990305 社説


99春闘

団結した力でリストラ攻撃と闘い、
雇用と生活を守ろう


 未曾有(みぞう)の内外の経済危機の中で、九九春闘がやま場を迎えている。

 多国籍企業など巨大企業の資本家どもは、激しさを増す国際的競争での生き残りをかけて、なりふりかまわぬリストラ攻撃、容赦ない労働者への攻撃にうって出てきた。かつてなく大規模の「人減らし」計画を次々と発表しながら、他方で「雇用か賃金か」と脅しをかけてベアゼロ、賃金引き下げをせまっている。

 労働者の雇用と生活が重大な危機にさらされている。すべての労働組合の指導部、活動家は、真価が問われている。

 財界や巨大企業の資本家どもとの「協調」が労働者をどこに導くか、誰の目にも明らかになった。敵の攻撃と真正面から対決し、労働者自らの団結した力に頼って闘ってこそ、雇用と生活を守ることができる。

資本の側の大攻撃

 日経連は、一月に労働問題研究委員会報告「ダイナミックで徳のある国をめざして」を発表、今春闘における資本の態度を明らかにした。

 今回の報告は、危機の深さとわが国多国籍大企業が置かれている状況を反映して危機感に満ち、労働者への犠牲転嫁で危機を乗り切ろうとする意図が露骨に出ている。

 日本経済は、「デフレ・スパイラルのがけっぷちに立ち、深刻な不況に直面している。…業績悪化による企業倒産も激増の情勢にある」。世界経済は、「通貨・金融危機の連鎖の中で信用収縮への恐れを強め、…世界同時不況の危惧が生じている」。

 報告は、この「未曾有の危機からの脱却」こそが、「当面・短期の最重要課題」と

指摘。また、日本の将来像「ダイナミックで徳のある国」を掲げて、中長期的に「構造改革に取り組むことが肝要」だという。

 内外の競争が激化するなかで、生き残るための企業の課題として「国際競争力の維持・強化と高コストの是正」を強調している。

 そうした企業の立場から雇用・賃金問題(労働者)への対応をどうしようとしているか。

 雇用問題について、「いまは労使ともに雇用の維持・安定に最大限の努力を傾注すべき時」と最重視している。

 したがって賃金問題については、「許される総額人件費の中で、雇用の安定を最重視し、その他の労働条件については労使で柔軟に対処すべき」と、初めて賃下げを打ち出した。具体的方策として、「賃金分割をともなうワークシェアリングの考え方(たとえば一人分の賃金を二人の雇用者で分け合う発想)」の導入、「企業内における多様な雇用形態の適切な組み合わせ」「能力や成果・貢献度に応じた賃金配分の徹底」などをあげている。

 要するに、雇用の維持を口実に、昨年までのベアゼロにとどまらず、賃金引き下げを指示したのである。

 だが、危機の時代の労資関係の現実は、さらに厳しい。

 「雇用の維持・安定に最大限の努力を傾注」と書かれた報告書が世間に出回り始めた矢先に、現場ではかつてない大規模な人減らし、雇用破壊の事態が進んだ。

 日本の製造業を代表する日立製作所、NECが、四千人、一万五千人にものぼる「人員削減」計画を発表するや、大企業各社はせきを切ったように次々と大規模な人減らし計画を公表した。目立つものだけでも、日産ディーゼル(今年中に三千人)、東芝(二年間で七千人)、三菱化学(三年間で二千人)、日本精工(二年間で千人)、沖電気(二年間で二千七百人)、王子製紙(三年で二千人削減)、等々。

 そしてついに、日野自動車(今年半ばまでに四百人)の社長は、「正規社員の解雇」、つまりナマ首を飛ばしてまでやると口にした。

 資本の側の攻撃は、それにとどまらない。容赦ない「人員削減」攻撃に続いて、たたみかけるように賃金面でも引き下げ攻撃をかけている。賃金や一時金のカット、手当や福利厚生費の削減など、総額人件費の抑制に踏み込んでいる。まさに資本の側は、生き残りをかけて「雇用も賃金も」とコスト削減に血道をあげているのである。

 たとえば、日立は所定内労働時間の十五分延長や残業手当の五%カット、鐘紡は基本給の一〇%カット、日本冶金工業も年収七〜八%カットを実施している。三井造船、横浜ゴムも、今年一年間に限って平均一〇%カットする提案をした。等々。

 「労資協調」などまったく足蹴にするような、資本の本性丸だしの労働者への大攻撃というべきである。

「労資協調」では生活を守れない

 労働者の雇用と生活が重大な危機にさらされている。労組の存在理由が深刻に問われる事態となった。

 連合は、九九春闘を「雇用も賃金も」という姿勢で闘うとしているが、賃上げは要求自体が一%とささやかなものだ。リストラ、人員削減攻撃に対してはほとんど容認、具体的な闘いを組織して歯止めをかけようとしていない。職場や、地域の労働者、まして失業者からみて、およそ頼りになっていない。

 なかでも、電機連合中央の態度は、資本の側の「雇用か賃金か」の恫喝に屈服し、労働運動を資本との協調の道に引き込む犯罪的なものである。「一方で希望退職を認めながら、一方で、残った人々で賃上げや一時金の増額を図る時代が終わった」「九九春闘を通じて、経営者としてなすべきこと、組合としてなすべきこと、そしてこれからの低成長時代を迎えて、勤める企業の経営のあり方について、労使が真剣に議論することこそ、この困難な時代が与えてくれた労使の役割」(鈴木委員長)などと、まるで日経連の口写しのようなことを言い、春闘不要論、「隔年交渉」への移行を振りまいている。

 また、「雇用こそ組合の生命線」と言いながら、電機主要十七社が来年三月までにもくろむ合計六万人もの人減らしには、むしろ積極的に容認している。

 なんたる資本への迎合か!

 危機の時代、資本家との協調で労働者の生活を守ることはまったくの幻想である。

 そのことは、ここ数カ年の経験が教えている。ソ連崩壊後、「グローバル化」「市場原理」など多国籍企業のイデオロギー攻勢に押し流された労働組合の多くは、規制緩和、リストラに「協調」してきた。その結果はどうなったか。

 一つは、戦後最悪の失業である。最新の一月の完全失業率は四・四%と三カ月連続で戦後最悪となり、完全失業者数は二百九十八万人で三百万人に迫っている。

 今一つは、労働者の所得、実質賃金の減少である。九八年の労働者一人当たり現金給与総額(月平均)は前年比一・三%減の三十六万六千四百六十五円で、初めてのマイナスとなった。物価変動を差し引いた実質賃金で見ても同二・〇%減った。

 かつてない失業者と所得減、これが資本家との協調で労働者が手にしたものである。

 今後危機はいちだんと深まる。内外の競争で生き残るために、資本の側の労働者攻撃がますます激しくなることは、明らかである。

 こんにち、資本家との協調で労働者の雇用と生活を守れるなどと説教する者は、まさに資本の側の回し者と言わなければならない。

労働者の団結こそ確かな武器

 労働者は九九春闘で、資本の側のリストラ攻撃を阻止し、雇用を守り、大幅賃上げを実現するために、断固闘わねばならない。

 労働者階級の団結こそ、敵の攻撃を打ち破り、要求を実現する唯一の確かな武器であることを自覚しよう。三百万人の失業者の要求を含め民間、公務員などすべての労働者の雇用と生活を守るために、団結した力を、職場、地域から組織し、産別へ、全国へ拡大しよう。ドイツ労働者のように、ストライキで闘おう。

 条件はある。資本の側のリストラ攻撃は、闘わざるを得なくなった人びとを続々と戦列に送り込んでいる。失業者のアンケートが示しているように、要求は切実で、政治意識と怒りは急速に高まっている。地域経済の崩壊を前に、中小商工業者の怒りも高まっている。

 最近の国労新橋支部の一カ月の座り込み闘争の経験は、労働者にあらためて団結の力を自覚させ、労働者の中に大きなエネルギーがあることを教えてくれた。要は、指導部にかかっている。


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