980905


長銀

今年3月税金1700億円投入 またも5000億円以上を投入

これが許せるか

小渕政権の金融再生策

国民の犠牲で銀行救済・再編


 政府は日本長期信用銀行へ五千億円以上の公的資金投入をはじめ、金融再生法案によって銀行の救済・再編を促し、そこへ三十兆円の公的資金―税金を投入しようとしている。しかし、国民にとって生活と営業の危機はいよいよ猶予ならない事態になっている。中小企業は銀行の貸し渋りに苦しみ、数多く倒産している。労働者は倒産・リストラで街頭に放り出され、失業率は過去最高水準を記録し続けている。だが政府は何一つ本格的な救済措置を取っていないばかりか、将来、公的資金は税金として国民に負担が押しつけられる。国民各層は、大銀行救済のための金融再生法案に反対し、生活と営業を守るために、連合して闘おう。


 長銀は八月二十一日、九八年九月中間期に七千五百億円の不良債権処理を柱とする再建策を発表し、資本充実のため公的資金導入を申請した。これを受けて小渕政権は、長銀と住友信託銀行の合併を全面的に支援すると発表した。それは、五千億円から一兆円の公的資金を長銀に投入。さらに、金融市場から資金調達が困難なら、無担保の日銀特別融資を行うとしている。すでにこの三月、長銀には千七百六十六億円の公的資金が投入されているのだ。まさにいたれり尽くせりである。

 これに対し、一般企業や中小金融機関が次々に倒産しているのに、なぜ長銀だけをつぶさずに守るのか、という疑問も多く出ている。

金融再生法案で中小、国民が犠牲に

 現在、衆議院ではブリッジバンク(つなぎ銀行)法案などの金融再生法案の審議が始まっている。ブリッジバンク法案では、破たんした金融機関を国の管理下におき、「善良な借り手」へ融資を続け、二年間で破たんした金融機関の引取り手がない場合には清算するという。融資のこげつきなどは三十兆円の公的資金枠から投入する。

 これは体力のない金融機関をつぶし、吸収・合併を促進し、巨大銀行に再編することである。しかも、その資金とは国民の税金である。

 また、これによって「破たんを避けようとする金融機関の融資回収がこれを機に激しくなる」(中小経営者)というように、中小企業では資金調達が一段と難しくなると懸念されている。

 金融再生法案とは、中小企業がつぶされ、労働者が首を切られるなど、国民の犠牲の上で大銀行などを救済する法案であり、断じて許されない。

国民こそ救済されるべき

 九八年上半期の倒産は一万件を超え、負債総額も六兆三千五百億円を超えるなど最悪を記録している。特に中小企業は銀行の貸し渋り、融資の強制回収によっていっそう苦しんでいる。

 政府系の中小向け金融機関の昨年度と今年度の融資枠は二十五兆円となったが、それは中小企業が利用した融資総額のわずか八%に過ぎない。本当に政府が、中小企業への貸し渋り対策を言うなら、銀行へ三十兆円もの公的資金を投入せず、もっと中小企業へ大規模に融資しなくてはならない。

 七月の完全失業率は四・一%、完全失業者は二百七十万人に達している。どこの職安にいっても人であふれかえっている。しかも、有効求人倍率は過去最低の〇・五〇倍になっている。

 コメの自由化で打撃を受けている農民も深刻であり、最近の大雨、洪水はさらに追い打ちをかけている。

 こうした国民大多数が生活の危機に追い込まれている。まさに救済すべきは国民であって、大銀行ではない。

危機突破に連合して闘おう

  国民の危機打開、とりわけ不況打開のために消費税の即時撤廃、大幅賃上げによる消費拡大の実現が必要である。各種優遇措置で不当に税金を納めていない大企業に課税し、その財源にすべきである。

 また、大多数を占める中小企業の活性化のために、大銀行への税金投入をやめ、三十兆円は直接中小零細企業へまわすべきである。

 そして政府・大企業はため込んだ米国債を売却し、公共住宅など社会資本の充実などにあて、真の内需拡大による繁栄をはかるべきである。

 労働者、中小商工業者、農・漁民、失業者は、大衆行動で政府に危機打開を要求しよう。


銀行救済に税金を使うな

 銀行は、われわれ中小企業に対しては貸し渋りどころか、強制回収でやいのやいのやってくる。そのために仲間のなかには、廃業した者も多くいる。経営者の自殺が新聞で騒がれているが、全国でみればすさまじい自殺者が出ていると思う。こんな仕打ちをする銀行になぜ公的資金、最後は税金でわれわれが払うものを投入するのか。銀行だってわれわれと同じ民間企業に過ぎない。われわれ中小業には何の救済もなく、銀行に公的資金を投入するなら、中小企業にも投入してくれという思いが強い。(商工会議所役員・工場経営)

 バブルをつくったのも銀行、バブルでもうけたのも銀行だ。超低金利政策は銀行に対する金利減免処理に等しい。銀行への税金投入など、とんでもない。銀行ばかり甘やかす政府・自民党を許せないと思うのは、メーカーのひがみだろうか。(元製造業勤務・新聞投書より)

 長銀救済に公的資金投入だって、「冗談じゃないよ!」と言いたい。問題は歴代の経営者たちの責任である。なぜそのしりぬぐいを国民に押しつけるのか。なぜ税金を使うのか。今年の3月の1766億円に加え、さらに6000億円もの血税を使うなんて許せない。(主婦・新聞投書より)


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