2000825

日本のできごと
7/30〜8/19


久世金融相が辞任、森政権に痛手
 金融再生委員会の久世委員長は七月三十日、三菱信託銀行、大手マンション企業の大京などから長年、利益供与を受けていた責任を取り、辞任した。森首相は当初、久世委員長の利益供与について「問題ない」としていたが、公明党からの批判や大京からの供与発覚などにより、政権基盤を危うくするものと判断、久世委員長解任を決めた。閣僚辞任は、森政権になってから初めてであり、政権運営にとって大きな痛手となった。利益提供を事前に知りながら閣僚に起用した森首相の任命責任について、国会内外から追及の声が高まっている。

日銀、ゼロ金利政策を解除
 日銀は八月十一日、昨年二月から続けてきたゼロ金利政策を解除することを決めた。政策的に金利をゼロ近くに誘導する無担保コール翌日物金利の目標を〇・二五%前後に引き上げ、公定歩合(年〇・五%)は据え置く。ゼロ金利政策とは、金融機関などが資金を融通し合う短期市場へ豊富に資金を供給し、翌日物金利をゼロに近づけるやり方。政策金利の引き上げは十年ぶりとなる。さらに、速水日銀総裁は「ゼロ金利解除後も金融が大幅に緩和された状態は維持される」と述べ、金融面から景気を支えることを表明した。今回の決定をめぐって、日銀は景気を最優先する政府と対立していたが、「景気が自立回復に向かい、デフレ懸念の払しょくが展望できる情勢になった」と判断する日銀は、異常なゼロ金利をやめることに踏み切った。

自民党内で政治再編へ勉強会相つぐ
 自民党若手議員の間で、政治再編をにらみながら、派閥横断や他党との連携を模索する「勉強会」づくりが相ついでいる。執行部批判を強める石原議員らの「自民党の明日を創る会」、これに反発する砂田議員らの「日本の新生を進める議員の会」、小此木議員らによる「二十一世紀の教育を創る若手議員の会」、森派内の「勝手補佐官の会」などである。また、加藤派の若手は民主党や公明党との勉強会で、他党とのパイプづくりを露骨にめざしている。勉強会の乱立は、かつて九〇年代初めの政治再編の時にもよく見られ、政権基盤がぜい弱時に出てくる現象といわれる。

与党、船舶検査法の今秋成立めざす
 自民、公明、保守の与党三党の安保プロジェクトチームは四日、日米防衛協力指針関連法に付随する船舶検査活動について、今秋の臨時国会に法案を提出することで一致した。同法案は、ガイドライン関連法に付随するものとして焦点の一つとなっており、政府は昨年、同法案を提案したが、当時の与党内で意見調整ができなかったもの。政府案では、周辺事態の際、公海などで軍艦以外の船舶について自衛隊が検査などをできるとする内容で、自衛隊が米戦略のもとで海外で軍事行動を拡大する反動的なものである。

10閣僚が靖国神社に参拝
 保岡法相、森田運輸相、相沢金融相ら十閣僚が、敗戦記念日の十五日、靖国神社に参拝した。うち保岡法相ら三閣僚は国務大臣として参拝。また超党派でつくる「靖国参拝国会議員の会」による集団参拝には、衆参両院議員七十八人が参加、内訳は自民七十人、保守・自由・民主各二人。中国の新華社は、「隣国の人民の感情と反対の声を顧みず、参拝した」と批判した。

中国、森田運輸相の訪中を拒否
 森田運輸相は、中国の新幹線建設にからむ売り込みや観光振興策を協議する目的で、九月初めに中国訪問を予定していたが、中国政府が断ってきたことが十七日明らかとなった。運輸相は、靖国神社を公式参拝しており、それが中国側の反発を招いたとの推測もある。これに対し、靖国参拝が訪中拒否の理由ならば「対中政策の全面見直しが必要」(村上自民参議院議員会長)という強硬意見も出ている。政府開発援助(ODA)の対中円借款減額、特別円借款の実施延期論など、中国に対する日本の強硬姿勢が目立っており、日中の対立も顕在化している。

人勧、基本給引き上げ初の見送り
 人事院は十五日、二〇〇〇年度の国家公務員給与の基本給部分のベースアップを見送り、期末・勤勉手当も〇・二カ月分減らすよう勧告した。民間との給与格差が過去最小となったことを理由としている。格差分は扶養手当増額で補うよう求めている。一律の基本給引き上げの見送りは、六〇年に人勧制度が発足してから初めてで、きわめて不当なものである。年収ベースでは平均で(四十・五歳)前年比六万九千円の減収となり、年収は二年連続のマイナスとなる。公務員連絡会は同日、抗議声明を出したが、声明にとどまらない真剣な闘いが問われている。

自殺、刑法犯が過去最悪
 警察庁によると、今年前半の刑法犯の発生件数は前年同期より十二万件増の百十一万件余の過去最高となった。うち殺人、強盗などの重要犯罪は一六・六%増、侵入盗、自動車盗、すりなどの重要窃盗犯は一五・〇%増、窃盗は一一・五%増となった。一方、昨年一年間の自殺者は、三万三千四十八人で過去最悪。うち七一%は男性で、自殺の理由は、借金、事業不振などの経済・生活問題を動機とする自殺が前年比一三・八%増である。これらは、長引く不況とリストラなどによる国民生活の深刻さが、如実に反映しているものといえる。


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