19961205(社説)

自主・平和・民主のための広範な国民連合が
第4回全国総会開催

転換期の時代を切り拓く壮大な国民的戦線へ


 「自主・平和・民主のための広範な国民連合」の第四回全国総会が十一月二十三日、二十四日の二日間、横浜市で開催された。
 総会には、北は北海道から南は沖縄まで全国二十を超える都道府県から代議員が出席した。第一部で本島等氏(前長崎市長)が「二十世紀の反省―人間の尊厳、沖縄、憲法、安保」と題して講演を行い、伏見康治代表世話人(元日本学術会議会長)の開会あいさつで議事に入った。葉山峻氏(衆議院議員、前藤沢市長)をはじめ、紀平悌子(日本婦人有権者同盟会長)、池田勇(消費税率の引き上げ中止を求める国民集会実行委員会事務局長)、上原幸雄(川崎沖縄県人会事務局長)氏ら各界からの来賓のあいさつが行われ、全国農業者農政運動組織協議会、田中利夫(全日本小売商団体連盟副理事長)、大倉電気争議団、衆参両院議員、神奈川県知事など自治体首長、議員らのメッセージが紹介された。
 加藤毅事務局長が総会議案を提案。一年間の全国各地での沖縄に連帯する闘いでの政治的組織的前進、激動する情勢を反映し、活発で真剣な報告、討論が行われた。槙枝元文代表世話人(元総評議長)の討論まとめの後、総会決議が満場の拍手で採択された。「阪神・淡路大震災被災者への公的支援による生活と住宅再建を求める特別決議」も採択。新役員体制が選出され、代表して福地曠昭代表世話人(沖縄人権協会理事長)が決意表明、最後に大槻勲子代表世話人(日本婦人有権者同盟副会長)が閉会あいさつを行った。
 内外の危機が深まるなか、小選挙区制度下での総選挙、国民生活への攻撃を使命にした第二次橋本政権の発足という重大な情勢を前に、広範な国民連合は活気と確信に満ちた総会を闘いとった。「転換期に時代を切り拓く」役割を果たそうと意思を固め、大きな成功をおさめた。
 われわれは全国総会の成功を心から祝うとともに、全国代表世話人をはじめ各地で国民連合を推進されている各界の皆さんに敬意を表し、いっそう共同して壮大な国民的戦線へと発展させるために誠心誠意努力することを誓うものである。

沖縄の全国化で重要な役割、経験
 広範な国民連合は、昨年九月の少女暴行事件直後から、いち早く沖縄県民の闘いに連帯する闘いに立ち上がり、以降、日本の進路に重大な影響を与える全国民的課題として精力的に取り組んできた。
 総会議案によれば、この一年、「安保・沖縄をテーマに十六都府県、大小五十三回の集会を組織したり、その一翼を担い」、「結成以来最大の広がりをもつ運動を展開することができた」という。この六月には沖縄で全国世話人会を開催、「沖縄アピール」を採択した。
 国民連合は、沖縄に連帯する闘いを党派を超えた広範な国民的共同闘争として発展させ、さらに全国化する上で、重要な役割を果たした。米軍基地の縮小・撤去を求める世論と国民運動の発展に貴重な貢献をした。さらに今日も継続的に取り組みつつ、この課題を「二十一世紀の日本の進路にかかわる長期の根本的な問題」と位置づけ、「日米基軸からアジアの共生へ」の転換の突破口として、沖縄の国際都市形成構想・基地返還アクションプログラムを支持する運動を推進している。
 こうした国民連合の役割は、沖縄県民を激励し、本土で闘う人びとにも知られるようになった。それは葉山氏をはじめ来賓の方々が一様に、沖縄連帯で果たした国民連合の役割を賞賛し、川崎沖縄県人会をはじめ数県の県人会の皆さんが総会に参加したことに表れている。
 討論の中で代議員は各県での取り組みの経験を述べたが、各地でこれほど急速に共同行動を組織し得たのは、情勢があったことと併せ、自主・平和・民主の方向をもち、国民の連合した力で政治を変えるという国民連合の考え方、組織があったからだとの確信に満ちたものだった。
 また国民連合は、こうした闘いの中で、組織的にも前進した。三重、熊本、佐賀で県組織が新たに結成され、兵庫で準備会が結成された。すでに結成された福岡では福岡県教組など影響力のある労働組合が機関決定で参加、その他の県でも地区組織確立の努力が始まった。
 この一年間の闘いの経験、実績は、単に国民連合内部の自信、団結を促しただけでなく、初歩的とはいえ闘おうとする広範な人びとに国民連合がめざす政治変革の事業への共感、力強さと確かな展望を感じさせるものである。

財界・橋本政権と対抗する方針採択
 総会の討論を経て採択された決議は、当面する情勢について「日米安保体制、日米基軸路線」の、「日本の政治、経済、外交のすべてがゆきづまりを見せ、国民は政治と不信を強めて」いると述べている。そして、「自主・平和・民主の進路をいっそう鮮明にして、広範な国民各層を連合させることが、ますます重要になってきた」と指摘している。
 この認識に立って、(1)日米基軸を転換し、アジアの共生へ(2)沖縄と全国の米軍基地の縮小・撤去(3)消費税率引き上げ、社会保障切り下げに反対し、国民生活を守るとの三点を運動課題の柱として確認した。
 さらに国民運動を発展させ、国政や県政にインパクトを与えるために、国民各層の連合を促進、拡大する組織づくりを重視し、「今年度の大きな課題」として位置づけた。
 国民連合が採択した新たな方針は、まさに時宜にかなったものである。この時期、この方針が、闘いを余儀なくされている広範な国民各界に伝えられ、全国各地で組織だって実践されるなら、客観情勢に影響を与え、国民連合はこの一年を上回る役割を果たすにちがいない。
 総選挙の結果成立した第二次橋本政権は、行政、金融システム、経済構造、財政構造、社会保障の「五大改革」を掲げ、「火だるまの決意」で取り組むと宣言した。厚生省の不祥事なども利用し、「行政改革は国民的課題」と国民世論をあおっているが、実態はひとにぎりの多国籍企業・財界の利益ための「改革」である。国際情勢の多極化の進展、「大競争時代」の市場争奪戦の激化の中で、ゆきづまった財界・支配層がこれまでのシステムの「改革」を余儀なくされ、焦っているのである。消費税増税、介護保険の導入や医療保険改悪など社会保障の切り下げ、各種の規制緩和など、「痛みを伴う」国民への犠牲で乗り切ろうと攻撃を準備している。
 また外交、安全保障問題では、普天間基地「返還」の代替として海上へリポート基地を沖縄に押しつけ、「区切り」をつけようとしている。ACSA(物品役務相互提供協定)につづき、集団的自衛権に踏み込むガイドラインの見直し、有事法制など、日米安保再定義にもとづく日米軍事協力強化を急ぐ魂胆である。安保再定義路線は、中国、アジアに警戒心を高めさせ、日中関係は最悪になっている。「米中時代」といわれる新事態にもかかわらず、自主性のない外交が続けられようとしている。アジアの批判は必至である。
 二十一世紀を目前にわが国は重大な情勢に直面している。こうしたとき、国民連合の自主・平和・民主の進路と採択した運動方針は、もう一つの日本の生き方を示すものである。また、橋本政権の内外政治で犠牲を受け、闘いを求める国民各層にとって、闘いの方向を示す拠り所になるに違いない。
 ほとんどの政党、また労働組合の中央も、橋本政権の「改革」に何一つ異議を唱えず、まるで戦前の大政翼賛会のように追随している。国民の中で政治不信は高まり、永田町への期待は急速にうすれている。政府の攻撃が強まるなか、投票と議会政治に頼れなくなっている労働者と国民は自ら立ち上がって闘わざるを得ない。活路と闘いの方向を求める国民の声はさらに高まろう。
 大衆の要求とエネルギーに直接依拠し、国民各層の連合した力で政治を変える、まさに広範な国民連合が力を発揮すべきときである。またそれが可能な情勢である。
 決議の冒頭に「転換期に時代を切り拓くことができるのは、長期的な広い視野にたった正しい政治の方向、それを担う人びとの確信と行動です」と述べている。第四回総会の方針を現実の力に変えることができるなら、国民連合は国民の希望となろう。

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