2000925

世界のできごと・人民のたたかい
9/10〜9/19


原油高で世界経済に深刻な影響も
 原油価格が高騰し、ニューヨーク市場では九月十八日、十月先物終値が湾岸戦争以来の高値である一バレル=三七ドル台をつけた。この背景には、石油メジャーがリストラを進めた結果、米国の原油在庫が「危機的水準」とされる三億バレルを割り込むなど世界的に在庫がなく、これを当て込んだ国際的投機が活発になっていることがある。石油輸出国機構(OPEC)は十日、日量八十万バレルの増産を決めたが、高騰を押しとどめることはできていない。ヨーロッパでもユーロ高が価格高騰に拍車をかけ、燃料値上げに対し激しい反対運動が巻き起っている。それどころか、ニューヨークや東京で株価が下落するなど、原油高は世界、とくに米国経済に深刻な影響を及ぼしつつある。

米経常赤字が過去最高更新
 四〜六月期の米経常収支が十三日発表され、赤字は前期比四・六%増の千六十一億三千八百万ドルとなった。赤字幅は九期連続で過去最大を更新している。これにより、二〇〇〇年の年間経常赤字は四千億ドルに達する可能性がある。この膨大な赤字は、株式や社債など、「逃げ足の早い」民間投資で補てんされている。米国経済は、急激な資本逃避によって経済の波乱を呼ぶ可能性もはらんでいる。

米印首脳会議、核実験凍結確認したが
 訪米中のバジパイ・インド首相は十五日、クリントン大統領と会談した。両首脳は共同声明を発表、包括的核実験禁止条約(CTBT)発効までインドが自主的に核実験凍結を継続することや経済協力の推進などを確認した。クリントンは、インドがCTBTを署名することなどを求めた。事実上の核保有国であるインドとの外交を重視し、経済協力をエサになんとか核保有・拡散を防ぎたいという米国の戦略が表れている。しかし、米国に核拡散を押しとどめる力はなく、インドなどのCTBT署名は容易ではあるまい。

「繁栄」のかげで二極化進む米国
 米国では、全世帯の一割が食糧不足に苦しみ、うち三分の一が飢えを経験していることが、十日までに発表された米政府報告書で明らかになった。食糧不足はとくに子どもに目立ち、全体の一七%に当たる千二百万人が飢えに直面しているという。また食糧不足は、人種別では黒人世帯の二一・二%、スペイン語系世帯の二〇・八%におよんでいる。こうした傾向は、とくに都市部で顕著となっている。「史上空前の繁栄」といわれる米国経済だが、背後では貧富の二極化が進んでいる。


燃料価格上昇に欧州で反発広がる
 ドイツでは十二〜十三日、バイエルン州のミュンヘンなどで、運送業者が二百台のトラック、バスなどを動員し、シュレーダー政権の燃料税増税に抗議した。行動には、農業組合や手工業者が加わるなど、広がりをみせている。原油価格上昇とユーロ下落による輸入価格高騰に加え、欧州諸国が燃料課税強化を打ち出したことが、火に油を注いだ格好。英国ではトラック運転手や農民による精油所封鎖行動が十四日まで続き、全国の給油所の三分の一が閉店した。オランダでも、十一日から運転手らが道路封鎖に突入した。
 タイのバンコクでも十一日、国会前に千台のバスが集まり、ガソリン価格の高騰に反発しデモ行進を行った。政府はバス会社に対し、三カ月間にわたり総額八千万バーツ(一バーツ=二・七円)の補助金を出す救済策を打ち出した。


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