中断している日朝国交正常化交渉の再開にもつなげたいとの考えを強調した。突然の発表にマスコミはわきたったが、8月27日に来日したアーミテージ米国務副長官にはすでに首相から報告ずみで、米国のアジア、対朝鮮政策とのすり合わせは慎重、緊密に進められている。内外政策で頭打ちとなり、支持率急落に危機感を抱く首相の支持回復策との見方もあるが、米国の対朝鮮政策の大枠を出ることができないわが国外交には、大きな期待を寄せることなどできない。事実、9月4日には公海上を航行する北朝鮮船舶を「不審船」と騒ぎ立てて、反北朝鮮世論を煽り立てた。また、相変わらず「拉致疑惑」なるものを最大懸案にあげるなど、北朝鮮敵視政策は変わっていない。

東電、三井物産不祥事でトップ辞任
 米国企業の会計不正などが明らかとなり、米国株安の要因となっている中、わが国大企業の不祥事も、ここにきて次々暴露され始めた。2日、東京電力は原子力発電所の点検データを改ざんし、原子炉のトラブルを隠ぺいしていた事実を認め、社長ら4首脳が退任することを発表した。一方、三井物産は国後島の発電施設不正入札事件や、モンゴルの政府開発援助(ODA)をめぐる賄賂疑惑などを受けて、4日社長ら経営陣の辞任を発表した。両社とも日本経団連の副会長を出すなど、財界のトップ。平岩外四・東電相談役は日本経団連の名誉会長で、長年「企業倫理確立」などを唱えてきた財界の「顔」である。

長野県知事選で田中氏再選
 知事不信任に端を発した長野県の出直し知事選挙は1日、投開票が行われ、前知事の田中康夫氏が再選を果たした。「脱ダム宣言」などで「改革派」を演じる田中氏に、自民党はじめ県議会各会派が押し切られた格好。田中氏には地元銀行などの強力な支持もあり、保守派の分裂が底流にある。改革政治の下で、国の自治体への矛盾押しつけ、切り捨てが進む中、これと真に闘えるか、田中氏の手腕がこれから問われることとなる。

高卒求人最悪の0.5倍
 来春卒業予定で就職を希望する高校生の7月末時点での求人倍率が、過去最低の0.50倍となったことが5日、明らかになった。調査によれば、求職者数は23万1000人で昨年と比べ6.8%減なのに比べ、求人数は11万5000人と、昨年比24%の大幅減となった。現時点で11万6000人が就職できない計算になる。不況の深刻化、製造業の海外移転など就職をめぐる環境は悪化の一途だが、就職希望者の半分もが職につけない社会は、若者が希望の持てない社会である。


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