970915 解説


アジアに敵対する危険な道

ガイドライン見直しとは(上)


米軍作戦へ総動員態勢

 日米両国政府は九月二十四日に、日米外務・防衛閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)を行い、「日米防衛協力の指針(ガイドライン)」見直しの最終報告を行う。これによってわが国は、これまで以上に米軍に協力を強いられ、アジアとりわけ中国、朝鮮と敵対する方向に進もうとしている。これは、アジアとの共生で繁栄と平和を実現するわが国の進むべき道と真っ向から対立する。また、有事法制や改憲問題も浮上し、国土、国民全体が日米共同の軍事行動に動員させられることになるのである。今回のガイドライン見直しの一つの重大な特徴は、周辺事態における「避難民の輸送、周辺海域における米兵の捜査・救難や米軍への協力」が四十項にもおよび、具体的に列記され。政府、自衛隊、地方自治体および空港、港湾や運輸関係など民間を含めて、国をあげての後方支援態勢をつくろうとするところにある。ガイドライン見直しによって空港・港湾などがどのような状態になるのか、全土の動員体制がいかに危険なものであるか関係団体の声を交えて以下みてみる。

空港

 明らかになっている要求リストによれば、米軍は新千歳、関西、福岡、長崎などの各民間空港の使用を要求している。米軍による民間空港使用となれば、空港は軍事基地として標的にされることだけでなくニアミスなどの危険性も高くなる。

 パイロットなどが参加する航空労組連絡会は次のような声明を出している。

 「ガイドライン見直しは、民間航空の機材や施設、労働者、空域や航空路などの、軍事行動への協力が優先的に要求されることを意味しています。民間航空事業は、軍事目的に適用しないことが、国際条約と航空法の大前提となっているのであり、軍事行動への協力が強要されるなら、民間航空の安全性も公共性も成り立たないばかりか、航空労働者まで戦闘行動の一員とみなされ、攻撃目標にされる危険性さえある」と指摘し、ガイドライン見直し反対を表明している。

 また、親泊康晴・那覇市長は、民間と自衛隊が共用する那覇空港について、「今までに何度となく、民間機と自衛隊機のニアミスがあり、県民に不安を与えてきた。さらに米軍機が加わるようなことになれば、危険度が一段と増すことになる」と指摘している。

港湾

 米軍は、小樽、函館、苫小牧、新潟、神戸、博多などの港の使用を要求している。港湾は軍事的に欠かせない施設であることは、一九五〇年の朝鮮戦争での実例で明らかである。 米軍に接収された港湾では連日の軍事物資の輸送に追い回され、通常の民生物資の輸送に支障をきたした。

 また港湾も重要な軍事施設として、戦争状態になれば真っ先に標的にされる施設である。

 港湾荷役をになう全日本港湾労組の河本末吉委員長は、「民間空港や港湾の使用は絶対認められない。有事の際に一番にねらわれるのは港である。有事には第二次大戦のように、港や海運を優先的に動かすことが必要とされる。中国侵略の頃から港湾が国の統制・管理下におかれるようになった。」と述べ、ガイドライン見直しに反対している。

 同労組は、九月の定期大会で「また、ガイドラインの見直しでは、民間空港や港湾の強制使用、物資の提供や輸送、施設の使用期間延長、訓練・演習地域の提供など米軍の活動に対する後方支援が含まれている。加えて、米軍に民間空港・港湾を円滑に提供するため、地方自治体や民間が有する能力を適切に活用することなどが明記され、さらに自治体からの協力を得るための法的措置や民間業者の役務提供を推進するために罰則などの強制措置としての有事法制を検討している」との特別決議を行い、闘い強化を決定している。

 また、米海軍のタンカーが広島県沼隅町の常石造船所に九三年から常時停泊していることが十一日に確認された。タンカーは米海軍軍事海輸軍団所属の三隻である。米軍は、安保条約の事前協議をも無視して、補給艦船を日本の民間施設に配備している。こうして全土の基地化の実態は進んでいる。

医療

 一九九〇年の湾岸戦争や九二年のカンボジアPKOなどで医療関係者が派遣されたことは記憶に新しい。 また朝鮮戦争当時、福岡市の米軍キャンプ内に「国連軍病院」が設置され、九州各県から日赤所属の看護婦が行き先も告げられず集められた。数カ月間、強制的に看護に従事させられた記録もある。

 これらは、医療関係者は軍事行動になればただちに動員されることを示している。

自治体

 自治労沖縄県本部狩俣吉正委員長は、「自治労県本部としては、ガイドライン見直しで自治体病院、港湾など直接かかわる問題がある。該当する単組などに問題を整理するように指示している」と述べている。自治体は港湾、輸送など直接、間接に関係する分野が多く、自治体労働者は業務命令で戦争にかりだされることになる。自治体労働者の闘いの真価が問われている。


・ガイドラインとは、指針のことで、政府は「防衛協力のマニュアル」とも説明している。
・周辺事態とは、「日本周辺地域における事態で日本の平和と安全に重要な影響を与える場合」のこと。しかし、周辺という地域も不明確であり、重大な影響とは具体的に何をさすのかも不明。つまり米国が平和と安全に影響があると判断すれば、たとえ日本が攻撃されなくとも日米が軍事行動を行うことになる。


これで日本全土を米軍戦闘に動員     

ガイドライン見直し中間とりまとめから抜粋(97年6月8日)

【運用面における日米協力】
・警戒監視…情報交換
・機雷除去…日本領域、公海上における機雷除去ならびに情報交換
・海・空域調整…海上運航調整、航空管制および空域調整
【米軍の活動に対する日本の支援】
・施設の提供…自衛隊施設および民間港湾、空港の使用。自衛隊施設および民間港湾、空港の運用時間の延長。米軍の訓練、演習場の提供。米軍施設内での暫定建設物の建設。
・補給…自衛隊施設および民間港湾・空港での米軍への物資・燃料の提供。
・輸送…人員、物資などの国内での輸送。公海上の米艦に対する輸送。
・整備…米艦船、航空機、車両の修理、整備。修理部品、資材の提供。
・医療…米軍の傷病者の治療、医薬品などの提供。
・警備…米軍施設の警備、周辺での警備監視。治安に関する情報の提供。
・通信…日米の関係機関のための周波数ならびに機材の提供。
・その他…米艦船の出入港への支援、積み下ろし作業への協力。

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