980305 平田順子


DATAでみる地方経済

不況でいっそう深刻化

地方切り捨ての公共事業削減



 日本経済の危機的状況が進む中で、地方経済の落ち込みもいちだんと深まっている。地方経済は政府の農業切り捨て策による農業不振のうえに、不況が直撃、政府が地方の振興策を何ら打ち出さないまま公共事業費を削減すれば大打撃となる。大銀行、大企業には手厚い保護で、地方を切り捨てる橋本政権の悪政を断じて許してはならない。地方経済の疲弊と今後予測される深刻な状況をデータでみてみる。

落ち込む地方経済
 経済企画庁が二月十七日に発表した地域経済動向では、全地域で景況が悪化、最悪の「停滞」が四地域におよんだ。とくに四国が評価を二ランクも後退させるなど、長引く不況が地方経済に打撃を与えていることが明らかになった。
 景気回復のカギとなる個人消費では、関東がマイナス三・五%なのに対し、中国、四国、九州、沖縄は六%以上のマイナスとなった(九七年十二月、前年同月比、大型小売店販売額など)。
 地方における企業倒産は、昨年十二月に前年同月に比べ、中国が四七・八%、四国が四四・八%、九州が三三・一%、東北が二九・一%と大幅に増加している。昨年十一月段階では、北陸が九カ月、四国が七カ月連続して前年同月の倒産件数を上回り、九州では四カ月連続で二ケタの増加率となった。また、件数でみるとグラフ1のようになっている。
 とくに、農業地域での景気落ち込みが激しい。九八年度のコメの政府買い入れ価格が二・五%引き下げられるのをはじめ、九十六万ヘクタールもの過去最大の減反が強いられる。米価下落による東北六県の減収はこの三年間で約千八百億円に上るともいわれており、農産物の価格低迷で農業地域での個人消費が冷え込んでいる。

公共事業削減で162万人失業の試算も
 こうした地方経済の苦況に、おいうちをかけるのが、「財政構造改革」による公共事業費の削減だ。昨年十一月に成立した財政構造改革法は、九八年度から二〇〇〇年度の三年間で、公共事業費を一五%削減することが盛り込まれた。九八年度予算案では国の公共事業費はマイナス七・八%となっているが、地方自治体レベルでは、削減額はそれを大きく上回る。四十六都道府県(予算編成の遅れている長崎を除く)の九八年度予算案の公共事業費は、合計でマイナス八・一%。千葉(二七・八%減)、岩手(二五・五%減)など二割以上減額した自治体もある。
 これらの公共事業費削減は地方経済にどんな影響を与えるのか。
 地方では公共事業への依存度が高く、とくに農業地域では、公共事業に依存した建設業が雇用対策にもなってきた。九四年度の都道府県の公共事業依存度(県内総支出に占める公共事業の割合)で比較すると、最低の東京都(三・七%)に比べトップの宮崎県(一七・九%)は五倍も依存度が高い。そのため、公共事業の削減が与える影響は地方に、より大きくあらわれることが予想される。
 農林中金総合研究所が昨年まとめた試算によると、地方の公共事業費が国の公共事業費と連動して減少(マイナス七%)した場合、実質国内総生産(GDP)を九六年度実績で三年間で二・二%押し下げる。これを地方ごとにみてみると、関東が二・〇%減なのに対し、北海道では三・九%減、沖縄二・九%減、四国二・八%減、東北二・六%減と、地方への影響が大きい(グラフ2)。また、雇用に与える影響では、全国で百六十二万人の失業が予想され、地方ほどその影響は大きい。先ほど述べたように、地方自治体は国の七・八%減を大幅に上回る削減案を出しており、この試算よりも影響は深刻と思われる。


 このように九八年度からの公共事業費削減、緊縮財政は、すでに倒産や失業、農業不振などの問題を抱えている地方経済に大きな打撃となる。主要産業である農業だけでは生活できず、かといって地元に他の産業もなく、雇用を吸収していた公共事業を担ってきた建設業者も倒産、失業者が急増する状況が予想される。
 政府は大銀行を救うためには三十兆円もの巨額の資金を湯水のごとく投入する。これに対して「政府・与党は、銀行には公的資金を使ってでも救うことに躍起になっているが、公共事業の削減や消費税、医療費の引き上げなど政策の影響で悪化している地方経済には、そっぽを向いたままだ。都市銀行だけを優遇する政策には我慢できない」(日本農業新聞)と東北の農家は抗議の声を上げている。
 公共事業費について日本共産党は、「ムダづかい」だとの主張をくり返している。だがそれでは何もの解決にもならない。橋本「改革」政治が地方切り捨てを進める中で、極めて無責任といわねばならない。
 大銀行、大企業優先の改革政治ではなく、農業や地域の振興、地場産業育成のための経済政策が求められている。(平田順子)


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