19960425

第67回メーデーに際して全国の労働者に訴える

日本労働党中央委員会


 第六十七回メーデーに際し、労働者のみなさんに熱烈な連帯の挨拶を送ります。
 四月十七日、橋本首相はクリントン大統領と日米首脳会談を行い、「日米安保共同宣言」を発表しました。
 それは冷戦体制の終結で存在理由がなくなった「対ソ同盟」の日米安保条約を「アジア太平洋地域の安定と繁栄の基礎」と再定義し、「日本の防衛」からアジア太平洋、さらに世界全域をにらんだ日米軍事同盟へ拡大・強化することを宣言しました。衰退するアメリカ帝国主義が自国の利益のために、二十一世紀にわたって日本を「東アジア戦略」にしばりつけ、朝鮮、中国、アジア諸国と敵対させる役割を共同して果たさせようとするもので、そのため橋本首相はこれまでタブーとしてきた「極東有事」の日米軍事協力へと踏み込むことを約束しました。
 これはまぎれもなく安保条約の変質、大改定にほかなりません。
 わが国四千八百万の労働者階級と労働運動の真価が問われています。 今こそ橋本政権の選択に反対し、安保条約破棄の旗を高々と掲げて、わが国の独立・自主、アジアの一員として平和に生きる道を鮮明に対置し、国民大多数を率いてたちあがる時です。

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 新安保宣言は、わが国の進路を深刻な状況に直面させる選択です。
 それは第一に、アメリカ帝国主義の「東アジア戦略」への追随を明確にし、二十一世紀にわたってわが国がその要(かなめ)役を引き受けると約束しました。
 宣言は、日米安保体制を「アジア太平洋地域において安定的で繁栄した情勢を維持するための基礎」と位置づけ、そのために、米軍十万の兵力、うち日本に四万七千を維持すると確認しました。日本側はこれを支えるために、基地の提供と「思いやり予算」などの財政支援を約束しました。また、安保と一体の新防衛計画大綱の役割を確認しました。
 安保宣言文書は米国防総省の「東アジア戦略」(昨年二月発表)のひき写しで、これに調印したことによって日本は今後、その戦略に拘束され、振る舞うことを要求されるのです。「東アジア戦略」は、冷戦後の「世界でもっとも活力ある地域」となっているアジア地域におけるアメリカの国家戦略であり、そこでの市場争奪戦で優位を確保しようとするアメリカ多国籍企業のための戦略にほかなりません。
 しかも重大なことは、このアジア地域に「依然として不安定性および不確実性が存在する」と決めつけ、「朝鮮半島における緊張が続いている」「核兵器を含む軍事力が依然大量に集中している」と、朝鮮民主主義人民共和国、中華人民共和国をターゲットにしています。
 しかも第二に、中国、朝鮮に共同対処するために、わが国が軍事的役割を果たすことまで約束しました。宣言は「日本周辺地域で発生しうる事態」に対処する日米軍事協力の「研究」、「政策調整」を促進することを確認しました。そのために、七八年の「日米防衛協力のための指針」を見直すことをはじめ、直前に調印された「物品・役務相互提供協定
(ACSA)」による後方支援など、有事体制の整備を確約しました。これは、日米軍事協力をいわゆる「極東有事」へと強化する暴挙です。
 この新安保宣言によってわが国の進路は、先の見えない深刻な状況に直面しました。宣言の方向が具体化されるなら、沖縄県民の願いは踏みにじられ、米軍基地が固定化・強化されるのは明白です。わが国は自ら
主権を売り渡すだけでなく、アメリカの戦略にそった軍事干渉、戦争に巻き込まれ、中国、朝鮮と敵対させられるのです。自衛隊が憲法違反の「集団的自衛権の行使」に踏み込み、アジアに出動するのは時間の問題となりました。

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 橋本政権は、このようなわが国の運命を決する重大な選択を、国会にも、国民的論議にもかけることなく、まさに独断で強行しました。
 自民党、社民党、さきがけは、安保共同宣言を「高く評価する」との異例の「与党三党共同声明」を発表しました。新進党も「日米関係の新時代を開くもの」と評価しました。
 だが、この選択はわが国の真の国益をなんらかえりみない愚かな選択と言わなければなりません。
 安保共同宣言が発表になるや、中国政府は直ちに、「二国間の範囲を超えれば当該地域の情勢に複雑な要素をもたらす」と警告し、「極東有事」に台湾問題を組み入れることに反対の立場を表明しました。また、「日本の自衛隊が装備を増強し、防衛の範囲を拡大したら、必ずアジア諸国の重大な関心と警戒を引き起こす」と厳しく批判しました。
 韓国の外務省当局者も「日本の軍事大国化を憂慮しており、それが現実にならないように望んでいる」と警戒感を表明、韓国マスコミはいっせいに日本の軍事大国化に拍車がかかると批判しました。ASEAN諸国も中国敵視に警戒を表明しました。
 新安保宣言についての、アジアからのこうした厳しい批判は、この選択の誤りの深刻さと愚かさを証明するものです。
 新安保宣言は、中国、朝鮮、アジアの立場からみれば、米国の判断しだいで日本が軍事的に敵対することを意思表示したことです。この三月、米国は中国に内政干渉し、台湾近海に第七艦隊を出動させましたが、今後こうしたことが起これば、日本はこれを直ちに支持し、軍事協力すると約束したのです。米軍にわが国の民間空港、港湾まで提供し、自衛
隊は積極的に後方支援し、共同作戦に加わる道を開いたのです。
 これはまさに興隆するアジアに逆らい、わが国の国民の願いと真の国益をかえりみない愚かな選択です。 いまアジアは世界の成長センターとして目ざましく発展し、アジア欧州首脳会議(ASEM)の開催にみられるように国際政治への発言力を急速に増大させています。中国はまさにその中心です。
 他方、すでにわが国の多国籍企業をはじめ中小企業まで、中国、アジアに工場をつくり、経済関係は深くなる一方です。
 こうした状況下で、あえてアジアの信頼を失う道を選択するとは! 

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 こうした政府の愚かな選択を容認して米国に追随し、中国、朝鮮、アジアと敵対するのか、それともアジアとの友好、共存の道を歩むのか。国民の判断が深刻に問われています。
 労働者階級は、「安保条約破棄」の旗を高々と掲げ、米国への追随路線からきっぱりと脱却し、中国、朝鮮、アジアと友好的に、共存して生きる道を選択し、国民大多数の先頭に立って切り開くべきです。
 すでに沖縄県は、二十一世紀の生き方として基地返還アクションプログラムと一対のものとして国際都市構想を提起し、アジアとの交流拠点として平和に生きる道を示しています。わが党はこの道を、日本全体の国の生き方として合意し、ともに切り開くよう訴えます。
 こうした方向にこそ未来があります。冷戦後の世界は多極化の流れが速まり、アジアの興隆は目を見張るばかりです。昨年九月来の沖縄県民の闘いは、安保容認一色に見えた政治情勢を一変させ、日米安保体制を根底から揺さぶりました。
 また、沖縄県民の闘いは断固たる大衆闘争こそが力であることを示し、国民の中に時代を切り開くエネルギーがあることを教えました。この闘いに勇気づけられ、基地縮小・撤去の闘いが全国に広がり、米軍基地の移転候補地では、自治体ぐるみの闘いが力強く発展しています。
 労働者階級は、沖縄県民がはじめた歴史的闘いを受け継ぎ推進することで、先進的役割を発揮すべきです。
 この重要な局面で、連合の中央指導部は、何一つ積極的な役割を演じないばかりか、下部の闘いを抑える役割さえ果たしています。
 だが、連合沖縄をはじめ、この期間沖縄県民の闘いを支えてきた沖縄の各労働組合、これと連帯して闘った各地の連合、県平和センター、単産、単組の労働組合のみなさんは偉大な力を発揮しました。わが国労働者階級は、「平和四原則」、六〇年安保闘争など国の進路を切り開くために、先進的役割を果たした伝統を持っています。こうした伝統を復活させ、歴史的闘いの機関車として奮闘されんことを希望します。
 この闘いは、無力さをさらす連合中央指導部の信頼を失墜させ、労働運動を再構築する上でも重要な闘いとなるでしょう。地に落ちた労働組合と労働者階級の信頼を回復し、先進的階級として力を発揮しようではありませんか。

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