971005 解説


アジアに敵対する危険な道

ガイドライン見直しとは(下)


 新ガイドラインが九月二十三日策定された。周辺有事を想定して、中国などアジアに敵対し、米軍への軍事協力を決定した新ガイドラインは、わが国全土を動員するものとなっている。それに対してすでに、国の内外から批判の声が巻き起こっている。平和で安全な住民生活を守るため、地方自治体が港湾や空港の米軍使用に反対するのは当然である。地域住民、関連労組や地方自治体など広範な各層は連携して新ガイドラインとその具体化に反対し、闘いを強め国民的世論と行動をさらに強く巻き起こそう。内外の反対の声を紹介する。

親泊康晴・那覇市長

 民間専用の港湾である那覇港が、「日米防衛協力のための指針(ガイドライン)」で実質的に指名されたことに、強い衝撃を受けている。沖縄は現在においても巨大な米軍基地の存在に苦しんでいるうえに、ガイドラインの見直しで、あらたな重圧を強いられることにはとうてい納得できない。五十三年前の十月十日の「那覇大空襲」でもわかるように、軍事施設があったからこそ、旧小禄飛行場や那覇港がアメリカ軍の爆撃を受けたということを歴史の教訓とすべきである。ガイドラインの見直しのことを英語名では、WAR MANUALということであり、その実態に県民・市民がもっと関心を示す中から、今後の行動を行っていきたい。

笹山幸俊・神戸市長

(外国軍艦の入港に際しては、非核証明書を求める)議会で決めたことは守る。問題が起きたら、国には市議会の決議があるからと説明する。

橋本大二郎・高知県知事

 (来春開港を目指す高知新港に、核搭載可能性がある外国艦船が入港するならば)、外交上は問題があるかもしれないが、神戸方式で対応していきたい。

新潟県平和環境労働組合会議・小泉正栄事務局長

 新潟県は、日本海をはさんで中国、朝鮮、ロシアと接している。われわれはかつての県評時代から、日本海を波立ててはならないと平和運動に力を入れてきた。そのためには、外国との交流が大事だと考え、三十年前からロシアのハバロフスク地方労働組合評議会、中国黒龍江省総工会と交流協定を結んできた。今では組合の人的交流だけではなく、未来を担う子どもたちの交流も実現している。
 こうした平和に相反する新ガイドライン、新潟港を軍事利用することには反対していく。そのためにも、労働組合レベルだけでなく、幅広く県民を巻き込んで議論していく準備をしている。

全横浜港湾関係労働組合協議会・岸宗男議長

 横浜港には、米軍のノース・ドッグがある。グアム島の米軍補給廠(しょう)がなくなって、その関係で米軍貨物が増えている。しかも、その貨物はコンテナで運ばれてくるので中身がわからない。先日もコンテナが入ったが、その中には北富士演習場で使う弾薬が入っていた。また、本牧ふ頭では米国の貨物会社が米軍貨物を取り扱っているが、中身を問い合わせても「リストがない」といって、明らかにしない。横浜港は商業港であり、ノース・ドッグにも反対していくし、今後、新ガイドラインによって、港湾労働者を危険地帯に派遣する動きが起きれば、断固拒否していく。

長崎県平和・労働センター 坂本浩事務局長

 長崎県には、佐世保米軍基地があり、長崎空港が有事の際の米軍使用空港に名前が上がっている。その点で、多くの県民が危機感を持っている。その一つのあられが大村市議会での「意見書」となった。これは自民党も含めて採択されており、民間施設を軍事利用することは、党派を超えて反対する課題だ。また長崎県は、「アジアに開かれた国際都市」ということで、空の玄関口・長崎空港、海の玄関口・長崎港、この二つはアジアとの接点であると位置づけている。平和外交のために開かれるべき港や空港が米軍の拠点になるというのは、時代錯誤もはなはだしい。しかも長崎には中国領事館があり、中国との交流を続けている。新ガイドラインはまさに、これに水を差すものだ。平和外交に逆行するものとみている。十・二一国際反戦デーには県内各地で講演学習会などを行い、新ガイドラインの理解を深めたい。その上で九州規模で大集会をやろうと準備している。

アジアの警戒の声

中国

 中国がガイドラインに関心を持つ重要な原因の一つは、台湾問題に及んでいるからである。(1)台湾は中国の領土の不可分の一部、(2)われわれは日米双方が台湾問題に関する約束を守り、中国側の厳正なる立場を尊重し、中国の利益や中国人民の感情を痛めることをしないように望む。歴史的理由から、日本の防衛方針は、つねにアジアの近隣諸国にとって、非常に敏感な問題だった。日本は歴史の教訓に学び、平和発展の道を歩むべきだ。(沈国放・外務省報道局長)

韓国

 朝鮮半島では自衛隊の戦闘行為があってはならず、韓国の主権と関連する問題では韓国政府と緊密に協議、事前協議での合意が必要」(柳光錫・韓国外務省アジア太平洋局長)事実上、日本の軍事大国化に道を開いている点で深い憂慮(ゆうりょ)を禁じ得ない。(与党・新韓国党スポークスマン)

ASEAN

 (日米両国は)十六カ月もこの問題を議論していたにもかかわらず、今年七月の東南アジア諸国連合地域フォーラム(ARF)まで、東南アジア各国にその内容を説明しなかった。東南アジア諸国との緊密な協議抜きに、日本が信頼を勝ち取ることは非常に難しくなる。(タイ英字新聞「ネーション」)
 日本は周辺有事に台湾海峡を含めるべきでない。(リー・クアンユー/シンガポール上級相)
 冷戦後のアジア太平洋の情勢は、新ガイドラインが指摘しているよりはずっと良好で、大切なのは(有事への)対症療法より紛争の予防だ。(ステファン・リョング/マレーシア戦略研究所・日本研究センター所長)


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