19960915(社説)

国家財政の危機を地方に押しつけるな


  国家財政の危機を背景に、政府、財界の「財政構造改革」と称する国民に犠牲を押しつける攻撃が強まっている。消費税増税、社会保障の切り捨てと並んで、地方自治体に犠牲を転嫁する攻撃が強まっている。
 財政審議会の「財政構造改革白書」は、まるで国家財政の危機を地方財政の負担で乗り切るのが当然であるかのような数字を並べている。地方財政の規模は九六年度で約八十五兆円、国の一般会計の約一・一倍である。地方財政の地方債残高は百兆円、公債依存度は一五・二%、公債費比率は一〇・四%に対して、国は二百四十兆円、二八・〇%、二一・八%とはるかにきびしい。
 そして、行財政改革を徹底的に押し進め、財源の重点的・効率的な配分を行い、歳出をきびしく抑制すべきと訴えている。
 ?定員について人員配置の効率化をはかり抑制する、?給与水準の適正化を図る、?公共投資計画や経済対策で伸びてきた投資的経費に占める単独事業についての見直し、?地方債と地方交付税を組み合わせた単独事業も見直す、?上乗せ福祉の慎重検討をはじめ節減合理化をはかる。
 バブル崩壊後から、税収が国も地方もきびしくなった。九四年度以降、大幅な財源不足が生じたため、地方債の増発及び交付税特別会計での借入金などの地方財政対策が講じられた。これも今後は、いっそう地方の負担で行えというのである。
 こうした提言に沿って来年の「地方財政計画」が策定されようとしている。その影響が八五年の補助金一律カット時より深刻になるのは必至である。
 第一、国民のくらしが自己責任、自助努力というもっともらしいかけ声でばっさり切り捨てられよう。
 ?医療保険では、健康保険の本人負担を増やす、老人の入院室料や入院期間中の食事代を自己負担にしたり定額制を定率制にする、?年金では支給年齢をさらに引き上げる、?その他、義務教育費国庫負担金の見直し、教科書の有償化、保育制度では措置制度を解体など。
 第二は、地方自治体は機関委任事務はそのまま、権限も財源もないもとでさらなる「内部努力」が要求され、合理化が強要される。地方自治体の格差はいっそう深刻になる。
 第三は、地方自治体ではすでに新たな行革大綱の策定、推進を取り組んでいるが、これに拍車をかける。
 事務事業の見直し、行政組織の見直し、定員管理および給与の適正化等を押し進め、保育所、給食等の民間委託方式の導入、人員と経費の合理化が促進されよう。
 これらに加えて、消費税五%の引き上げに伴う「地方消費税」の創設は、全国で一千五百六十億円の減収となるのだ!
 新潟県巻町の住民、沖縄県民が誤った国策に首長を先頭にして闘ったように、国の財政危機の地方への転嫁に反対し、全国の自治体、議会、住民が団結して立ち上がることが求められている。

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