980305 社説


春闘勝利! 大幅賃上げ獲得

大企業の国際競争力強化のための「改革」を打ち破ろう


 バブル崩壊以降、日本経済は長期の低迷を続けてきたが、昨年の消費税増税などの九兆円にのぼる国民負担増や円と株の下落や金融システムの動揺が不況をさらに深刻なものとした。さらに、アジア発の経済危機に直面し、日本経済は今日、いっそうの困難に陥っている。「昭和恐慌以来」ともいわれる深刻な事態である。
 こうした中で、九八春闘は始まった。主要労働組合は二月末までに要求書を提出、三月十八日のヤマ場に向けて、資本との攻防が展開される。
 この春闘に際して、労働組合の指導部、職場の仲間の先頭に立っている活動家、そして多くの労働者には、確固たる階級的立場、それに支えられた断固たる闘いが求められている。

ベアゼロ宣言打ち出した労問研報告
 日経連は一月十三日に臨時総会を開催し、彼らの春闘に対する指針として、「危機からの脱出―第三の道を求めて」と題する労働問題研究委員会報告を承認した。
 その結論は、「ほとんど生産性の伸びが見込めないなかでは、賃上げの余地はない」「仮に国民経済レベルの生産性を上まわり、支払能力に余力のある企業にあっても、厳しい雇用環境下にある今日、まず雇用の維持に最大限注力することが望まれる」などとするものであった。
 要するに、十分もうかっていない企業はもちろん、大いにもうかっている企業でも賃上げをするな、ということである。さらに報告は、賃上げどころか、雇用も維持できない、雇用維持が優先だ、と労働者に脅しをかけているのである。
 しかし、今年一月の完全失業率は三・五%、完全失業者は二百三十八万人と過去最悪を記録している。しかもリストラ、首切りの結果、強制的に失業させられたものは対前月比十三万人増の、六十六万人にのぼった。こうした結果、とりわけ男性の失業率は、三・七%にも達しているのである。
 不況を理由に、リストラで労働者の首を切り、下請けを切り捨て、貸し渋りで中小零細企業を倒産に追い込んできた大資本が、「いずれの労使も雇用の維持に最大限注力する姿勢が必要」などというのは、盗人たけだけしいにも程があるというものだ。
 しかも、多国籍大企業は、この不況の中でも大もうけを続けている。三月期決算でも、不況で収益低下と騒ぎながら、ホンダやソニーなど輸出大企業は過去最高の収益が予想されている。一九八六年から九六年までの十年で、日本の製造業の労働生産性は四一・三%も増加し、経常利益は五六・九%と膨大な増加である。しかし、労働者の名目賃金は二六・三%、実質賃金にいたると、わずか一四・〇%の伸びでしかない。「わが国の人件費・賃金コストは世界のトップレベル」などと報告がいうのは、相対的な円高の中で、ドルベースで計算した数字だけのことであって、真っ赤なうそである。事実、ここ数年のリストラとコスト削減で製造業の人件費負担率は九四年の一二・九九%から一二・一三%へと低下している。苦境を伝えられる鉄鋼業にいたると同期一七・三九%から一四・七八%へと三%近くも減らしているのである。無惨なまでの高搾取、合理化の嵐が吹き荒れたわけである。労働者の生活実感が、それを正直に教えている。

敵のイデオロギー攻勢を打ち破れ
 労働組合の指導部、活動家、労働者は、賃上げゼロの日経連の方針を打ち破って、要求を実現するために断固として闘わなければならない。
 しかし、そのためにもまず、資本の側からのイデオロギー攻勢に対抗し、これを打ち破らなければならない。これは決定的に重要である。
 労問研報告の承認に先立ち、総会で演説した根本・日経連会長は、今日のような危機の時こそ、「時代認識」が必要で「その時代認識の上にいかなる価値を追求するか」、そして「その価値を実現するための処方せん・実践計画の策定と行動」が必要と発言、これを労使で共有することで「労使が社会の安定帯として『改革』を支え」ていくべきだと述べた。
 この攻撃こそ、まず打ち破らなければならない。資本の側の「時代認識、価値観、処方せん」を前提にしていたのでは、労働者は永久に資本の支配から逃れられず、労働者の困難はいつまでも続くからである。
 多国籍化したわが国大資本は、冷戦後のグローバル化といわれる時代に、国際的な資本間の激烈な競争に生き残るため、「雇用問題が一層深刻化」しようが、中小零細業者が倒産しようが、「コスト削減」のため、橋本政権の六大改革はじめ構造改革を実行し、賃上げゼロに押え込み、何がなんでも日本の産業・企業の国際競争力を強化せよ、と主張する。これこそ敵の「時代認識、価値観、処方せん」である。しかし、労働者にとってはこれは何を意味するか。グローバル化、大競争などといっても、この社会は依然として階級社会である。労働者階級は、今日でもリストラ、労働強化、さらに規制緩和など「改革」で地獄の苦しみだが、仮に「改革」が成功したとして、国際競争力を強化して、浮かび上がるのは一部の多国籍大資本のみで、労働者階級と多くの国民諸階層にとってはさらなる苦しみ、高搾取が待っているにすぎない。
 だから、労働者階級は闘って「改革」を挫折させ、自らの利益、理想にあう経済、社会を実現する以外ないのである。ひとにぎりの多国籍大資本のための政治から、国民多数のための政治、経済へと根本的転換を闘いとらななければならない。これは国民多数の利益にも、経済危機に苦しむアジアの隣人たちの利益にもかなう道である。大幅賃上げをかち取り、消費税を撤廃し、大企業にふさわしい負担を要求し、国民生活を豊かにする、真の内需拡大をかち取ることこそ問題の解決の道である。

労働運動を敗北に導く共産党の路線
 今春闘では、労働運動の現場、中小労組などで、一定の積極的な変化が表れている。支配層の「改革」に対する反撃が始まっている。労問研報告が「労働市場の柔軟化」として要求する労働法制の規制緩和、改悪攻撃に対して、ゼンセン同盟や金属機械、全港湾などの労働組合による闘いが活発化している。地域では、パートなど不安定雇用労働者の組織化と闘いも強められている。
 全港湾は今春闘で規制緩和反対を掲げ十日間のストライキを構えている。また、連合傘下の中小労組は中小共闘センターに結集して、大手との格差是正に向けて奮闘しようとしている。これは「横並び賃金決定見直し」を要求する、財界の春闘解体攻撃への一つの重要な闘いである。
 このような、積極的な変化、やむにやまれぬ闘いをいっそう発展、強化させなければならい。
 このようなとき、労働運動内部の敵、裏切り者日本共産党の犯罪的役割を暴露することは、とりわけ重要である。彼らは昨年秋の二十一回大会で、支配層に恭順の意を示し、危機の時代に、支配層を支えることで政権に近づこうという、イタリアなどの修正主義の先輩に学んだ、いっそうの裏切りの路線を選択した。また、「ルールなき資本主義を正す」などと、今日の大資本、支配層の残酷な搾取の実態を覆いかくし、ヨーロッパ並みへの改善など、支配層の危機延命のための提言に明け暮れている。こうして彼らは「改革」政治の本質も暴露せず、今日でも国民の闘争を押さえつける役回りを果たしているのである。長く社民の影響下にあった日本の労働運動が、再度この連中について行き、展望のない議会の道に引き入れられれば悲劇である。この連中の影響力を、労働運動から一掃しなければならない。
 労組、労働者階級は今春闘を自らの要求を断固として実力で闘うと共に、大店法廃止に反対する中小商店の要求、倒産・廃業の危機に直面している中小業者の資金繰りや仕事保証の要求、生産者米価の引き下げや減反の拡大に反対する農民の要求、職を求める失業者の要求などを支持し、他の社会層との連帯を強化するために努力しなければならない。
 さらに、米軍基地の縮小・撤去を求める沖縄県民の闘いを支持し、新ガイドラインや、わが国政府の反中国、アジア敵視の政策に反対し、自主、独立の国の進路のために闘わなければならない。
 敵の危機は深刻である。団結して闘えば、おおいに前進が可能である。


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