第十四回統一地方選挙のトップをきって行われる都道府県知事選挙の告示日、三月二十五日が迫った。
この統一地方選挙では全国十二都道府県知事に続き、政令市市長選挙、四十四道府県の議会議員選挙、政令市議会議員選挙、後半にはいくつもの市区町村の首長選挙、議員選挙が行われる。
今回の選挙は、わが国経済の戦後最大の危機が深まり、地方財政がかつてない危機に陥り、労働者、中小業者、農民の生活と営業が危機に直面しているただ中で争われる。
「大競争時代に生き残るため」とリストラを進め、地域経済の空洞化を押しつけ撤退するひとにぎりの大企業だけを手厚く支援するような自治体政治の継続を許すのか。それとも危機の中で犠牲を強いられている失業者、労働者、中小商工業者など住民大多数が豊かに生きられるバランスある自治体政治に転換するのか。まさに二つの道の選択を問う選挙である。
この結果は、二十一世紀の地方政治を左右し、自自連立政治、国政の動向にも影響を及ぼさざるをえない。
わが党は、この地方選挙に全国で党公認、推薦の候補者を立てて闘う。神奈川、福岡の二県では、県知事選挙に党公認候補を立てて闘う。神奈川県知事の予定候補に山本正治同志、福岡県知事の予定候補に中村哲郎同志を決定し、すでに活動を進めている。わが党候補者への断固たる支持を訴えると同時に、地方政治の前進のために共同の闘いを呼びかける。
政治の転換が切実に求められている
わが国経済が戦後最大の危機に、地方財政がかつてない危機に陥る中、住民の生活と営業は大きな困難に直面している。
完全失業者は全国でついに三百万人に迫り、失業率は四・四%と史上最悪を記録した。職安には失業者があふれているが、有効求人倍率は全国平均で〇・四九倍。とくに中高年層の再就職は至難のわざだ。
労働者の実質収入は残業減などでついに前年比マイナスとなり、明日発表されるかもしれないリストラ計画に大企業労働者も含めて不安な日々を送っている。
中小商工業、自営業の倒産や廃業は後を絶たず、資金繰りに四苦八苦している。大型店出店で商店街はさびれ、多くの中小商店が存亡の危機にさらされている。
東芝、日立、NEC、ソニー、日産、NKKなどわが国の製造業を代表する企業のリストラ、工場閉鎖は、労働者や下請けに犠牲を強いているだけでなく、地域経済に空洞化の衝撃を与えている。
自治体財政はかつてない赤字を抱え、大都市部の自治体では「財政非常事態宣言」を行い、自治体労働者の人勧凍結・人員削減、周辺自治体や住民には、福祉・医療・教育などへの支援削減と負担増を強いている。
大企業のリストラは今後、全産業部門に広がりますます本格化する勢いで、雇用情勢、地域経済のさらなる悪化は避けられない。
政治による一刻も早い打開が求められている。各政党は、来る統一地方選挙で住民に対し、明確な回答を示さなければならない。
県政の基本政策の転換が必要である
どう打開するのか。打開の方向を見いだすには、地域情勢の危機的状況を招いた原因と責任がどこにあるか、はっきりさせる必要がある。
さきに述べた地域情勢の危機は、単に不況のせいだけではない。国政に責任があることはいうまでもないが、自治体政治、県政の基本政策(産業政策、開発政策)もまた大きな影響を及ぼしており、責任が追及されてしかるべきである。
たとえば、神奈川県での地域経済の危機は、明らかに大企業の海外移転・リストラによる産業の空洞化で促進されたが、それは岡崎県政の製造業軽視、サービス業化追求の政策が大きく響いている。岡崎知事は、「製造業、第二次産業中心ではなく、サービス業を頭においた形での産業の再建、再生が妥当」「(造船所がなくなって)ホテル、イベントなどの『みなとみらい(MM)地区』は、大変モデル的な産業転換のスタイル」と言って、工場の海外移転とリストラを奨励してきた。
こうした「産業政策」は、生産拠点を海外に移した大企業の要求にぴったり応えるものであり、これらの企業は工場跡地を利用転換し、ホテルやマンション、大規模商業施設などの所有者となって膨大な不動産収益をあげている。まさに製造業からサービス業への業務転換、リストラの御利益だ。
岡崎県政はこうした大企業の「事業転換」を積極的に支援するために、開発計画をつくり、惜しげもなく財政をつぎ込んできた。MMを「典型」と呼んでいるが、それは自治体の財政を使って基盤整備を行い、一私企業に過ぎない三菱造船跡地の付加価値を高める、三菱はそこにランドマークタワーをつくりさらに大もうけするカラクリ。地域では空洞化が進み、商店街がさびれ、中小企業の仕事がなくなり、労働者の職も奪われた。
こんにちの危機的な地域情勢は、岡崎県政のこうした製造業軽視、大企業のサービス業化追求政策の所産と言っても過言ではない。
また、岡崎県政の下でこうした「産業政策」と不可分のものとして横浜、川崎を中心とする業務核都市、大都市中心の「開発政策」が推進され、周辺地域は後回し、地域間格差が開くばかりになった。
さらに、こんにち「財政危機」などと騒いでいるが、膨大な財政をこうした大企業支援の基盤整備、大都市中心の開発計画などの「公共事業」に惜しげもなくつぎ込んできたツケなのである。
こんにちの地域経済の危機、財政危機をもたらした元凶は、そういう意味で岡崎県政の基本政策にある。したがって危機を打開しようと思うなら、こうした岡崎県政の基本を転換しなければならないのである。
これと関連して共産党の地方選政策にふれておかなければならない。
共産党はこんどの選挙を、「『ゼネコン型開発』最優先の政治から、『住民奉仕』という自治体本来の姿をとりもどす」ともっぱらゼネコンにホコ先を集中している。だがそれは、あまりにも自治体政治でやられている実際をマンガ化し、真に自治体政治を牛耳っている敵を覆い隠すことになる。
公共事業は、共産党が言うように「ゼネコンが儲けた無駄」ではなく、ゼネコンだけでない一部の企業の膨大な利益のために好都合に使われている。たとえば、MMではゼネコンだけがもうけたわけではない。三菱資本による大もうけこそもっとも肝心なことである。なぜか共産党は、こうした本質的な暴露を避けている。
画期的な『神奈川再建プラン』
危機を打開するには、岡崎県政の基本政策、すなわち産業政策、開発政策を転換しなければならない。
神奈川知事選挙のわが党公認の山本予定候補の『神奈川再建プラン』という県政政策は、その対案を提起したものである。
地域経済の再建を県政第一の課題に据え、「モノづくり産業」を重視し、製造業を復権させることを軸に、商業、農業などを元気化する「産業政策」を提起している。
また、もう一つの柱である「開発政策」については、大都市中心政策を転換し、県西部地域をはじめ周辺地域の発展を重視、地域間のバランスを追求する政策を提起している。
これまで革新政党や労働組合は地方自治体の基本政策である産業政策や開発政策について、軽視するか、無視してきた。その結果、一部の影響力ある企業と政府自民党が産業政策、開発政策をもっぱら牛耳ることになり、自治体政治は彼らの間での争われ支配されていた。
革新勢力はそうした基本政策では争わず、福祉・医療・教育など個別政策で争ったに過ぎなかった。今回の山本予定候補の県政政策の提起は、こうした革新勢力の地方政策の限界を突き破る画期的な提起である。
この政策が、県民各層の間で討議され、みがかれれば、現在の岡崎県政に不満を持つすべての社会層、勢力を連合させることが可能となる。
新たな県政を実現する広範なエネルギーを一つに統合することが可能となる。
来る県知事選挙を、県政転換のチャンスにしなければならない。
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