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国民総犠牲、これが「改革」の正体
強まる各界各層の抵抗 


 橋本首相は昨年の総選挙以来、「改革」を「火だるまの決意」で行うと高言、その推進に必死となってきた。冷戦後の大競争時代に、多国籍大企業の輸出利益を守るため、米国などの圧力を受け入れ、また大企業の国内コスト削減の要求に応じて、大幅な国内再編=「改革」に迫られているのである。規制緩和、国際化などは、そのための手段にすぎない。しかしこれは同時に、戦後形成されてきた戦略的輸出産業を育成するためのさまざまなシステムの変更や輸入代替策としての国内産業保護のための諸規制の撤廃など、多くの痛みを伴うことになる。こうして支配層は戦後、「保護」することでその政治的支持基盤としてきた諸業界を、急速に切り捨てることとなった。切り捨てられる業者たちは生死をかけて反抗に立ち上がっている。支配層は「改革」によって、自らの内部に敵を次々とつくっているのである。かれらは薄氷を踏んでいる。「改革」の本質をばくろして連携して闘えば、この局面は政治の転換をめざして闘う者にとって有利である。橋本首相が掲げた「改革」とは、国民にとって何であったのか、この時点でまとめてみた。


財政構造  予算削減で国民総犠牲へ

 財政構造改革会議(議長・橋本首相)は六月三日、最終報告を提出した。その内容は、二〇〇三年度までに財政赤字を対国内総生産(GDP)比三%以内にする財政健全化目標の実現をめざすとしている。九八年度から三年間は集中改革期間として、歳出の伸び率マイナスをめざす。そして「いっさいの聖域なし」として社会保障、教育、中小企業対策、農業など国民の営業と生活分野について際限なく削減する計画である。だが、防衛費や大企業のための公共事業経費は温存を図っている。
 政府は、この趣旨を九八年度概算要求基準に反映させつつある。六月十六日にその実現のための財政再建法案の骨子を発表し、秋の臨時国会での成立をねらっている。他方、歳入面では消費税を引き上げ、特別減税も廃止した。
 財政構造改革は、福祉、教育、地方自治体への補助金などの削減で、諸分野での国民総犠牲をいっそう進めるものである。

(経済構造)大企業のための規制緩和

 政府は五月十六日、経済構造改革の「行動計画」を策定。物流、エネルギー、情報通信などでの規制緩和を進め、二〇〇一年までに「国際水準」並みのコストに引き下げようというものである。さらに政府の行政改革委員会の規制緩和小委員会は六月二十五日、規制緩和の新たな対象として二十項目の「論点」を公表した(別表)。裁量労働制拡大など労働法制の規制緩和も計画されている。

 すでに先の国会で、持ち株会社の解禁、ストックオプション(一定価格で自社株を買える制度)、女性保護規定の撤廃が実現している。また大店法、港湾運送の規制緩和の議論も進められている。

 この課題は多数の業種の存亡にかかわる重大事となっているため、各業界からは反対が噴出。例えば、日本商工会議所、日本商店街振興組合連合会、日本港運協会、書店商業組合連合会、交通運輸関係労組をはじめとする労働組合の反対運動が高まりつつある。

(金融システム)中小つぶし、大手は巨大化

 大蔵省の金融制度調査会など三審議会が六月十三日、金融改革について答申などを提出した。それは、二〇〇一年の「日本版ビッグバン(金融大改革)」完了をめざして、金融持ち株会社の解禁、銀行・証券・保険業態の規制撤廃を図るというものである。この方向にそって、すでに先の国会で外国為替法、日銀法の改正案、金融監督庁設置法が成立した。

 この改革は、金融業における弱肉強食の世界の実現であり、競争力の強い外国銀行や大手金融機関はいっそう有利な条件で金融全般にわたって巨大化し、中小を淘汰(とうた)していくものである。中小金融機関の閉鎖は、それを利用してきた地域の中小零細商工業者の倒産の危機を引き起こすだろう。

(行政改革)安上がりの政府めざす

 行政改革会議(会長・橋本首相)は五月一日、行革の「中間整理」をまとめた。中央省庁再編や内閣機能の強化(危機管理体制整備)を打ち出している。省庁再編では、国防省新設、執行部門の民営化や外庁化(エージェンシー)案などが出されている。内閣機能の強化をめざす一方、安上がりの政府をめざして中央省庁をリストラし、国民サービスを切り捨てようという魂胆だ。また自治省の強力な指導のもとで、地方自治体のリストラはすでに急速に進んでおり、この面での地域住民、官公労働者の抵抗も強まっている。

(社会保障)きりない国民負担増へ

 先の国会では、本人の二割負担や老人医療費引き上げなど医療保険制度が改悪された。保育料引き上げにつながる児童福祉法改悪案も成立。さらに厚生省は七月二十三日、本人の負担三割、高齢者負担の定率制導入など大幅な医療保険制度の改悪案をまとめた。九八年度予算でも社会保障費の大幅抑制がうたわれている。年金も、給付削減などが年金審議会で議論されている。

 秋の国会では、国民負担を増加させ、介護の保障もない公的介護保険法案成立が計画されている。この問題では、引き続き医師会、社会福祉団体などの根強い反対があり、広範
な国民の怒りを積もらせるものとなっている。

(教育)いっそう差別化進める

 中央教育審議会(文相の諮問機関)は六月二十六日、一部の「飛び入学」制度や選択的「中高一貫教育」を認める答申を提出した。他方で、財政構造改革の名のもとに、教育予算削減で教職員の定数削減、国立学校の民営化、私学助成の抑制などが議論されている。

 自民党の文教部会などは、教育基本法には「国を愛する心」の規定がないと、基本法改悪をも議論している。今秋、自民党は教育改革案をまとめるという。日教組は、中教審答申を「一部のできる子に合わせたもの」と批判している。


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