19960625

消費税率5%アップ決定の暴挙

国民をどこまで愚ろうする気か


 政府・与党は六月二十一日、来年四月から現在三%の消費税率を五%に引き上げることを決定した。
 これは住専国会で国民の圧倒的反対を押しきって税金をつぎ込んだ暴政に続く、国民をまるで無視した言語道断の暴挙である。国民の税金から銀行救済のために六千八百五十億円を取りあげることを強行したばかりなのに、今度は年間五兆円もの税金を国民のふところからまきあげる大増税を決定した。国会の審議にもいっさいかけず、抜き打ち的にである。九月の期限を大幅に前倒しして決めたのは、今秋以降の総選挙に悪影響が出ないようにとの党略があったことは歴然としている。
 政府・与党の政治家どもは、どこまで国民を愚ろうする気か!
 消費税の五%へのアップで、勤労者一世帯当たり年間十四万円の負担増になる。それは雇用不安のなか賃金が抑え込まれている国民の生活を直撃し、先の見えない中小商工業者の営業を脅かす。さらには、一〇%、一五%と際限のない大増税に突破口を開くことになる。
 政府・与党のこの暴挙を断じて許さず撤回させよう。国民をなめてかかっている橋本政権に、国民の怒りを結集し、八八年の消費税導入反対の闘いのように全国各地で国民運動を巻き起こし、きびしい審判で目にものを見せてやらなければならない。

消費税7年間の総点検を
 政府・与党は「五%はすでに法律事項」として、あっという間に増税を決定した。九四年十一月に村山政権のもとで所得税などの先行減税とひきかえに、九七年度から「五%程度」にアップすることを決定していたから当然といわんばかりである。
 だが、この実施には(1)社会保障財源との関係、(2)行財政改革の進行状況、(3)課税方法の適正化、(4)財政再建との絡みなどを検討し、五%以下を含む消費税率を見直す条件がついていた。にもかかわらずやられたのは、わずか四日間の与党間談合で、まともな検討などされていない。
 たとえば「行財政改革」はどうだったのか。特殊法人の見直しや省庁再編・統合などかけ声だけで実際はまったく進んでいない。この苦しいときに、政党への助成金などは必要なのか。消費税は「福祉充実のため」といううたい文句で導入されたはずだ。だが、今年度予算でも年金保険料、老人医療費、医療費の患者負担限度額などが軒並みアップされ、国民の負担は別途に増大した。
 「先行減税分の穴埋めだから当然」というが、増減税の差し引きで減税の恩恵を受けるのは、年収一千百万円以上の高額所得者、サラリーマンの五%に満たない部分だけだ。
 消費税導入から七年、国民は「広く薄く」かける大衆課税が低所得者になればなるほど負担が重くなる逆進性の悪税であることを身をもって知った。とりわけ、この数カ年は産業空洞化、リストラ、規制緩和で国民各層の生活と営業はきびしく、「減税」にもかかわらず重税感は深まっている。今なお世論調査で国民の八割以上が消費税に反対している事実は(毎日新聞五月八日)、その証左である。「超低金利政策」も、国民多数と年金生活者に不利益をもたらしている。弱肉強食が横行し、社会的格差が拡大している。
 政府・与党は、こうした国民の生活の実際から、七年間の総点検をし、国民的論議をすべきであった。
 朝日新聞の投書は、現在の国民の声を代弁している。「不可解なのは、来年から消費税が五%になることが既成事実のように語られていることだ。それはおかしい、という声がどこからも聞こえてこない。そのあたりのことをいつ国民が承認したのだろうか。消費税そのものに反対して選挙に勝ったことのある旧社会党が政権のなかにいながら沈黙しているのはなぜか。財政の苦しいことはみんな知っている。しかし、あんまりだと思わないか」。

財政再建は銀行・大企業の負担で
 住専国会が終わるや否や、政府・与党、マスコミはいっせいに「財政危機」をあおり始めた。梶山官房長官は「財政の破局的な足音が近くで聞こえるような、恐怖感すら持つような状態だ」と述べ、国民負担増の世論づくりを急いでいる。
 わが国の財政が、未曾有といってよい危機的状態にあるのは事実である。今年度予算では、支出が七十五兆円なのに税収は五十一兆円しか見込めず、足りない分を十二兆の赤字国債をふくむ膨大な国債発行(借金)で埋め合わせた。また、一般会計収入にしめる国債収入の割合(国債依存度)は、二八%となった。「双子の赤字(貿易と財政の赤字)」の米国でさえ、一二%である。こうした結果、国債残高の累計は、今年度末には二百四十一兆円となり、先進国中最悪である。それに地方債の百兆円、各種特別会計の赤字、旧国鉄債務二十八兆円などの隠れ借金をあわせると四百兆円を突破、国内総生産(GDP)の九〇%にも達する。 財政再建は、まったなしの課題になっている。問題はどうやって再建するかである。誰が負担すべきか。
 ここではっきりさせねばならないのは、なに故にかくも財政赤字が激増したのかである。九〇年末の国債発行残高は百六十六兆円だった。
 この膨大な財政赤字が、主として九二年八月以来の五次にわたる総事業規模五十九兆五千億円にのぼる「景気対策」、「公共投資」の結果であり、財界・大企業のためにつかわれたことは歴然たる事実である。今年度予算でも公共投資は四%の増額、幹線道路、特定港湾など大手ゼネコン、大企業へ大盤振る舞いされた。六千八百五十億円の税金を投入する住専処理策は、その典型である。 しかも政府・与党は、さらに銀行、大企業のために大盤振る舞いを計画している。住専処理では二次損失分があり、合計二兆円をこえるのは確実である。「首都機能移転」には移転費用だけで十四兆円がかかるという。対米公約の十年間で六百三十兆円の「公共投資」も迫られる。日米安保共同宣言に伴い「思いやり予算」は増額、新中期防衛計画には五年間で二十五兆円が注ぎ込まれる。
 こうした財政を含む政府のさまざまな支援に支えられ、労働者にリストラ犠牲を押しつけて、景気低迷下、大企業、銀行は莫大な利潤を手にした。三月期決算が示すとおりだ。
 だから財政再建は、大企業、大手銀行の負担で行うのが当然である。
 ところが、厚かましくも財界は「大競争時代」への対処を理由に「法人税減税、直接税比率五〇%への引き下げ」を要求、消費税の一二%への引き上げを声高に主張している。新進党・小沢氏の消費税一〇%、さきがけ・武村氏の八?一二%論は、財界の代弁である。要するに、彼らは五%を突破口に際限ない大衆課税で、財政危機を乗り切ろうとしている。
 最近発表された「橋本行革ビジョン」なるものも、国民の社会保障・福祉を切り捨て、大競争時代へ大企業の負担を減らす点に眼目がある。そのための「小さな政府」である。
 こうした大企業、多国籍企業本位で国民に犠牲を押しつける財政再建策、行財政改革に反対し、国民大多数の改革を対置しなければならない。ここでも二つの路線の闘争が本格的に争われるときである。

敵は決して強いわけではない
 税金の取り方、使い方は、国のあり方を根本から規定する重大事である。わが国の進路を規定する日米安保共同宣言といい、この大増税問題といい、この国では二十一世紀を展望する国政の重大事が、国民的論議がないまま決定されている。肝心なことが国会で何一つ決定されないのはブルジョア議会の本質ではある。
 だがこうした事態は、敵の強さを示すものではない。危機が深いのである。われわれはこうした客観情勢の全体、彼我の関係を見抜き、断固たる闘いに立ち上がるべきである。現状を打破する力は国民の中に、世論と国民運動を強めるところにある。日本消費者連盟は「庶民や年金生活者にとって消費税引き上げは重大問題。絶対認められない」と反対運動を展開しようとしている。こうした行動を断固支持する。日本商工会議所の稲葉会頭は「中小企業の多くは五%もの消費税を価格に転嫁することはできず、利益を減殺することになる」と述べている。各業界にも不満がある。これらの人びととも連携し、一大国民運動を組織しよう。労働組合も、自民党などとの裏取り引きや「新党づくり」にばかりうつつを抜かす幹部を押し退け、国民運動の先頭に立つべきである。

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