明らかになった新ガイドライン関連法案

980415　社説

明らかになった新ガイドライン関連法案

危険な日米戦略同盟の具体化を阻止しよう

　橋本政権は四月八日、昨年九月に策定した日米防衛協力指針（ガイドライン）を具体化する関連法案の概要を発表した。

　それは、新規立法の周辺事態法（仮称）、自衛隊法や日米物品役務相互提供協定（ＡＣＳＡ）の改悪からなり、政府は今月中に法案の国会提出をめざしている。

　この四月十七日は、この新ガイドラインの基となっている日米安保共同宣言が発表されて二周年でもある。この日米戦略同盟をうたった宣言の路線は、わが国を米国の「東アジア戦略」に忠実に従わせる亡国の道である。

　わが国の進路を誤らせる新ガイドラインとその具体化に対しては、アジアや国内での警戒と批判は引き続き根強い。広範な国民的運動を形成して、これを阻止しなければならない。

米軍支える有事体制の構築

　明らかとなったガイドライン関連法案の内容は、①米軍に対する後方地域支援などを定めた周辺事態法案の制定、②「邦人救出」のために自衛艦も使用する自衛隊法改正、③米軍への物品などの提供を有事にも適用するＡＣＳＡ改定の三つである。

　周辺事態法案の内容は、周辺事態に際して米軍への物資の補給・輸送などの後方地域支援、米兵らの捜索・救難、国連決議に基づく船舶検査（臨検）などを盛り込んでいる。　自治体や民間企業へも政府は協力要請ができ、国会へは事後報告だけでよいのである。日本の民間空港、港湾の使用は使い放題で、さらに、公立病院、海運なども対象候補という話もある。

　さらに、すでに国会に提出ずみの国連平和維持活動協力（ＰＫＯ）法改悪案によって、自衛隊は海外で組織的な「武力行使」が可能となる。

　要するに、米国のアジアでの軍事行動に、官民問わずわが国全土を動員できる仕組みを構築しようというのである。いわゆる「集団自衛権」行使に踏み切ろうとしている。

　しかも、アジアの最前線に位置する九州では、有事体制を先取りする形で米軍の民間空港使用の既成事実が進んでいる。昨年、全国の民間空港における米軍機の着陸回数は九百十九回を数えている。そのうち、長崎三百三十七回、福岡百九十三回、奄美大島百八回と圧倒的に九州である。

　こうしてわが国支配層は、これまで以上に日米関係を軍事的に深める道に踏み込んだのである。

日米戦略同盟に基づくもの

　この有事体制整備の問題、本質は、単に軍事問題だけにとどまらない。この時期、広範な戦線を形成してこの策動と闘ううえで、あらためて日米共同宣言の路線そのものの狙い、本質を再確認しておくことは、きわめて重要である。

　言うまでもなく今回の新ガイドライン具体化の基本となっているのは、一昨年の安保共同宣言である。同宣言は米国防総省の「東アジア戦略報告」（九五年二月）を下敷にしたもので、冷戦後のアジア地域における米国の国家戦略であり、そこでの市場争奪戦で優位を確保しようとする米多国籍企業のための戦略にほかならない。「東アジア戦略報告」は、「アジア・太平洋地域は世界で経済的に最もダイナミックな地域であり、そのことだけからもその地域の安全保障は米国の将来にとって死活的」と、この地域でも米国の国益を強調した。そのために、中国を最大の標的に米軍十万の兵力、うち日本に四万七千を維持すると確認したのである。

　わが国支配層は「東アジア戦略」への忠誠を誓い、二十一世紀にわたってわが国がその要（かなめ）役を引き受けると約束したのである。

　米国はその戦略に基づいて、東アジアでも画策している。例えばこの一月、コーエン米国防長官は急きょ、経済危機と国際通貨基金（ＩＭＦ）への反発が続くインドネシア、タイ、日本、韓国など東アジア七カ国を歴訪した。昨年来のこの地域における経済危機の影響や反米機運の高まりを懸念して、この地域における米国の権益、軍事的支配がおびやかされぬよう「米国の軍事プレゼンス」を誇示することに必死になったのである。

　わが国支配層は、米国との間の戦略同盟を選択し、それは日米間の軍事面だけでなく、事実上政治、経済全般にわたって日米関係を基本的に規定するものとなっている。橋本政権のロシアとの「ユーラシア外交」、アジア危機への対応などもこうした日米関係の枠内で調整、進められている。

　二月の米国によるイラク攻撃準備においても、橋本政権は支持を表明、かつ日本が米軍の重要な出撃拠点となった。一月下旬には米空母インディペンデンスが、横須賀基地から中東へ向けて出港。岩国や横田基地などでは、艦載機による離発着訓練が急増した。沖縄・嘉手納基地からも、Ｆ１５戦闘機群が飛び立った。

　こうした米国につき従いアジアを敵視するわが国の選択は、中国などアジアの警戒と反発を強め、アジアでの不信と孤立をいっそう深めるのは必至である。わが国がアジアで友好的に共存・共栄し、その中で国民経済が真に発展する道にこそ展望がある。

広範な戦線をつくり阻止しよう

　こうした有事体制づくりに対するアジアや国内での警戒、批判を背景に、これに反対する広範な国民的戦線を構築して闘わなければならない。

　最も有効な力は国民的な運動である。現状では、国会内の闘いに多くを期待することは到底できない。

　まして共産党は、米軍基地撤去で闘うかのような幻想をあおりながら、この闘いを押しとどめようとしている。橋本政権の有事体制づくりを「米国の一方的判断で、日本が自動的に参戦する体制」（赤旗「主張」）と強調するだけで、その「出典」である米国の「東アジア戦略」には指一本触れようとはしない。つまり米国による「東アジア戦略」の暴露と反対の明確な意思表示を避けている。米国と日米戦略同盟を選択したわが国支配層に恭順の意を表しているのだ。これは支配層との重大な対決を避け、本当に闘う意思がないことは明らかである。この党に幻想を抱くわけにはいかない。

　わが国経済の危機的状況と国民の不信の高まり、「改革」問題での自民党内外の抵抗、今また新ガイドラインでアジアの反発に直面した橋本政権の抱える困難は大きい。国民的闘争こそ、かれらが最も恐れるものである。

　例えば、沖縄県民の闘いは、引き続き安保体制を揺さぶり転換させる最も重要な闘いの一つとなっている。昨年十二月行われた名護市での市民投票は、政府の露骨な介入をはねのけて、普天間基地の移設反対の意思を確固として示した。大田知事も名護への県内移設反対を正式に表明、さらに三月二十四日には県内移設を許さない五千人県民大会も開かれた。橋本政権は、この問題では当面行き詰まっている。さらに「五・一五」を前後して普天間基地包囲行動も準備され、秋の知事選を焦点に、沖縄県民の闘いは粘り強く闘われている。

　さらに全国でも、米軍の軍事利用が予定される港湾、空港などの周辺住民、自治体の反発は強い。民間空港として米軍機に最も使用されている長崎空港の地元の大村市長は、昨年の新ガイドライン策定時に、「米軍機の使用反対」を表明し、議会も同趣旨の請願を採択した。

　港や空港、海運など米軍使用の対象とされ、そこで働く全港湾労組や航空労組、海員組合などは警戒を強め、取り組みを開始している。東京、大阪など各地で労働組合、市民団体などによる行動が取り組まれている。

　活動家は直ちに街頭にたち、この危険な策動を広く暴露して訴えなければならない。関係港湾、空港を抱える地域では、行政に米軍への施設提供を拒否するよう求め、署名運動など行動を起こそう。協力要請の対象となる自治体は、住民の平和と安全を守るため、戦争協力に反対の態度を明らかにすべきである。労組をはじめあらゆる団体が声をあげ、行動しよう。

　闘いはこれからである。火の手を上げ、それを押し広げよう。この闘いは、二十一世紀に向けたわが国の進路を問う重大な闘いである。国民的運動に発展させることは可能である。

980415 社説