さる五月六日、新進党の西村真悟衆院議員ら数名が、尖閣諸島の魚釣島に上陸し日章旗をたてるなどした。 日本の国会議員が同諸島に上陸するのは初めてである。西村は「上陸の目的は尖閣諸島の現状や領海の警備実態の視察で、日本国の領土を国会議員が視察することは当然のこと」といなおっている。
また、同諸島には、先月二十七日にも沖縄県石垣市議と産経新聞記者が上陸している。昨年七月には日本の右翼団体が北小島に灯台を建て、中国、台湾などで抗議行動が行われた。
この事態に、中国外務省の沈国放・報道局長は六日「日本が深刻に教訓をくみ取り、有効な措置を取ることを要求する」と述べた。沈報道局長は橋本首相らが「遺憾の意」を表明したことについて「留意する」としたが、「単なる遺憾の意の表明では足りない。日本政府はマイナスの影響を取り除くよう具体的な行動を取るべきだ」と指摘した。
香港、台湾でも抗議の行動が民間団体などによって取り組まれている。
わが党は、尖閣諸島は日本の固有の領土であるとする立場を明確にしている。にもかかわらず、中国も領有権を主張するという、複雑な領土問題に対処するのには、一九七八年の日中平和友好条約調印にあたって合意された「長期棚上げ」で解決にあたるという原則を貫くべきだと主張してきた。
またわが党は、昨年、右翼団体が、挑発行為を行った時、「日中両国関係の友好的発展を阻害することで利益を得ようとする者がいれば、この局面を絶好の機会ととらえるにちがいない」(一九九六年十月五日 労働新聞社説)と指摘し「わが国政府が事態を甘くみてこの問題の処理を誤れば、日中両国、また両国人民の間には大きな不信感が広がり、日中関係を損なおう」(同)と警告した。そして、橋本政権に、「灯台」の撤去など事態が悪化しないための具体的措置を講じることを強く要求した。
一連の挑発が、尖閣諸島を日中間の緊張の火種として、いわば「時限爆弾の安全装置」を外しておこうという、日中の友好関係を破壊しようとするやからの策動と見ることができたからである。
しかし、橋本政権は、以降何らの具体的対処もとってこなかった。そればかりか、事実をねじ曲げる歴史認識発言や、歴史教科書に対する攻撃など反中国策動は後をたたず、中国脅威論がふりまかれた。日米防衛協力の指針(ガイドライン)の見直しでは、明確に中国を仮想敵として、日米軍事協力の具体化が進められようとしている。
今回の事態は、これらの延長上にあるものといわなければならない。
現職国会議員による、やくざな右翼団体ばりの挑発行動は、日中の友好関係に水をさし、両国人民に無用な対立と不信を作り出す、わが国の国益に反する行為である。当然、国会議員としての資格を問われてしかるべきである。
しかし、なによりも問われるのはわが国政府、橋本政権の態度である。橋本首相は、他人ごとのように「不快感を表明」して事足りるものではない。危険で無法な挑発を働いた関係者に明確な処分を下すと共に、事態の再発を防ぐ、具体的な措置を取らねばならない。
日中関係は、国交二十五周年にもかかわらず、最悪の事態が続いている。両国の心ある人びとの中で、この事態に対する憂慮も深まっている。 今こそ、日中共同声明と平和条約の精神を打ち固め、挑発や悪質な反中国の策動を打ち破る国民的な運動を拡大、強化させなければならない。
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