19961005

総選挙におけるわが党の態度について

日本労働党中央委員会政治局


(1)来るべき総選挙はまさに歴史的転換期、二十一世紀の日本の生き方をめぐる争いという点でも、したがってまた政治再編がらみでも、本来、きわめて重要な選挙である。わが党も候補者を立て、安保条約の破棄、アジアの一員として平和に生きる国の進路の旗を高く掲げ、国民の営業と生活を守るために断固として闘わねばならない。
 だが、激動期にわが党のような革命的政党の進出を阻止するため、支配層とその手先どもは、「政治改革」と称して選挙制度を改悪、差別的な小選挙区比例代表並立制を導入した。
 こうした条件下では、わが党は目前の情勢への対処とあわせ長期の戦略的利益を考慮し、もっとも有利な地点で闘わねばならない。断固として闘うには力が必要だからである。こうした観点から、わが党は今回の総選挙で独自候補を立てない。
 また、今回はどの党かと連携できる状況にもなく、どの政党も支持しない。
 したがってわが党は、選挙期間中も次の局面で勝利的に闘える準備をするために全力をあげる。

(2)今回の総選挙は、二十一世紀を目前にする冷戦崩壊後の激動する情勢のなか、わが国の戦後政治、対米従属下の内外政治、経済が行き詰まり、転換がさし迫った要請となっている時期に行われる。
 前回の総選挙は、自民党の単独支配を崩壊させ、「連立政権時代」を登場させたが、その背景には多国籍化した大企業・財界が冷戦崩壊後の市場争奪戦で勝ち抜くために、新たな政治システムを構築するという画策があった。
 細川政権から始まって、羽田、村山、橋本にいたる連立政権は、この三年余、財界のための内外政治、すなわち自主性のない旧態依然の対米従属外交と国内市場の開放、規制緩和の政治を続けてきた。「政治改革」と称して差別的な小選挙区制が導入された。「経済構造改革」と言って、大店法の規制緩和などアメリカ企業と大企業の参入のために各方面で規制緩和が進められ、零細商店は次々とつぶされた。コメの市場開放も進められ、産業の空洞化と相まって農村社会は衰退した。大企業は手前勝手に急テンポで海外に生産を移し、国内産業の空洞化、中小企業の倒産と失業者がいっきょに増大した。バブル経済崩壊による長期不況、金融不安を打開するためにとの口実で、対米協調と大銀行・大企業救済の超低金利政策がとられ、数十兆円もの国家財政が「景気対策」に投入、六千億余円もの血税が銀行救済に使われた。国民には先進国一の財政赤字が残された。
 にもかかわらず、わが国経済は金融不安を抱えたまま長期不況から脱しきれず、新たに財政危機を抱え込んだ。世界経済の撹乱要因となった貿易黒字、対外不均衡は是正されず、大競争時代に当面して対米従属下の輸出立国の経済システムそのものの行き詰まりは誰の目にも明らかである。
 また、外交、安全保障面でも行き詰まりは鮮明となった。戦後五十年もの長い間、米軍基地の支配下に置かれてきた沖縄の実態が明らかになり、沖縄県民の闘いの一撃で情勢は一変、日米安保体制は揺らぎ始めた。戦後五十年を過ぎたのに、侵略戦争と植民地支配の歴史認識と国家責任を明確にできず、閣僚は妄言を繰り返し、いまだにアジア諸国の不信をかっている。
 しかも、アメリカの東アジア戦略に追随して日米安保共同宣言に調印、軍事協力強化の道に踏み込み、アジア諸国、とりわけ中国、朝鮮の警戒心を高めた。
 したがって、この三年余の連立政権を構成した自民党はもちろん、新進党も、社民党も、さきがけも、その政策が国民大多数の要求を反映しておらず、自主的で平和な国の進路を切り開こうとしなかったことは明白である。

(3)わが国が当面しているこうした内外情勢、政局での総選挙の意義、したがって総選挙の真の争点はなにか。国民はどのような内外政治を求めているか。
 まず第一に争われねばならないのは、わが国の進路、外交の問題である。とりわけ戦後五十年以上も続いてきた従属的な日米関係を根本的に見直し、冷戦後もアメリカの東アジア戦略に追随、沖縄と本土の米軍基地を固定化し、軍事分担を引き受けようとする日米安保共同宣言の危険な道を阻止しなければならない。安保条約を破棄し、独立・自主、興隆するアジアの一員として生き、覇権主義に反対し国際社会の民主主義を追求する国の進路を切り開かなければならない。行き詰まった日本経済、国民生活も、日米関係の根本的打開なしに、真の解決はありえない。
 ところが橋本政権は、日米安保共同宣言の道に踏み込み、その道をつき進んでいる。沖縄県民の闘い、とくに県民投票での「基地縮小、地位協定の見直し」の要求に対しては、基地たらい回しの「普天間返還」、「経済振興策」の術策で、ひきつづき米軍基地を固定化しようとしている。「極東有事」に対処するためと朝鮮民主主義人民共和国、中国をにらんだ日米軍事協力強化を進めている。
 また、橋本首相などの靖国参拝、梶山官房長官の朝鮮敵視発言などアジア諸国の批判をかきたてる言動を続けている。台湾近海への米第七艦隊の出動での追随に続き、最近の尖閣諸島問題での憂慮すべき事態の放置、そうした状況下で自民党は選挙公約にあえて竹島問題、尖閣諸島の領土問題を掲げた。
 また、わが国企業はすでにアジア諸国に深く展開し、他方でASEM(アジア欧州首脳会議)開催などアジアの発展は明確になっているにもかかわらず、EAEC(東アジア経済協議体)構想の要求には、アメリカの顔色ばかりうかがい後込みしている。
 アメリカの強盗まがいのイラク攻撃には、沖縄と本土の米軍基地を拠点とする部隊が加わり、橋本政権は国際的批判が高まるなか、アメリカの蛮行をいの一番に支持した。
 こうした対米追随の道では、決して他国の信頼は得られない。二十一世紀に明るい日本の進路を切り開くためには、安保条約を破棄し、独立・自主を確立、アジアの一員として、ともに繁栄する道を歩まなければならない。
 第二に、こうした従属的な外交と併せ、大企業・財界本位の内政、経済のあり方がバブルを引き起こし、またバブル崩壊後の不況を長びかせ、わが国経済を行き詰まらせている。総選挙では、経済政策、内政問題でも大企業本位の政治を大転換し、国民大多数の利益を第一とする政策を対置して争わねばならない。
 昨年の一ドル=八〇円台を突破した超円高は緩和されているものの、対外不均衡問題は基本的に変わっておらず、日米経済摩擦は半導体、保険、航空、フィルムと続いている。アメリカの際限ない市場開放要求に応じ、橋本政権は「高コスト構造の是正」と称していっそうの規制緩和を進めようとしている。国内産業の空洞化による犠牲は放置され、新産業育成の支援策だけが進められている。労働者には新雇用システムが押しつけられ、雇用の流動化、労働条件の悪化、大失業時代が到来している。大多数の農民には役立たず、かえって零落させる「農業基本法」が準備されている。
 これらすべては、米・日巨大企業間の争奪ゲームの帳尻、不均衡問題を、わが国民の犠牲で打開しようとするものである。
 さらにその上に、財政危機をあおって消費税の五%への増税を押しつけ、社会保障・医療・教育を切り捨てる暴挙に出ている。
 橋本政権が掲げているこうした「経済構造改革」、「財政構造改革」なるものは、わが国大企業が大競争時代に勝ち抜くための、大企業支援の国内体制の整備以外のなにものでもない。それは、自国の国民だけでなく、他国の利益をも踏み台にして生き延びようとする悪あがきである。
 とりわけ今回の総選挙では、自民党をはじめとしてほとんどすべての政党がいっせいに「行政改革」の旗を掲げ、われこそはほんものと競い合っている。それは薬害エイズ問題、住専問題、官官接待などでの国民の行政不信に応えるようなポーズをとっているが、もっとも本質的なことは、国際競争に打ち勝つため、企業のコストを減らそうとする大企業の「小さな政府」の要求に応えることである。
 わが国が当面している内政問題は、そのようなやり方で解決できる状況にはないし、またそれは外政との整合性もなければならない。そのためには、国民生活を飛躍的に引き上げることと結びつけて、徹底した内需拡大政策をとらなければならない。こうした内需、市場の拡大なしで規制緩和を強行することは、大企業にとっては利益になっても、真の打開策とはならない。
 行財政改革も、この流れで進めなければならない。財政危機の打開は、財政のおかげで巨額の利益をあげてきた大銀行・大企業の負担で行うべきで、軍事費は大幅に削るべきである。それはアジアとの友好のためにも、必要なことである。
 消費税は廃止しなければならない。行政改革はまず第一に、高級官僚を大幅に減らすべきである。高級官僚は、「高給」官僚だからである。地方に権限と財政を大幅に移し、それを前提に行政改革を進めなければならない。こうした大胆な、抜本的な転換なしに、内政は切り抜けられず、対外関係との整合性も実現できない。
 今回の総選挙では、こうした問題が争われなければならない。
 だが、野党はどうか。新進党は急きょ「消費税率の今世紀中の三%据え置き」を打ち出したが、「大胆な行政改革」「規制撤廃の断行」「日米基軸」など自民党と基本的に変わるところはない。
 自民党、新進党の二つの保守党で吸収できない国民の不満の「安全な受け皿」として、にわかに仕立てられた民主党は、「市民が主役」などと言って票をかすめ取ろうとしている。だが、消費税五%容認、規制緩和推進の政策は、決して国民大多数の要求を代弁していない。このような民主党を、何の政策合意もなしに「支援」することを決めた一部労組幹部の役割は犯罪的である。
 「国民の声が生きる政治」を掲げる共産党は、大衆の不満をそのまま政策に掲げているが、これは目前の票集めのためであり、この党にも根本的な国のあり方の提起はない。

(4)九三年夏の自民党単独政権の崩壊から始まった政治再編は、事実が示しているように必ずしも財界が望んだ二大政党制に向かって進んではいない。彼らの予想以上に内外の危機が深く、変化が激しくて、計算が狂っているのである。
 国民各層のなかに高まっている不満、政治不信、また沖縄県民の闘い、アジア諸国の興隆と多極化の進展。冷静に見るなら、闘おうとする者にとって確信の持てる情勢である。
 わが党は労働者階級、国民各層の要求とエネルギーに依拠して闘い、力を蓄え、敵が設けた障害を打ち破って、もっとも有利な状況の中で打って出るだろう。われわれは必ず勝利する。

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