19960315

緊張高まる台湾海峡

祖国分裂策動を許さぬ中国政府・
人民の闘いを断固支持する


 台湾海峡での緊張が高まっている。中国が八日から台湾付近の公海上の着弾地に向けてミサイル発射演習を、さらに十二日から台湾海峡で実弾演習を始めた。他方、米国は横須賀基地やペルシャ湾から第七艦隊の空母インディペンデンス、ニミッツの二隻を中心に海軍機動部隊を台湾周辺に集結中である。
 江沢民国家主席は「台湾当局が祖国分裂を図る活動を停止しない限り、われわれの闘争は終わらない」と中国政府の立場を表明した。台湾は中国の一部であり、中国政府が台湾分裂の策動を座視せず、断固たる措置をとるのは当然である。しかもこうした公海上の演習は、どの国でも行っていることで、他国が抗議するなどは筋違いである。
 ところが米国は「挑発的で無謀」と非難し、第七艦隊を出動させた。わが国政府も中国に「自制」を要求し、マスコミはいっせいに「演習中止」「中国の脅威」を叫びたてている。
 これはあからさまな中国に対する内政干渉である。米国とそれに追随する橋本政権は、表向きには「一つの中国」を守るといいながら、実際には台湾当局の「一つの中国、一つの台湾」「台湾独立」を大いに激励し、中国人民の祖国統一事業に軍事干渉し、重大な障害をつくりだそうとしている。
 これこそ今日の台湾海峡緊張の真の原因である。「自制」すべきは台湾当局と米国である。日本は米国に追随して中国に干渉すべきではなく、「日中共同声明」(七二年)の精神と原則にそった長期の日中友好を進めるべきである。
 われわれは、台湾当局の分裂策動に反対し、外部勢力の干渉に反対して領土保全と祖国統一をめざす中国政府・人民の闘いを断固支持する。

台湾問題の根源は米国の武力介入
 一般に問題の解決には軍事的手段よりも話し合いのほうがよい。だからといって、ことの本質、帝国主義・覇権主義の支配、介入、干渉とそれに反対する諸国人民の闘いの区別、誰が支配し干渉しているか、したがってまた誰が緊張をつくりだしているのかがあいまいにされてはならない。闘争の手段としての「軍事」は、平和ボケした日本人には理解しにくいかも知れない。しかし、現実の世界では、軍事はいまも国際政治の中心的な手段である。
 肝心な問題は、そもそも「台湾問題」とは何か、なぜ発生したか、どんな利害が争われているか、誰が問題解決を困難にしているか、である。あらためてこの問題の歴史を振り返ってみる必要がある。
 第二次世界大戦での日本の敗北は、植民地支配を終わらせた。カイロ宣言、ポツダム宣言などの国際協定によって台湾は中国に正式に返還された。こうして最初の台湾問題は解決した。
 これ以降、台湾問題はまったくの中国の内政問題となった。その意味では、戦後のなんらかの国際協定によって形成されたドイツ問題や朝鮮問題とも性質が異なっている。
 一九四九年、中国共産党が指導する人民革命が勝利し、中華人民共和国が成立した。この時、人民に見捨てられた国民党の蒋介石一味が台湾に逃げ込み、戒厳令をしき、住民を支配して、「中華民国」を名乗った。同時に、朝鮮戦争が勃発した。
 中国革命の影響を恐れたトルーマン米国大統領は、五〇年六月「台湾に対するあらゆる攻撃を阻止せよ」と第七艦隊を台湾海峡に出撃させ、相互防衛条約を結び航空部隊を台湾に進駐させた。台湾は中国から分断され、米国の勢力圏に組み入れられた。中国人民の民族解放と祖国統一事業は、台湾海峡で米国の武力介入によって阻止されたのである。
 これが今日まで続く「台湾問題」発生の真相である。国民党・台湾当局の台湾支配はこうしたなかで形づくられた。台湾に国民党「政権」が成立し存続できているのは、もっぱら米国の武力介入の結果であり、米軍の後ろだてによるものであって、それなしには一日たりとも存立できない。
 以降米国は、この二つの戦争を口実にアジアに膨大な米軍を駐留させ、台湾分断を固定化し、台湾を中国の正統政権として国連の安保常任理事国メンバーに仕立てあげた。
 わが国も、こうした米国の中国包囲戦略の一環に深く組み込まれ、五一年、サンフランシスコ講和(片面)条約、日米安保条約の締結と同時に、蒋介石一味との「日華条約」を押しつけられ、中国敵視、台湾分断の片棒を担いだ。
 だが、こうした虚構は長くは続かない。六〇年代末、ベトナム戦争での敗北による米国の力の衰退、中国の発展、国際情勢の変化のなかで台湾問題に変化が現れた。七一年、国連における中華人民共和国の合法的権利が回復され、台湾当局は国連から追放された。わが国は七二年、中華人民共和国政府を「中国の唯一の合法政府」「台湾は中国の不可分の領土」との「日中共同声明」を発表し、国交を回復した。米国も七九年、中国と正式に国交を樹立し、「米国は中国は一つであり、台湾は中国の一部であるという中国の立場を認める」と表明した。こうして「一つの中国」、「中華人民共和国政府が唯一正当な政府」の原則は、国際社会に広く確立された。
 これで台湾問題は基本的に解決したはずだった。だが、台湾の国民党一部勢力も米国政府も諦めなかった。米国は七九年、台湾が受けた脅威にたいしては「対抗行動を決定しなければならない」との「台湾関係法」を成立させた。「米中共同コミュニケ」に反するものだった。
 以後、米国の対台湾関係は「一つの中国」政策を掲げながら、民間経済関係を超えて兵器の供与を続けるなど、台湾当局の支配を支えた。

冷戦後に強まる米国の台湾テコ入れ
 冷戦終結の情勢変化によって、台湾問題は新たな局面を迎えた。成長するアジア市場での権益確保をねらう米国は、強大化する社会主義中国を「国際社会の一員に取り込」む「積極的関与政策」をとり、台湾当局の「独立」志向を利用して、中国を牽制するようになった。九二年には、最新鋭のF戦闘機百五十機の売却を決定、フランスも最新鋭のミラージュ戦闘機六十機の売却を決定した。これらの引き渡しが今年からはじまる。九四年には、「新台湾政策」をうちだし米国経済関係政府高官の台湾訪問、台湾高官の米国「通過」などを容認、「政治的」関係を深めた。昨年末には空母ニミッツに台湾海峡を通過させた。
 台湾当局者は、こうした米国の強力なテコ入れに激励され、また経済力を背景に「一つの中国、一つの台湾」政策を公然と唱え、新たな延命を図っている。いわゆる「実務外交」で各国との関係強化を進めた。わが国にも九四年、徐立徳「行政院副院長」が来日した。昨年六月の李登輝「総統」の訪米は、台湾の国際社会での地位を飛躍的に高めるねらいがあった。
 こうして今回の総統選挙では、「直接選挙」を演出することで、「一つの中国、一つの台湾」「台湾独立」の流れを一挙に促進し、国際社会に「政治実体としての台湾」を認知させようとしている。
 以上が歴史的経過である。中国人民の祖国統一を妨げ、台湾海峡に波風を立てているのが誰か、明白であろう。
 米国の軍事力による台湾分断、台湾当局へのテコ入れこそ、諸悪の根源である。台湾当局の米国のテコ入れを当てにした「一つの中国、一つの台湾」「台湾独立」の策動こそ、今日の緊張を招来した原因である。 中国政府・人民には、外部勢力の内政干渉を許さず、祖国分裂策動と闘って祖国統一と領土保全を守る権利がある。中国の軍事演習は、その重要な闘いの一環である。
 米国は台湾当局へのテコ入れ、中国への不当な干渉を直ちに中止すべきである。米国が「米中共同コミュニケ」の原則を厳守し、台湾との「政府間」関係を破棄し、Fの引き渡しなどを中止すれば、事態は直ちに緊張緩和に向かおう。台湾当局が「独立」策動を中止すれば、台湾両岸関係は一挙に平和統一に向かって動き出そう。
 シンガポールのリー・クアンユー前首相は最近、「台湾は米国を利用して独立を追求すべきではない」と批判している。問題の本質を衝いた発言である。

戦争の危険煽る日米政府
 米国は中国の演習を「挑発的で無謀」と非難し、「必要なときには役立つような体制になっていなければならない」(クリストファー米国務長官)とインディペンデンスとニミッツの二隻の空母など機動部隊を台湾周辺海域に急派した。米国こそ、大規模な軍事挑発を行っている。
 重大なのは、わが国橋本政権が米国に追随し、この軍事挑発、干渉の片棒を担いでいることである。
 ニミッツや駆逐艦などはいずれも、政府の容認の下、横須賀米軍基地から出撃した。二月二十三日急きょ開かれた日米首脳会談も台湾海峡情勢に焦点をあわせたもので、「中国の自制」を要求した。しかも、橋本首相は訪米に先立って、外務省、防衛庁を中心として「日米防衛協力のガイドライン」の見直しに着手、その旨をクリントン大統領に伝えたという。直後に来日したプルアー米太平洋軍司令官と自衛隊の西元統合幕僚会議議長は「自衛隊と米軍が共同訓練などを通して即応態勢を向上し、周辺地域に示していくことが大事だ」と合意、中国などを強く牽制した。
 また、梶山官房長官や山崎自民党政調会長らは最近、「集団的自衛権」に言及している。こうした動きは危険きわまりないことである。わが国政府、与党は自らが何をしているかわかっているのだろうか。政治のまったく関与しないところで、わが国は戦争の瀬戸際に立たされているのである。
 米国は昨年二月、「東アジア戦略」を発表、中国を「新たな敵」に仕立て上げることで、今後二十年も十万の米軍を駐留させる根拠とした。いま、この戦略を正当化し、具体化を促進するチャンスとばかりに、台湾海峡の緊張を煽り、拡大している。
 橋本政権もこれに連動し、四月クリントン来日時に予定されている安保「再定義」、日米軍事同盟強化への国民合意をとりつけるための世論操作に利用している。また、日米安保の重要さを印象づけることで、沖縄県民を先頭に高まる米軍基地縮小・撤去の怒りと国民運動を外らそうというねらいも明白である。
 米国とわが国政府の中国への内政干渉、軍事挑発に反対。
 沖縄と横須賀など全国の米軍基地からの米軍の出撃に反対。
 米国の「東アジア戦略」、安保「再定義」に反対。日本とアジアからの米軍の撤退を。
 日中友好、協力関係の発展こそ、わが国の発展、アジアの平和を保障する。

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