981025 社説


失業、倒産は最悪の状況に

政治不信は深刻、今こそ行動に立ち上がろう


「新規採用六年半、突然理由もなく母と自分が解雇を受けました。それも工場長の独断と偏見で解雇されました。正社員、パートあわせて三十名程。アサヒ靴や炭鉱は町の方から斡旋を受けていますが、われわれ中小企業は自分で探さねばならず、なかなかみつかりません。六年半の間に残業が多い会社だったため、資格もないのでなかなか職がみつかりません。父は来年から年金をもらい、下の弟はまだ高校三年で、母と自分の収入で家計をささえてきましたが、路頭に迷っています。一日も早く安定した職を希望しています」(福岡県広川市・二十歳代・男性)。

 これは、労働党福岡県委員会(中村哲郎委員長)が県南地域の職安で行った失業問題でのアンケート調査に寄せられた回答の一つである。この声に示されるように、失業問題はいよいよ悪化している。中小企業の倒産・経営危機、農村地域の疲弊も深刻である。

 小渕政権は大銀行を救済しても、これら勤労国民の諸困難に対しては切り捨てか、国民が反乱を起こさぬ程度の対策しかとらない。

 わが国経済の危機は、連続のマイナス成長となるように誰が見てもますます長期化、深刻化するばかりである。労働者や中小商工業者、農民など勤労国民に対して、支配層のいっそうの犠牲転嫁も必至である。

 勤労国民の生活と営業を守ろうとする要求は、ますます切実となっている。事態を大きく打開するため、広範な大衆行動こそが、いよいよ求められている。

失業者3百万人、強まる犠牲の押しつけ

 深刻な不況のもとで、勤労国民にはかつてない犠牲が押しつけられている。

 労働者のリストラ、首切りは膨大である。ここ二、三年で東芝六千人、日立四千人、日産二千人などというように、大企業だけでも三万七千人以上の人員削減が計画されている。八月の失業率は過去最悪の四・三%となり、完全失業者数も二百九十七万人と三百万人に迫り過去最多となっている。このうち一家の生計を支える世帯主の失業者数が八十六万人にのぼっている。

 中小企業の倒産も増加の一途である。九八年度上半期の倒産件数は、前年同期比二六・九%増の一万三十四件となった。九八年度全体では二万件を突破し、史上最多となる見通しだといわれる。不況型倒産はますます増加し、約七割を占めている。過去、倒産件数の九九%以上は中小企業が占めており、中小の苦境の程を物語っている。

 特に最近急増しているのが貸し渋り倒産で、上半期の件数は四百二十一件となり、昨年度下期の一・四倍に増えている。そのうち資本金千万円以上五千万円未満の企業が全体の五八・四%を占める。つまり、金融機関の貸し渋りが中小企業の倒産を急増させているのだ。

 農家経済も深刻である。九七年の全国一戸当たり農業所得は、米価や果樹価格の下落、減反などにより、百二十万円と前年比一三・三%の大幅減少となった。これに農外所得などを加えた農家総所得も、マイナス一・六%の八百八十万円と落ち込んだ。波はあるにせよ、年々増加傾向だった農業所得、農家総所得は、九一年以前の水準に後退したことになる。

 これらの苦境の結果、「経済・生活問題」に起因する自殺、金融機関強盗など社会的事件が急増している。

 これらの国民犠牲の政治を許すわけにはいかない。しかも、この事態は進行中で、これからいっそうの深刻化が避けられない。

小渕政権の諸「対策」のペテン

 ところが、小渕政権は大銀行・大企業優遇で、勤労国民切り捨ての政治を強行している。先の臨時国会で成立した金融関連法案によって、六十兆円もの公的資金を半ば強制注入する。大銀行保護以外の何物でもない。

 労働者、中小業者などに対してどんな政治が行われているか。

 三百万近くの失業者に対して、小渕政権は「新規開業支援助成金」(仮称)の創設などを打ち出したが、直接失業者の生活を救う対策は何もない。それどころか、雇用保険の失業手当受給者が百万人(一カ月)を超えたことから、労働者にさらなる負担を強いる保険料引き上げさえいわれている。

 とんでもないことで、求人倍率が低下しているこんにち、失業手当の給付期間の大幅延長などを実施すべきである。

 中小企業救済策に至っては、大銀行優遇策と比べてその冷遇ぶりが際立っている。中小企業対策費は、補正予算で上積みがあるにしても、八月の九九年度概算要求では、千八百六十二億円と一般会計要求総額に占める割合は、わずか〇・二二%で年々下降の一途である。

 また小渕政権は、中小企業への「貸し渋り対策」として、今年度総額二十兆円分の信用保証協会の新特別保証枠を用意した。だが、金融機関の中小企業向け貸出残高は、昨年末時点で三百四十二兆円にのぼっている。政府の用意した二十兆円は多額のように見えるが、実は約六百四十万の中小企業にとってはとうてい足りるものではない。ほんとうに「対策」というなら、大銀行に投入する六十兆円の何倍もの融資枠が必要である。

 さらに政府が、中小企業救済に本気でないのは、銀行の貸し渋りを放置していることである。というのは、中小企業向け貸し出しは、総額の約三分の二を都市銀行や地方銀行などが行い、商工中金など政府系金融機関はわずか八%弱にすぎない。したがって、最も多く中小向け貸し出しを担い、最もひどい貸し渋りを行う都銀などに対し、これを大幅に改善させなければ貸し渋りは打開できない。全国の中小業者の決起大会で、「貸し渋りを行う民間金融機関への強力な是正指導」を強く要求する声が相ついでいるのは当然である。

 小渕政権の勤労国民への対応は、万事この程度のものである。勤労国民が反乱を起こさぬ程度の対策といってよいだろう。小渕政権のお茶を濁したような「雇用対策」「中小企業対策」などにだまされてはならない。

 「三十年間働いて税金を納めた。同じ民間企業の銀行へ資金を使うより、われわれの働く場所へもっと公的資金を回してほしいですね」(横浜市・五〇歳代・男性)というように、失業者の声を聞いても、国民の怒りは、国民の税金を失業者や中小の商工業者救済に使わず、銀行救済につぎ込む政府の姿勢に怒りが集中している。

連携して、怒りの声を上げよう

 小渕政権の国民生活切り捨て政治は糾弾されるべきである。だが、議会内野党も全くあてにならない。民主党などは、当初公的資金投入に反対の態度を見せながら、最後には自民党と一緒になって賛成に回った。参議院では野党が多数の状況といいながら、自民党の戦術に「丸のみ」された。かれらの最大の関心事は、明日の生活や営業に苦しむ大多数の勤労国民のことではなく、大銀行、大企業の救済、保護だけである。そして、米国の意向をうかがうことである。

 商業新聞の調査で内閣支持率がわずか一七%となったように、今国会を通じて国民の政治不信はいちだんと進んだ。小渕政権の悪政によって、二カ月半でここまで落ち込んだのである。

 全国では、すでに闘いが始まりつつある。中小企業団体は商工会議所連合会、中小企業団体中央会、商工会連合会、商店街振興組合連合会の商工四団体を中心に、この九月から十一月にかけて全国三十六都道府県で延べ二万六千人が危機突破の総決起大会をすでに開催、または計画している。昨年の二十数都道府県からさらに広がっている。

 福岡でも十一月初旬、労働者や商人、農民、地方議員など多くの人びとの努力で、「深刻な危機―地域経済と暮らしを守ろう! 福岡県民怒りの総決起集会」が計画され、準備が進められている。

 危機はますます深まっている。この時期、大小を問わずどのような行動でも重要であり、さまざまな怒りの抗議行動を展開することである。そこから政治転換の端緒が生まれるに違いない。国民各階層は連携して闘い、自らの力でこの危機を打開しよう。労働者階級はその先頭で闘おう。


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