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970925
大企業奉仕で国民犠牲押しつける橋本行革
窮地の橋本政権に国民的反撃を
第二次橋本改造内閣は、その成立の直後から大きくつまずくこととなった。ロッキード事件で収賄罪の確定している佐藤孝行を、行政改革を指揮する総務庁長官に起用した閣僚人事に、国民の怒りが集中した。国民の厳しい批判の中、二十二日、佐藤はついに辞任に追い込まれた。しかしそれで幕引きを許すわけにはいかない。任命権者の橋本首相自身の責任が厳しく問われなければならない。
政府、自民党は「政治倫理を求める世論を見誤った」などと言い訳しているが、ことはもっと深刻である。多くの国民は「改革には痛みが伴う」などと国民に犠牲を迫りながら、一方で、党利党略、派閥利害優先で政務次官という公務員トップの地位で汚職事件を引き起こした人物を行革担当大臣に復権させる自民党の傲(ごう)慢な体質と、それを許す連立与党や無力な野党に対する怒りと不信をかき立てられたのである。国民の前に「改革」を騒ぎ立てる政治の実態が、劇的に暴露されたのである。
国民の怒りは大きい。無投票で自民党総裁に再選され、自信満々とみえた橋本首相だが、「六つの改革」に対する国民各層の強い反発を背景に、その前途に横たわる困難の大きさが、改めて浮き彫りとなった。
今こそ、窮地の橋本政権をさらに追いつめ、多国籍大企業の利益のための改革政治を打ち破る国民的闘いを強めよう。
国民犠牲の行革会議中間報告
行政改革会議(会長、橋本首相)は九月三日、「中間報告」を発表した。「六大改革の突破口」と位置づけられた行政改革は、今後、この中間報告をもとに連立与党内の調整を経て、十一月には最終報告がまとめられ、来年の通常国会に行政改革基本法案が提出される予定である。
発表された中間報告は、その「理念と目標」の中で「(この国の再構築のために)徹底的な規制の撤廃と緩和を断行し、民間へゆだねるべきはゆだね、地方自治への国の関与を減らすことが必要である」と行革のねらいを明言している。さらに、「行政改革は、国民にしみついた行政への過度な依存体質に決別するものでなければならない」などと、国民犠牲の押しつけを公然と居直ってはばからない。そしてその具体策として打ち出したのが「(1)内閣・官邸機能の強化、(2)中央省庁の行政目的別大くくり再編成、(3)企画立案機能と実施機能の分離」などである。
内容を吟味してみよう。
第一の柱「内閣・官邸機能の強化」に関しては、総務庁を省に格上げすると同時に、新たに内閣府を創設して内閣の企画・調整、情報収集、危機管理機能などを強化しようというのである。
カンボジアの邦人救出の名目で、タイへの自衛隊機派遣が、首相主導でごり押しされたのは記憶に新しい。昨年の台湾海峡危機に際し、自衛隊が秘密に行った米軍支援や沿岸防衛研究は首相官邸の指示に基づくものであった。日米ガイドライン見直しと有事立法制定などの動き、さらに改革で高まる国内の不満への対処など「官邸機能強化」の政治的意味は明白である。
大企業の利益のための省庁再編
第二の柱「省庁の大くくり再編成」に関しては、現在の二十二省庁を一府十二省庁に再編成することを提案している。あたかも行政の効率化のようにいわれる再編成だが、その内容をみれば、ねらいはここでも明確である。例えば、いままで通産省が所管してきたエネルギーやハイテクなど戦略重点産業分野に郵政省が所管してきた情報通信産業を追加し、「産業省」を設置する。また、国土開発を一体的に処理するためとして建設省、国土庁、北海道・沖縄開発庁などを統合し「国土開発省」を設置するという。この国土開発省には、十兆円の公共事業予算のうち七兆円が集中することになる。
まさに、多国籍大企業が冷戦後の「大競争時代」を勝ち抜くために、資金、インフラ整備、技術など各方面でこれを支援する、効率的な行政機構の再編成である。
さらに、数々の官僚の不祥事や、大銀行、証券の不正事件の発覚など政官財の癒着構造が暴露される中で、一度は与党三党合意となった大蔵省の財政・金融の分離は、結局見送られ、大蔵省の巨大な権限は引き続き残された。
一方、大企業に必要でない機構は大胆に解体または統合されようとしている。中間報告最大の目玉は、郵政三事業を管理する郵政省の解体と簡易保険の民営化、郵便貯金の民営化への条件整備である。民営化で官業特典は廃止され、金融ビッグバンを控えた大銀行には膨大な個人資産の市場が提供される。農水省は「国土保全省」に統合され、農産物の価格維持や農林水産業の保護・育成など重要な機能が国土保全の一部におとしめられる。また大失業時代の到来の中で労働省が「雇用福祉省」に統合される。今日までも十分でなかった労働者の雇用と権利保護は、これで一層軽視されることとなる。
第三の柱「企画・立案機能と実施機能の分離」とは、垂直的減量(アウトソーシング)ともいわれている。要するに官庁外部組織への現業部門の追い出しであり、国営企業などの切り捨て、分割、民営化をねらったものである。新たに導入される独立行政法人(エージェンシー)は、その受け皿となるものである。独立行政法人の労働者の身分はこれから検討されることとなっているが、この制度が省庁の執行部門を民営化するための経過的な措置であるため、結局は現業部門の労働者から国家公務員の身分をはく奪することになり、実質的な公務員労働者への大合理化、結果として公的サービスの切り捨てにつながることは明らかである。
労働者は改革政治打ち破る先頭に
こうした中間報告に対して各方面から異論が出され、抵抗が始まっている。九月十七日発表の日経新聞世論調査によれば、郵政三事業については郵便、郵便貯金、簡易保険のいずれも民営化反対が賛成を倍近く上回り、過半数を占めた。
全逓、全郵政、全林野、全印刷、日本林業、全造幣などの労組で構成する連合官公部門国営企業部会は九月三日、「『行革会議』中間報告に異議あり!緊急抗議集会」を開催、郵政三事業、国有林、印刷・造幣事業の分割や民営化に強く反対し、「闘争を開始する」ことを宣言した。
集会では「四現業は、国民の求める公共サービスや公的機能を支える不可欠な事業を担っており、国営形態を基本とすべきである」とのアピールを採択。今回の中間報告について「国民が行政サービスの低下に耐えなければならないとの理解」を前提とした「根拠も示さぬ強引な論理」と批判し、「四現業に働く三十万人の働くものの存在、一人ひとりの雇用と労働条件、家族を含めたその生活をどう考えているのでしょうか」と国民に訴えている。
このような、直接犠牲を受ける公務員労働者の抵抗は当然であり、この闘いはまた、多くの国民の利益にもかなうものである。
行政の効率化など、さまざまに理由づけされても、行政改革の真のねらいは、民間に移せるものはできるだけ民間に移し、地方に移すものは移し、国際化時代に対応する安上がりで、しかも強力な中央政府の実現である。こうして国家機関のスリム化が進めば、国民生活へのサービスの切り捨て、国民犠牲が押しつけられるからである。
しかし、政府が行政改革として進めようとしている戦後形成されたさまざまな規制の撤廃や行政システムの急速な転換は、支配層内部にも深刻な矛盾を拡大せざるを得ない。すでに、郵政三事業の見直しについて「全国特定郵便局長会」などのような長く自民党の支持基盤となってきた組織も、反対の態度を明らかにし、政府への働きかけを強めている。これは、闘う側からみれば、政府の進める改革政治に反対する戦線の拡大であり、有利な条件である。
九月十八日にも電器商を営む商業者二千人が大店法規制緩和反対の「総決起大会」を開き、「(大店法規制緩和反対で)今は提言や決議を採択することでなく、行動することこそがもっとも大事だ」と全国に檄を飛ばしている。各所、各層で闘いは拡大し、橋本政府の改革政治は、内外に敵を拡大させている。
労働者階級は、「六つの改革」に反対し、国民各層との連携を強化し、その闘いを発展させるため、指導的役割を果たさなければならない。
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