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971128 中央委員会政治局
国民の税金を大銀行、金融機関救済に使うな!
銀行の手先、国民の敵、橋本政権を打倒しよう
1、
アジア発の通貨危機、株暴落など世界的な経済不安が拡大する中、北海道拓殖銀行、山一証券、徳陽シティ銀行など金融機関の経営破綻があいつぎ、日本資本主義経済の深刻な危機が進行している。これに対して橋本首相は11月27日、「あらゆる措置を講じる」と不良債権処理のために公的資金を投入し、深刻な大不況に苦しむ国民からしぼりあげた血税を大銀行救済に使うことを表明した。
われわれは、大銀行救済のために国民の税金を使うことに断固反対する。橋本政権の、大金融機関優遇の実態を徹底的に暴露し、大銀行の忠実な手代・国民の敵としての正体を明らかにし、国民の怒りでこの政権を倒し、暴挙を阻止しなければならない。
2、
政府自民党は、国民の税金投入の口実を、「預金者保護」といかにも国民生活を考慮したかのように宣伝している。盗人たけだけしいとはこのことである。
「預金者保護」と口では言うが、実際はまったく違う。「預金者保護」というのであれば、すでに「預金保険機構」がそれは保証している。大蔵省もこれまでは、これで十分だと断言してきた。
ところが、今国会で審議中の預金保険法改訂案は、預金者保護という名目の「預金保険機構」から破綻金融機関への資金投入を可能にする。そうなれば預金保険機構は底のないザルとなって、いくらでも破綻金融機関に資金を吸いとられることになる。資金が枯渇するのは目に見えている。また、自民党案では、銀行の資本金拡充に税金投入の道を開こうともしている。さらに、金融機関のかかえる不良債権買い取りにも公的資金の投入を検討している。
さまざまな仕組みをつくって、そこに財政資金を大量に投入して、金融機関を救済する、これが自民党のたくらみである。「預金者保護」など、またくの口実にすぎない。たとえば、自民党の緊急金融システム安定化対策本部長に就任した宮沢元首相は、「バブルの後始末は国が背負わざるをえない」と公言している。
アメリカのある経済学者は、財政資金の投入は12兆円強にのぼると見込んでいる。銀行がかかえる不良債権の規模からみて、それでも足りるかどうか。巨額の血税が大銀行に吸い取られる。
他方、財政と国民生活は、どうなっているか。
今日、28日の国会で「財政危機」を理由とした「財政構造改革法」が成立する。この結果、高齢社会でますます必要な社会保障費や地域経済に大きな影響をもつ公共事業費、また、さまざまな国民生活関連の補助金なども、大幅に削減される。すでに今年度予算で、消費税率アップ、医療保険改悪など国民に9兆円もの負担増を強いる。国民に犠牲につぐ犠牲を強いてきている。政府買い入れの生産者米価も大幅引き下げで、農家経済は大打撃となる。
労働者へはリストラや労働条件の改悪攻撃がかけられ、失業者は236万人に増大した。多くの商店は大店法の規制緩和のなかで倒産・廃業に追い込まれている。中小企業の倒産件数も急増し、10月は前年同月比20%増の1614件になっている。とくに建設業は、公共投資削減と銀行の経営危機による貸し渋りの影響をもろにうけ、倒産が急速に拡大している。国民各層の生活と営業は危機にひんしている。
こうした国民生活にたいして橋本政権は、生活擁護のために何かしたか。何もしないどころか、むしろ規制を緩和し、財政をしぼり、苦難の根源となっている。「財政危機」を口実に、国民生活の「保護」ではなく、破壊を強行している。これは誰でも知っている事実である。
その橋本政権のいう「預金者保護」が、国民の税金を投入するための口実であることは明らかである。ねらいは、大銀行保護救済である。
3、
すでに日本銀行は、ここ数日で4兆円もの巨額の金を北海道拓殖銀行や山一証券に特別融資と称して、まさに湯水のごとくつぎ込んでいる。「内外の投資家(富士銀行などのことだ!)への支払いにあてている」(松下日銀総裁)が、返済が保障されているわけではない。
中小企業が倒産しそうになったとき、どの銀行も融資してくれないどころか、いち早く債権回収に走るではないか。すでに、政府・日銀の超低金利政策の結果、国民の手元に入るべき利子は圧縮されて生活を圧迫し、一方、金融機関は本来払わなければならない利子を免除されて莫大な利益を手にいれている。これらはすべて政府の金融機関救済策である。
その大銀行は、いま、貸し渋り、さらには貸した金の回収で、資金繰りに苦しむ中小零細企業を倒産の危機に追い込んでいる。そこに財政をつぎ込むなど、まさに泥棒に追銭である。
一方で、規制緩和と「改革」で国民生活に大きな犠牲が強い、他方で、金融機関だけを税金で救済するというのは道理にあわない。橋本政権の、大銀行救済のための税金投入を断じて認めるわけにはいかない。
しかも、問題の金融機関は、大口債権者への損失補填、総会屋への利益供与、「飛ばし」とよばれる不正な帳簿操作などでたらめな経営を行ってきた。こうした金融機関の借金のつけを国民に回すなどとんでもないことである。彼らの責任を徹底的に追及しなければならない。
破産の責任は、弱い金融機関に犠牲をしわ寄せし、また、国家資金を合法的に盗み取って生き延びようとしている、巨大銀行を中心とする金融業界自身に行わせるべきである。
4、
政府は、こうした事態にたいして重大な責任がある。
その責任は、証券会社、銀行の不正な乱脈経営を放置してきたというだけではない。もちろん、この後に及んでも、責任を認めようとしない大蔵省、大蔵大臣など断じて許すことはできない。
周知のように、わが国の戦後の金融システムは、政府大蔵省・日銀を頂点に、大小の銀行と郵便貯金制度なども含めて形成され、効率よく国民の資金をかき集め、自動車や電機など輸出大企業の育成に投入し、輸出主導型の経済発展を促すものであった。これはある意味で成功したが、そのなかで銀行は、「護送船団方式」とよばれるように大蔵省に固く保護され、大蔵省と銀行は官民ゆ着の象徴ともなった。
今日の事態は、このシステムのつけ、矛盾が噴出したものでもある。とくに、85年以降の急激な円高に対処するために輸出大企業を支援した政府の経済政策の結果である。バブルとその崩壊が生み出した莫大な不良債権が、わが国金融システムを揺るがしている。
他方で、多国籍化したわが国巨大企業には、「大競争時代」などといわれる国際競争の激化した世界への対処が迫られた。
こうして戦後の日本型システムは多国籍化した大企業にとってむしろ足かせとなった。
橋本政権は、多国籍化した巨大企業が世界中で生き延び、勝ち残るために、日本を世界ルールにあわせ、開放するための規制緩和と開放の「改革」に急テンポでのりだした。
金融方面での「日本型ビッグバン」もそうしたものである。政府・財界は、銀行に不良債権処理を急がせ、弱い金融機関はつぶすなど、新たな金融システムに再編成しようとしている。そのためにこそ巨額の公的資金投入を急いでいるのである。大蔵省の幹部が、山一の廃業に際して「市場が無理な経営をとがめる形に動いてくれたのは、ビッグバンの上で望ましい方向」などというのは、責任放棄の言い逃れだが、支配層の本音でもある。
金融機関の倒産も、廃業も、また、再編も、それはいまの制度のもとではまったく自己責任で自由なことだ。だが問題は、そこになぜ国民の税金をつぎ込むかである。改革で犠牲になり、さらに血税を大銀行につぎ込まれる。
国民は二重に搾り取られ、犠牲になる。これを許せば、多国籍化した巨大企業の繁栄の陰で、国民は将来にわたって犠牲になる。「預金者保護」どころではない。断じて許すわけにはいかない。
5、
財政が破綻したといって、国民にかぎりなく犠牲を押しつける。他方、金融機関が倒産したからといって破綻したはずの財政を惜しげもなくつぎ込む。銀行救済をすすめる。こうした政府は国民の敵である。
こうした政府を打倒することこそ、国民生活を守りながら経済を「安定」させる道である。大企業優先の経済政策を大胆に転換し、労働者の大幅賃上げ、中小業者の営業と生活の保障など国民生活を豊かにする経済政策を行い、真の内需拡大を実現することが唯一の解決策である。
倒産、廃業、営業難、農家経済の破綻、首切り、失業、賃下げ、就職難、社会保障切り捨て……悪政に苦しむ国民各層の怒りを行動にかえ、国民の敵・橋本政権を打倒しよう。
これだけが国民の活路である。
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