19960705

広範な国民連合・「沖縄アピール」を全国へ

アジアの共生に敵対する
日米安保宣言に反対する一大国民運動を


 「自主・平和・民主のための広範な国民連合」(代表世話人・槙枝元文元総評議長ら六人)は、六月二十二日沖縄で、拡大全国世話人会議を開いた。会議は、日米安保共同宣言に反対し、沖縄のようなたたかいを全国に発展させようとの「沖縄アピール」を採択した。
 翌日の地元紙は、「国民連合、全国に沖縄を再び提起」(沖縄タイムス)、「沖縄の運動を全国に」(琉球新報)と大きく報道した。「アピール」を支持し、全国に広げ、広範な国民運動を発展させるよう呼びかける。
 
国の進路誤らせる日米安保宣言
 「アピール」は、日米安保共同宣言をきびしく批判している。
 「沖縄の米軍基地を、二十一世紀にわたって固定化することを宣言しました。それだけでなく、日米安保の対象範囲をアジア太平洋に拡大し、朝鮮や中国を事実上のターゲットにする日米同盟として再定義しました。 朝鮮半島情勢や台湾海峡問題で米軍が出動すれば、その是非にかかわりなく米軍に軍事協力することを約束したのです。このような道は、アジアに波風を起こし、日本がアジアの国々と敵対する危険をはらむものです」。
 すでに日米両国政府は、十一月をめどに、「極東有事」での日米軍事協力体制や国内法整備などに取りかかった。また、契約期限が切れた米軍用地を強制使用するための特別立法を、秋の臨時国会で成立させようと画策している。
 まさに「アピール」が指摘するように、「このまま安保共同宣言の危険な方向に進むのか、それともアジアの声に耳を傾け、沖縄の人びとと力をあわせて、自主的で平和で民主的な進路を進むのか」、日本はいま重大な選択を迫られている。それは「二十一世紀の日本を左右し、私たちの子や孫たちの将来に重大な影響を与える問題」である。
 重大な選択のとき、政府が踏み込んだ危険な道とのたたかいを正面から呼びかけた「アピール」は、時宜にかない重要な意義がある。
 昨年来の沖縄県民のたたかい、とりわけ島ぐるみの総決起となった一〇・二一大会は、日米安保をめぐる情勢を一挙に進めた。六〇年安保以来、数十年ぶりに安保は国政の争点となった。社会党が村山首相実現と引き替えに「安保堅持」に転換して以降、安保問題は国政の争点でないかのような状況が生まれていた。
 沖縄県民の一撃は、この状況を一変させた。沖縄に連帯する機運が全国に広がった。たたかいの高揚の中で米軍楚辺(そべ)通信所は、政府の不法占拠となった。世話人会議の前日、県議会で成立した基地問題を問う県民投票条例は、いちだんと橋本政権を追い込むものとなった。
 一方、自民・社民・さきがけの橋本連立政権は、普天間基地「返還」で沖縄の基地問題は区切りがついたとのムードを意識的にあおっている。沖縄でのたたかい、全国の沖縄に連帯するたたかいの炎に冷水をかけようと必死になっている。
 だが、かえって炎は広がるばかりである。沖縄では移転候補地周辺自治体の、地域住民あげてのたたかいが発展、県民投票はこれに拍車をかけるにちがいない。本土でも九州の日出生台(ひじうだい)はじめ、基地移転候補地では、自治体ぐるみのたたかいがはじまっている。
 まさに彼我のせめぎ合いである。こうしたさ中に「アピール」が発された。この方向が全国で進むなら、沖縄の人びとをいっそう勇気づけ、政府をさらに追い込む力となろう。

広く深い合意を実現した沖縄の闘い
 沖縄県大田知事は二十一世紀に向け、「国際都市構想」を進めている。戦後の米軍基地依存、復帰後の本土政府の財政支出依存の経済構造から脱却し、自立と繁栄を実現したいという、経済界をふくむ県民要求にこたえる方向である。そのため沖縄の地理的、歴史的、自然的環境を生かして、日本とアジアの交流拠点として発展、繁栄しようという都市構想である。その実現の上で最大の障害となっている米軍基地の段階的撤去を求める、アクションプログラムの実現を政府に要求している。この構想と要求は、平和と県民の人権確保とともに、県民生活、経済に根ざして、保守層や経済界をふくむ県民各層の、幅広い、かつ底の深い合意となっている。
 この経験は全国が学ぶべきである。
 吉元副知事は、「東アジアでの、日本の役割の先鞭(せんべん)をつけたい」と国際都市構想の意義を語ったことがある。アジア、とりわけ東アジア諸国との共生は、二十一世紀の日本の生き方を考えるとき、死活的なことである。沖縄の提起は、ひとり沖縄にとどまらず、日本全体の生き方の問題提起にほかならない。
 「アピール」は、沖縄の国際都市構想を支持し、この道こそわが国が進むべき道であると提起している。
「アジアは戦前の植民地・半植民地から脱して、今や世界の成長センターと言われるほどに、経済を発展させました。経済の発展を背景に自主的な傾向を強め、アメリカぬきでアジア欧州首脳会議を開催するなど、国際社会での発言力を強化しています。そのアジアで日本が、このまま安保共同宣言の方向で進むならばどうなるでしょうか。アジアにおける日本の孤立は必至です。
 日本は地理的、文化的な面からも経済の実際からも、アジアの国々との平和、友好、協力の関係なしには生きていけません。アジアにおける孤立は、あってはならぬ最悪のシナリオです。
 在日米軍基地の縮小・撤去と日米安保の清算によって、アジアの国々の信頼を回復することです。アジアの声に耳を傾け、EAEC(東アジア経済協議体)に参加し、アジアの国々の相互信頼と協議にもとづく平和の枠組み構築に協力することです」。
 重要な問題提起である。戦争か平和かという問題とともに、わが国の二十一世紀の発展方向を切り開くために、EAECなどアジアの提唱する平和なアジア共生の発展方向を支持する世論形成と結合して、日米安保共同宣言反対のたたかいを発展させる必要がある。
 こうした国の進路、「自主・平和・民主」の方向は、広範な国民連合が九三年の結成以来一貫して提唱してきたところである。いまこの方向は、情勢の発展の中で広範な国民連合の政治理念にとどまらず、大田知事を先頭に沖縄県民が現実にめざし、進める政策となっている。
 こうした方向が全国に広がるなら、壮大な展望となるにちがいない。

全国に沖縄を再び提起する
 地元紙が、「全国に沖縄を再び提起へ」と大見出しを立てて報道したのには理由がある。昨年九月の事件直後から広範な国民連合は、本土では諸団体に先駆けて行動を起こした。九月二十八日、全国代表世話人が首相官邸とアメリカ大使館に事件への抗議と日米地位協定の見直し、米軍基地の縮小・撤去を申し入れた。十月二日には東京で緊急の抗議集会と街頭デモを組織し、全国にたたかいを呼びかけた。このたたかいは沖縄現地を激励した。翌日の地元紙は「日米地位協定見直しの声、全国へ」(琉球新報)と大きく報じた。
 全国世話人会議での報告によれば、広範な国民連合は、十四都府県、三十三回の集会の直接の組織者になったという。なかでも昨年十月の川崎集会、本年二月の横浜集会、四月の尼崎集会は、本格的な超党派の集会として成功した。長崎では労働組合はじめ宗教界など有力な団体を幅広く結集した各界連合の集会となった。
 社会党の自己解体と一部連合指導部の裏切りなどで全国的な国民運動に大きな困難が生じている。こうした状況下で、広範な国民連合はまだ十分な組織力を持っていないにもかかわらず、情勢の発展に一定の重要な役割を果たした。広範な国民連合の全国代表世話人の方がた、地方のみなさんの奮闘に、あらためて心から敬意を表したい。
 日米安保共同宣言の道に対抗して、壮大な国民運動の発展が痛切に問われている。組織者としての広範な国民連合の果たすべき役割はますます大きくなっている。
われわれは「アピール」を支持し、広範な国民連合のみなさんとともに、「全国に沖縄を再び提起」するために奮闘する。

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