日産自動車の大リストラ計画の発表は、社会全般に強い衝撃を与えた。発表と同時に本紙やマスコミで報道されているように、労働者や下請けなど各方面から切実な悲鳴が上がっている。
今回のリストラ計画は、徹底して労働者や下請け、地域の犠牲のうえに日産を再建しようというものである。
ほぼ同時期、三菱自動車一万人、NTT二万人などの人員削減計画が続々と発表され、長期の不況下で失業者約三百二十万人、率四・六%という労働者の苦境に追い打ちをかけている。こうした「民・地域亡びて大企業栄える」リストラは断じて許されるものではない。
また、産業再生法などで大企業のリストラを促進させる小渕政権の政治も追及しなければならない。
労働者、下請け、地域関係者は連携して、犠牲を押しつけて撤退しようとする日産の社会的責任を追及し、大きな社会問題として雇用、営業、地域経済を守る闘いが緊急に求められている。労働者の首を切るのは当たり前で、地域も簡単に犠牲にする大企業の横暴な風潮を打ち破らなければならばない。
日産のあくどい再生策と横暴
今回のリストラ計画は、五工場閉鎖、二万一千人削減、約千二百ある部品業者の半減などである。日産は、労働者、下請け関連業者、地域商店街、自治体などの徹底した犠牲のうえに来年度から黒字に転換、二〇〇二年度の売上高営業利益率四・五%をめざすという。極めて虫のいい話である。
注目すべきは、日産と相前後して三菱自動車、NTT、住友・さくら銀行(九千人)、第一勧銀・富士・興銀(六千人)、三菱重工(五千人)などの大型リストラ発表が続出していることである。日産のフランス人を起用した極めて冷酷なリストラが、大型リストラ攻撃をさらに促進する契機になっている。断じて許されるものではない。大企業は、国際競争にうちかつためなら何をしてもよいという横暴は、地域などの広範な闘いによって打ち破らなければならない。
これまでも、自動車産業は種々の交替制、長時間労働、低賃金などで労働者を絞り上げてきた。下請けには相つぐ過酷なコストダウン要求で、収奪の限りを尽くし、大もうけしてきた。
さらに、これらの企業には国策として国、地方自治体の手厚い支援があった。例えば、軍需産業であった日産は戦後、国、自治体の支援で、追浜(神奈川)、さらに座間(神奈川、九五年閉鎖)、苅田(福岡)にいたる工場用地をただ同然で手に入れ、道路・港湾・水道などを保証された。その後も、税制面などで手厚く優遇されてきた。今回の村山工場でも土地の取得原価は一平方メートル当たり二千〜三千円といわれるが、実勢価格は三十万円近いという。
こうして、日産が一時期、生産台数世界第四位にまでいき、自動車や電機大企業の国際競争力が強くなったのは当たり前である。
こうした経過からみても、日産など大企業には大きな責任がある。自動車産業はすそ野が広く、関連産業従事者は直接部門で約九十万人、鉄鋼、運輸など間接部門も含めると約七百万人にものぼる。したがって、メーカーの動向の及ぼす影響は極めて大である。営業赤字になったからといって、労働者の首切り、下請け企業や地域経済を犠牲にするなど、まったく理不尽なことである。少なくとも企業はまず、保有する膨大な土地、株式などのため込んだ利益を吐き出して、自らの身を切るべきである。日産が一兆三千百億円もの内部留保をため込んでいるのは、周知の事実でもある。
リストラといっても、労働者、下請け、またこれまで支えてもらった地域経済も誰をも犠牲にしない再生策が求められている。リストラといえば、直ちに大量の人員削減といった最近の風潮に、労働組合や世論の批判が強まっているのは当然である。まさに「首切るヤツの首を切れ」というべきである。
むしろ今求められているのは、真の内需拡大である。大幅賃上げ、時短、人間性を無視した交替・夜間勤務の廃止、また中小零細の下請け業者の利益・営業を保証すべきである。工業も他の産業部門も、中小零細企業もやっていけること、また農業、中小商店も営業が成り立ち、バランスのとれた真に国民生活の豊かな日本こそ求められている。
大リストラ促す小渕政権
ところで、政府は何をしたか。日産リストラ計画を「競争力強化を図ろうとしていることは政府としても理解できる」(小渕首相)と評価し、緊急雇用安定地域の指定など小手先の対応をしている。さらに政府は、一企業のリストラとしては異例なことに、日経連をして「雇用安定」の文書を日経連加盟団体に流させたり、大企業のリストラを泥縄式に調査するパフォーマンスを演じた。日産問題を契機に、長期の不況に苦しむ労働者、国民の不安、非難が一挙に高まることを恐れたからである。
国民の目からすれば、政府は断じて日産リストラの後始末をする「下請け」ではないはずだ。政府がまずやるべきことは、日産の責任において雇用の完全保証と地域経済へ犠牲のない対応などをやらせることである。
もともと政府は、国際競争力向上をめざす財界の求めに応じ、こうしたリストラに対して、税金などで優遇措置をとる産業再生法を先の臨時国会で成立させた。リストラはこんにちの国策となっているのが、実態である。
リストラを奨励、促進する小渕政権も、また厳しく追及し、政治の転換を図らなければならない。
大社会問題として連携して闘おう
日産のリストラに反対し、これを白紙撤回させる闘いは、地域全体の課題である。
とくに自治体は、大きな責任と重要な役割を担っている。自治体の支援で、大企業は膨大な利益を上げてきたが、撤退するときには、まったく一方的である。自治体には、第三者的な態度は絶対に許されない。住民の側に立って、企業に厳しく抗議し、社会的責任を追及すべきである。地域のためなどといって、税制などで優遇し企業誘致した自治体にも、大きな責任がある。
また、大企業の進出に賛成・協力してきた政党も、労働者、住民のために闘うべきである。臨時国会の論戦をみても、これほどの大問題、また相つぐ大型リストラ発表で失業率上昇の恐れさえいわれている事態にもかかわらず、雇用問題での真剣な議論はほとんどない。かなりの労組の支援を受けている民主党は、どういう立場を取るかが厳しく問われるところである。
ここまで押し込まれた労働組合、連合も、試されている。つい先日定期大会で雇用確保の闘争宣言を出した連合は、日産の発表四日後には首を切る日経連とアベックで「雇用安定宣言」を出す始末であった。日産問題でも、日産の責任を追及する見解は打ち出せず、日経連見解と変わらぬ「雇用確保に配慮」を求めるにとどまった。
連合は経営側の攻撃をそのまま容認しない「物分かりの悪い運動」の展開を強調するのならば、断固真っ向から立ち向かわなければならない。すでに、ゼンセン同盟、全国一般、JAMなどの一部単組段階では、解雇を許さない闘いが始まっている。
日産の経営権を事実上にぎるルノーの本拠地、ヨーロッパでは二年前、ルノーのベルギー工場閉鎖計画に対して、ベルギー政府は訴訟を起こした。自動車関係労組も全欧州で連帯ストを何波も打ち抜き、大社会問題となった。闘えば前進できるのである。
労働者も、中小下請け業者も、小売業者も、地域住民は連携し、自治体も心ある政党も広く連携して、地域ぐるみで闘おう。
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