20010325

日本のできごと

2000.3.10〜2001.3.19


日米首脳会談、不良債権処理を迫る
 訪米した森首相は三月十九日、ブッシュ米大統領と会談した。日米同時株安を受けて、議題は経済問題に集中。ブッシュ大統領は邦銀の不良債権問題について「日本が全力で取り組んでいないとの見方が米国内にある」と、早期処理を強く要請した。米国は、日本の金融危機が米国・世界に波及することを恐れている。また、普天間基地の代替施設への十五年間の使用期限設定を拒否したうえで、共同声明では日米同盟関係のいっそうの強化をうたった。ブッシュ大統領は日本政府に緊急に圧力をかけるために、「死に体」といわれる森首相との会談に応じた。

「デフレ」下、日銀が初の量的緩和へ
 政府は十六日、日本経済が「継続的な物価下落」にあるとして、戦後初めて緩やかなデフレ状況にあると規定した。日銀速見総裁は「デフレスパイラルの可能性はまったくないわけではない」と述べている。日銀政策決定会合は十九日、金融の量的緩和に踏み切り、実質的なゼロ金利政策を復活させた。また、長期国債の市場操作(買いオペ)も増額するとし、こうした政策を消費者物価指数が対前年度比ゼロ%以上の上昇となるまで継続するという。これは事実上のインフレ政策であるが、国民の所得が伸びない下でのインフレは、個人消費をさらに冷え込ませる可能性が高い。政府はデフレ対策に打てる手だてがきわめて限られた、危機的状況に追い込まれている。

株買い上げ機構に公的資金導入へ
 東京株式市場は十三日、全面安となり、日経平均株価は八五年二月以来十六年ぶりの一万二千円割れとなった。政府・与党は十五日、日米欧の同時株安をうけて緊急経済対策本部の初会合を開いた。この席で宮沢財務相は、与党が提案している「株式買い上げ機構」に公的資金を導入する考えを示した。同機構は銀行や事業会社の出資で設立し、主に銀行が保有する株式を時価で買い上げ、一定期間後に投資家に売却するもの。株式を再売却したときに損失が出た場合、公的資金で穴埋めするという、いたれりつくせりの案だ。金融機関の救済のために、さらなる国民負担増は許せない。

沖縄で自衛隊幹部が少女暴行
 沖縄県恩納村の航空自衛隊二等空尉が十代の少女に暴行し、十二日に逮捕された。これを受け、防衛庁の石破副長官は十七日、急きょ沖縄県を訪れて稲嶺県知事に謝罪した。沖縄戦のとき、日本兵から虐殺された経験をもつ沖縄では、本土復帰の時にも自衛隊に対する激しい反対運動が展開された経過がある。相つぐ米軍犯罪に続くこの卑劣な事件の発生によって、沖縄県民の反軍感情はいっそう高まっている。防衛庁の副長官が謝罪に訪れたのは異例のことで、反基地闘争の再燃を恐れたためだ。

えひめ丸事件、75万人の署名を提出
 ハワイで査問会議が継続されている中、石橋・宇和島市長は十六日、宇和島水産高校実習船「えひめ丸」沈没事故に対する要求署名を森首相に提出した。署名では、行方不明者の捜索の継続と、船体の早期引き上げを日本政府に要求した。全国から寄せられた署名数は七十五万人を超え、国民の関心の高さと被害者への共感の広がりを示している。

勤労者世帯の貯蓄に著しい格差
 総務省が十五日に発表した貯蓄動向調査によると、勤労者世帯の二〇〇〇年末の平均貯蓄残高は前年比二・六%減の千三百五十六万円となった。しかし、この貯蓄残高は世帯間の格差が大きく、勤労者世帯の三分の二が平均残高を下回っており、統計上もっとも分布が多い世帯の貯蓄残高は二百六十五万円だった。勤労者世帯の負債残高は平均で五百八十万円。勤労者世帯に大きな格差が生まれていることがわかる。

昨年の労働訴訟、2000件を超える
 昨年一年間に全国各地の地裁に起こされた労働関係の民事訴訟が二千六十三件にのぼり、過去最多となった。十年前の三・二倍。昨年は雇用契約の存在確認などを求める提訴が四百十件、賃金や退職金などを求める提訴が千三百十一件で、リストラ絡みの訴訟が目立ち、個人で訴訟を起こすケースが増えている。組合組織率の低下などで、労働組合が対処しきれていない状況がうかがえる。