990905 社説


検証 自民党総裁選挙でキャンペーン

構造改革と大国外交あおる


 九月九日告示の自民党総裁選挙は、事実上始まっており、小渕首相、加藤前幹事長、山崎前政調会長の三人が立候補している。その政策はいくぶんの違いはあるが、基本的に同じで、「構造改革」と「日米同盟強化のもとでの大国外交」である。「富国有徳の国づくり」(小渕)、「フロンティアは人間にあり」(加藤)、「品格ある国家」(山崎)などというが、ひとにぎりのわが国多国籍企業のための内外政治である。自民党総裁選挙は、こうしたわが国支配層のための内外政策を大々的に宣伝する舞台となっている。経済政策と外交政策にしぼって検証する。

経済政策

―多国籍企業に都合のよい構造改革―

●経済政策の中心は、多国籍企業にとって都合のよい「構造改革」である。この間も、多国籍企業が内外で自由にふるまえるような経済条件づくりのために、金融ビッグバン、大店法撤廃など規制緩和・撤廃、経済の構造改革を行ってきた。支配層は、それをいっそう押し進めようとしている。この点は加藤氏がもっとも力点をおいて主張している。

小渕 恵三

新しい経済構造の構築

 新しいビジネス、産業、雇用を生み出していくためのサプライサイドを重視した政策を実施します。また、国民一人ひとりが新規事業に挑戦できる「機会の平等」を確保し、挑戦に失敗した人が再挑戦できる社会の仕組みをつくります。

(1)ミレニアム(千年紀)・プロジェクトを推進し、技術革新の突破口を開きます。

(2)ベンチャー・ビジネスの育成

 新規事業を創出するために・資金・人材・技術の各方面からの総合的なベンチャー支援策を講じることなどにより、起業の倍増をめざします。また、平成十年末の中小企業金融特別対策のフォローアップと中小企業の範囲の見直しを行います。

(3)金融の安定化と資本市場の育成

(4)税制

・キャピタルゲイン課税の見直しを検討

・ベンチャー支援税制の拡充の検討

・相続税についても事業継承分野など幅広く検討

・法人課税の連結納税制虜の導入を引き続き検討

加藤 紘一

われわれは、いまや不可避となった構造改革路線に真正面から取り組み…「大きな政府」に別れを告げなければならない。…何よりも市場機能を最大限に活用すべきである。われわれとしては、規制及び税制を改革し、企業環境をグローバルスタンダードに耐えうるものにしていく。それこそ、企業の活力と創造力を最大限に発揮する道であり、外国企業に対して、日本市場を魅力あるものにする方途なのだ。

山崎 拓

 自由競争と自己責任原則を基調としつつ、自然や他者と共生する「日本型競争社会」を構築すること…官民拳げて構造的な課題に取リ組み、改革を推し進めていかなければならない。


外交政策

―日米同盟強化のもとで大国外交―

●外交政策の中心は、わが国多国籍企業の海外での権益を守ることである。

 そのために自民党は、日米安保共同宣言、新ガイドラインにみられるように日米同盟を強化し、アジア・太平洋地域で大国外交を展開しようとしている。三候補の政策にもその点は鮮明に現れている。

小渕 恵三

日米同盟関係を揺るぎなき外交の基軸とすべきであります。その上で、とくにわが国を取り囲む主要国、すなわち、中国、ロシア、韓国との関係を強化して参ります。…わが国は、国際社会におけるその地位にふさわしい役割を果たすべきであります。  

加藤 紘一

日本の外交・防衛の基軸が日米安全保障条約である…この関係をより確固としたものとするには、なぜ日米安全保障条約が重要なのかという視点を、改めて確認しなければならない。…わが国は、米国との同盟を基軸としつつ、中国とのいっそうの相互理解につとめ、日中友好の関係を一段と高めなければならない。同時に、わが国は、アジア諸国の経済再生と発展に協力すべきである

山崎 拓

日本は、アジアにおいて、カネの力による結びつきではなく、いざという場合に精神的にも頼りにされる本当の意味の友人になるべきだ。また地域の平和と安全のため、中国やロシアの協調を求めつつ、朝鮮半島の将来をにらみながら、「北東アジア非核地帯構想」を提唱したい。

●大国外交と関連して憲法問題も焦点になっている。小渕首相は「憲法調査会設置法案」の衆議院通過に際して、「不磨の大典ではないんだから、国民の意思で改めるところは改めなくてはいけない」と述べ、改憲が政治日程にのぼっていることを鮮明にした。

 この動きは、新ガイドライン関連法、日の丸・君が代法など一連の反動立法と一体であり、最大の狙いは憲法九条が禁止している「集団的自衛権」を合法化することである。山崎氏の主張が一番露骨である。

山崎 拓

 国連憲章で認められている集団的自衛権の行使については、憲法解釈の拡大変更(解釈改憲)によらず、たとえ時間がかかっても正攻法で、憲法九条改正によって認められるよう目指すべきだ。解釈改憲の繰り返しでは、国家基本法である憲法の重心が浮き、安定性を欠くことになる。


Copyright(C) The Workers' Press 1996,1997,1998,1999