19960905

最高裁の「代理署名」不当判決糾弾!

沖縄の未来は全国の闘いにかかっている


 沖縄米軍用地の強制使用をめぐり、首相が大田知事の代理署名を求め訴えていた上告審で、八月二十八日最高裁は、大田知事の上告を棄却した。裁判のゆくえには、沖縄県民はもとより全国民が注目をしていた。
 最高裁は、沖縄の痛みについての実質審理は何ひとつ行わず、県民の「基地の重圧からの脱却を」という切実な願いを無視した、極めて不当な政治的判決を下した。
 大田知事の「米軍特措法は、平和的生存権を侵害し憲法違反」との主張にも、「土地の強制使用は安保条約の義務上必要で合理的な行為」と断じた。
 判決は、予想されたこととはいえ、大田知事が「今の日本の民主政治の実情をそのまま示した」と指摘したように、お粗末なものであった。まさに、ここでいわれている民主主義の実情は、県民、国民の生命、生活よりも米国の戦略を重視する『民主主義』、憲法よりも安保を重視する『民主主義』に他ならないことをはしなくも暴露した。

沖縄の闘いの沈静化狙った判決
 この判決の政治的狙いは何だったのか。
 昨年の・県民総決起大会以来、沖縄県民の「基地縮小、日米地位協定の見直し」の闘いは、六月の県議選で与野党逆転を実現、大田知事与党の多数形成から九月八日の県民投票へと発展した。情勢を一変させた沖縄の闘いは、安保を揺るがし、ますます燃えさかろうとしている。
 政府は、沖縄県民の闘いの高揚を恐れ、その沈静化を図りたかった。最高裁判決の最大の狙いはこれであった。しかも、その延長として、基地の本土移転に反対する当該自治体の動きをはじめ、沖縄に連帯する闘いがさらに日本全土に広がることを恐れ、司法を動員して燃える炎に水を差すことであった。
 具体的には、大田知事の基地強制使用に対する拒否姿勢を軟化させ、基地強制使用の次の段階である「公告・縦覧」の代行に応じさせることである。
 来年五月には、嘉手納、普天間基地など十一の米軍施設の強制使用期限が切れる。約三千人の地主は契約を拒否、大田知事も土地の公告・縦覧を拒否している。沖縄県収用委員会の審議に要する日数などから、期限切れが確実視されている。その場合、楚辺通信所と同様に米軍による不法占拠となれば、政府は沖縄県民、国民の批判にさらされるのは確実で、政府にとっては難問を抱えたままになるからである。
 そして予定どおり判決は下された。
 橋本首相は、「迅速かつ適切な審理」と判決を持ち上げ、この判決をテコにして、また沖縄振興策をちらつかせながら県民の闘いを打ち砕こうとの姿勢を強めている。
 だが、判決と橋本政権の策動は、かえって沖縄県民の怒りを増幅させ、闘いの火に油を注ぐ結果となろう。
 県内では「国側の論理を裏付けたにすぎず、憤りさえ覚える」(親泊康晴那覇市長)、「司法が政治に屈服。裁判官は生涯重い荷物を背負い続けるだろう」(桃原正賢宜野湾市長)、「県民は切って捨てられた。立ち上がるしかない」(山内徳信読谷村長)など、各市町村長がいっせいに判決への怒りを表明した。
 沖縄県民は、「自分たちの力で未来を切り開くしかない」との決意を新たにし、県民投票の成功に向け邁進(まいしん)している。
 中部地区県民大会、県主催のシンポジウム、那覇市主催の「県民投票推進大会」に続き、九月三日には自治体、労組、女性、学者、市民の手による県民大会が開かれた。翌四日には「全国基地問題緊急サミット」が那覇市で開かれる。
 県民の闘いは、強権を打ち破っていっそう力強く前進するであろう。

本土での闘いにかかっている
 大田知事が述べているように、「沖縄の未来は、本土の民主主義の力にかかって」いる。問われているのは、本土での闘いの広がりである。この局面ではこれが決定的な意味をもっているといっても過言ではない。
 昨年来、沖縄への共感は急速に広まった。
 ・県民大会には、本土から労働組合員ら三千人が参加した。以降も「沖縄のつどい」が各所で開かれ、世代を超え、各層をもうらした連帯の輪が広がった。
 県道一〇四号線越え実弾演習の本土移転では、当該自治体が拒否しているだけでなく、町民組織がつくられ、これに労働組合が連携するなど、新たな反対運動が広がっている。七月七日、大分県日出生台(ひじうだい)演習移転に反対する集会は九州規模に拡大し、一万六千人が参加した。岩国でも六月に四千五百人が、北富士では四千人が集会を開き、抗議の声をあげた。
 最近、臼井防衛庁長官が直接当該自治体の説得にほん走したが、五カ所とも受け入れ拒否を改めて表明した。矢臼別演習場(北海道)を抱える別海町では、町民が臼井長官の訪問に抗議集会をぶつけた。
 また、沖縄の米軍用地強制使用のための「特別立法」に反対する百万人署名運動が、反戦地主・学者・文化人などの呼びかけで始まっている。
 労働組合も立ち上がった。自治労、日教組、全水道、農団労、全労協などは組織方針として「沖縄との連帯」を決め、特に地方組織は自主的な運動を展開している。
 われわれは、今回の判決を受けていま一度決意を新たにし、沖縄といっそう連帯して闘いをさらに発展させなければならない。
 沖縄県の「国際都市構想」は、二十一世紀の基地のない平和な沖縄への明確な指針である。二〇一五年までに基地全面返還を求める「アクションプログラム」とともに、昨年来の沖縄の闘いの政策的基礎、展望となっている。
 「国際都市構想」はこの間、県民各界の支持を得ながら、規制緩和による「経済特別区の創設」、法人税の減税、独自関税や免税店の導入、ノービザ制度など、さらに具体化された。そして、「国際都市構想」を次期全国総合計画(五全総)に盛り込むように政府に迫っている。
 アジアとの交流拠点をめざした「国際都市構想」は、アジアの興隆という新しい時代にかなった、確かな根拠のある構想である。これは、ひとり沖縄だけでなく、二十一世紀のわが国の取るべき進路をも示し、本土のわれわれを勇気づけている。
 この「国際都市構想」の旗をさらに高く掲げよう。これに呼応した闘いを発展させよう。
 われわれは闘って、理不尽な最高裁判決への回答としなければならない。

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