971215 社説


とん座する橋本の改革政治

大衆行動を強め98年を偉大な前進の年にしよう


 アジア発の金融不安の拡大、世界的な株価の大暴落など世界資本主義の危機の深刻さが劇的に示された一年であった。

 わが国も、戦後の経済社会システムの矛盾拡大を背景にバブル後不況の長期化、相つぐ金融機関の破たんなど経済は深刻で、日本発の世界金融危機も予想されるほどに不安定なただなかにある。このような下で橋本政権は、多国籍大企業の利益のための改革政治を進め不況に苦しむ国民生活をいっそう苦境に追い込み、国民各層の激しい反発に直面している。外交でも、昨年の日米安保共同宣言でアメリカのアジア戦略につき従う政治戦略同盟の道を選択し、ガイドライン見直しを強行、反中国・アジアに敵対する道を歩み、アジア諸国の警戒と不信をかっている。

 多くの国民は、実生活を通じて「改革」の実態をつかみ、反撃の闘いを強めている。保守層内部でも矛盾と闘争は拡大し、橋本の改革政治は今日重大な危機を迎えようとしている。

 来る年一九九八年を、いっそう闘いを強め、国民的な戦線を拡大し、窮地の橋本政権を打ち破り、国民のための内外政治を実現する前進の年としなければならない。

さらなる金融機関救済10兆円の公的資金導入

 金融機関の相つぐ破たんに自民党が宮沢元首相を担ぎ出して、あわてて発足させた「自民党緊急金融システム安定化本部」は十一日、「金融システム安定化へ十兆円規模の財政資金を投入する必要がある」との方向を決定。十六日にまとめる公的資金活用策に盛り込むことで調整を始めた。

 すでに四兆円といわれる日銀特別融資を行い、公的資金=国民の血税を破たん金融機関につぎ込んだ揚げ句、「預金保険法」が改悪されようとしている。今回の自民党案は「金融システム安定」の名の下に、金融機関の自己資本の強化のために新たな赤字国債まで発行して、大盤振る舞いしようというのである。すでに「預金者保護のため」などという言い訳も完全に投げ捨てられた。あからさまな大銀行救済、国民の血税の投入である。

 一方、橋本政権の「改革」政治は、ここでまた深刻なジレンマに直面したことになった。先頃成立したばかりの財政改革法は、その成立の直後からシリ抜けとなったのである。この法律の赤字国債依存からの脱却という目標は、早くも放棄されることとなった。

 橋本首相が、にわかに梶山静六元官房長官が提唱した十兆円の「新型国債」構想に飛びついたのは、財政改革路線との矛盾を取り繕うためである。NTT株など政府保有株式の売却益を返済財源とする「新型国債」を発行するというが、国の借金が増大することに何のかわりもない。「新型国債」といおうが何といおうが、実態は赤字国債の増発でつけはすべて国民に押しつけられる。宮沢元首相は「国の資産を活用するという問題提起はきわめて参考になった」と述べ、その本質を暴露している。

 国民には財政改革法で、福祉・医療財政などの大幅削減を強制し、公共事業を絞り込んで地域経済を崩壊に追い込み、耐えがたい苦しみを強いながら、あの手この手で金融機関救済に奔走する自民党の大銀行の「手代(てだい)」としての姿に国民の怒りは頂点である。「改革」の実態が国民の前に暴露された。

改革政策の挫折に直面する橋本政権

 先頃出された行革会議の最終報告について「中間報告に比べると郵政三事業の民営化や建設省から河川局分離が後退し、大蔵省の財政と金融の分離も結論が先送りされた。…行政改革への私たちの期待とは程遠い内容になった」(日経新聞十二月四日社説)と財界の意を受けた商業マスコミの失望感はあらわである。

 郵政民営化に対する特定郵便局長会の反撃など、「改革」に対する自民党の歴史的支持基盤からの反抗が相ついだ。官僚、族議員の抵抗など支配層内部の矛盾の拡大で「改革」は妥協を強いられている。

 財政改革でもまた、企業減税や景気刺激を求める業界などの声は大きく、行財政改革の足並みは乱れている。そして金融機関の相つぐ破たんは、敵にとっての「困難」の大きさを見せつけた。

 財界の頭目、日経連の豊田会長は「改革」の加速化の条件の第一に経済の復調をあげたが、今日その条件は根底から揺らいでいる。

 経済企画庁は十二月の月例経済報告で、九六年二月から使ってきた「回復」という表現をほぼ二年ぶりに削除。「景気は足踏み状態にある」と、景気判断を大きく後退させざるをえなかった。

 こうした環境のうえに橋本政権の改革政治はのっているのである。これを押し切るには橋本政権の基盤は余りに弱い。しかし改革を後退させれば、国際的大競争での生き残りをかけた多国籍大企業の番頭としては失格である。橋本首相はまさに行き場に窮した。深刻なジレンマである。

闘い強め、改革政治打ち破ろう

 われわれは、橋本政権の改革政治の本質について、「橋本政権は、内外情勢の圧力に押され、現状にとどまれなくなって『改革』に踏み込まざるを得なくなった。これは敵の強さではなく、弱さである」(大隈議長九七年新春インタビュー)と暴露してきた。従って「全体として支配層が余儀なくされているこの状況は、闘おうとするわれわれにとってまたとないチャンス」(同)「悲観する理由などまったくない。敵側にとっても大変な危機だから。国民を追い立てても、それは国民を立ち上がらせることになる。労働者にしても、他の中小零細業者や農民にしても、政治が応えなければ、実生活から疑問がますます広がるであろう」「敵も苦しくて、いままでの仲間さえ捨てなければならなくなっている。そうした人びともふくめ、多くの人たちを結集して、この闘いを通じて政権を奪い取る。そしてわれわれの理想にあう国の運営と国際社会での生きる道を選ぶ。それ以外にない」(九七年旗開き同あいさつ)と主張してきた。

 この一年、おおかたの状況はわれわれが予測したような展開を見せている。支配層の危機はますます進んだ。政府、マスコミあげての「改革」の大合唱だが、実生活からの国民の改革政治への疑問と痛みは確実に広がり、現実の政治への怒りとなり力となりつつある。政治を変えようと闘ってきたものにとって「またとないチャンス」いままさにそうした状況が進展しているのである。

共産党の裏切り打ち破り闘う隊列強化を

 いま何より必要なことは、闘いの力を強化すること、闘う側の認識を整頓し、団結を拡大し戦線を構築することである。改革に苦しむ国民各層の連携を進め、生活、営業の危機という現実に根のある大衆行動を強め、政府に迫らなければならない。

 政権に参加する社民党はじめ議会の諸党は、どれも「改革」推進で無力なばかりか犯罪的ですらある。

 「総自民党化と闘う」という共産党にも、何も期待できない。むしろこの連中は「唯一の革新」を売りものにするだけに、いっそう警戒し、暴露する必要がある。共産党は、今年の二十一回大会で裏切りの路線を、また一歩進化させた。彼らは「ルールなき資本主義」を是正すれば、この資本主義の下で「国民が平和で豊かで人間らしい生活をおくれる日本」がつくれるなどと、幻想をあおり立て、今日の国民の苦難の本質を隠ぺいし、国民の闘いをかく乱させる役割を果たしている。

 ヨーロッパ並み「ルール」への改革などと、多国籍大企業と同様に「世界ルール」を国民に押しつけ、支配層の進める改革政治を後押しする役回りを務めているのである。事実、彼らは財政での公共投資削減などを大企業とともに騒ぎ立てている。政権ほしさに大企業に恭順の意を示す、この連中の裏切りをわが党は徹底的に暴露する。そして闘いの戦線からかく乱分子を一掃し、国民運動の発展のために努力を強めるであろう。

 労働者階級は裏切りを見抜き、新旧の日和見主義を暴露し、隊互を整えて諸階層の先頭で闘おう。

 来年を偉大な前進の年とするため、結束して奮闘しよう。


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