金融健全化法とは
金融早期健全化法は、破たん前の金融機関を対象とするものである。
まず、総資産に対する自己資本の比率で、銀行を四つに分類する。
・健全銀行―八%以上
・過小資本銀行―四〜八%
・著しい過小資本銀行(軽度)―二〜四%
・著しい過小資本銀行(重度)―〇〜二%
これに沿い、自己資本比率が低い銀行ほど厳しい条件をつけ、公的支援を行うというものである。
健全銀行への公的資金投入が行われるのは、次の場合である。
(1)破たん金融機関の受け皿となる
(2)急激、大幅な信用収縮を回避する
(3)合併など金融再編成で資本増強が必要な場合
支援措置は、整理回収機構(日本版RTC)が銀行の優先株(注)を買い取ることで行われる。「過小資本」以下の銀行への資金投入は、自己資本比率が低いほど、金融監督庁による経営監視、リストラなどが義務づけられる。これらの財源として、金融機能早期健全化勘定を、預金保険機構に設ける。
金融再生法とは
金融再生関連法は、経営破たん後の金融機関を対象とする。
破たん銀行と著しい過小資本銀行の一部には、金融再生委員会により、以下のいずれかの処理がなされる。
(1)金融管財人による清算、営業譲渡
(2)国が普通株を取得する特別公的管理
(3)公的受け皿銀行(ブリッジバンク)
破たんは金融監督庁が認定し、処理は金融再生勘定を財源とする。日本長期信用銀行の場合、特別公的管理が適用される。
ブリッジバンクは破たん行の債権を処理、「善良な借り手」への融資継続などを行う。さらに、三年以内に民間の受け皿銀行への合併、売却などが行われる。引き受け銀行がない場合は清算される。
つまり、株式取得時、不良債権の処理時、受け皿銀行への合併時と、三度にわたり資金を投入する仕組みである。
際限なき血税投入
以上、金融機能早期健全化勘定と金融再生勘定には、九八年度予算と同第二次補正予算で計四十三兆円の公的資金(国民の血税)が投入される。公的資金投入枠は「預金者保護」を名目とする特例業務勘定十七兆円と合わせ、六十兆円にも及ぶ。
重大なことは、公的資金投入枠には上積み規定が設けられており、さらなる血税投入に道を開いていることである。銀行の自己資本比率を基礎に資金が投入されるのであるから、株式や担保不動産価格が低下すればさらに自己資本比率が低下し、いっそうの資金が必要となるのである。まさに、血税投入の「底なし沼」である。止めどない国民収奪を許してはならない。
政府は、「優先株は経営が好転すれば返却されるので、税金投入ではない」などと弁明している。しかし、銀行経営や景気が好転する保証はなく、血税を投入することにかわりはないのである。
現に、都市銀行など二十一行には、今年三月に総額一兆八千億円の血税が投入されたばかりである。以降景気は好転したであろうか。中小企業への貸し渋りや融資の強制回収は止まったであろうか。
しかも、これら一連の措置は、米国の圧力によって行われている。九月の日米蔵相会談では、ルービン財務長官が公的資金投入の「量、質、スピード」を要求した。
米国は、日本の金融不安が自国に及ぶことを恐れ、わが国を防波堤にしようとしている。米国の不当な内政干渉を許してはならない。
経済を再生しようというならば、中小企業に銀行救済の何倍もの融資を行うべきである。また、労働者には雇用保証を行い、将来への不安をなくすべきである。
ビッグバン支援も
銀行資本は、国際的大競争に勝ち抜くため、次々と業務提携や合併などを押し進めている。金融ビッグバンとは、米大銀行などとの競争に生き抜くための地ならしである。
三度にわたる血税投入の仕組みに典型的なように、政府の金融再生政策は体力のない銀行を淘汰(とうた)し、国際的大競争に対応できる大銀行へと再編することに血税を投入しようという側面もある。これは、銀行の「焼け太り」にほかならない。バブルをあおり、ボロもうけした銀行に対するこのような手厚い保護は、まさに「泥棒に追い銭」である。
大衆行動こそが重要
膨大な血税を銀行救済のために投入することについて、ほとんどの与野党に違いはなく、国会「論戦」は、茶番である。それは、経営や生活に苦しむ大多数の勤労国民の実態とはまったく無縁である。むしろ、日米蔵相会談や先進五カ国蔵相・中央銀行総裁会議(G7)などを受けて、米国の顔色をうかがうばかりである。
経営に苦しむ中小業者などは、すでに全国で次々と決起大会を開くなど、闘い始めている。労働者や中小企業など各層の人びとが連携し、断固とした大衆行動で政府や自治体に迫ることこそが、事態を変える唯一の道である。(松本恵一・十月十三日記)
(注)優先株…配当を優先して受け取ることができるが、議決権はない株式。
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