19960305

沖縄県の「国際都市構想」、「アクションプログラム」

アクションプログラムを支持し、政府に実行迫る運動を


 一月三十日、沖縄県が政府に提示した「国際都市構想」、「基地返還アクションプログラム」が各方面で反響を呼んでいる。本紙二月二十五日号でも、その概要と沖縄県担当者、自治体首長の反応を紹介した。
 これは二十一世紀の沖縄の県づくりのグランドデザイン(基本構想)で、二〇一五年をめどにアジアとの国際交流拠点、国際都市として形成する構想である。その障害となっている米軍基地を三段階に分けて返還させようとするアクションプログラムである。
 大田知事は、全国へ向けた「沖縄からのメッセージ」の中で、そのねらいやポイントを次のように述べている。「私の基地問題に対する基本政策は『来るべき二十一世紀に向けて若い世代が希望の持てる基地のない平和な沖縄』を目指し、米軍基地の整理縮小を促進するとともに基地を産業振興や生産の場に転換していくことであります。アジア太平洋諸国との長い交流の歴史をもつ沖縄の特性を活かし、日本とアジアを結ぶ結節点として国際都市を形成し、アジア太平洋地域との国際交流の大きな役割を果たしていきたいと思います」。
 地域の特性を活かし、時代にかなった、夢のある意欲的な県づくりの構想である。しかも二十一世紀のわが国の進路について「もう一つの道」の提起が込められている。
 この提起は、地位協定の見直し、基地の整理・縮小の要求を掲げて島ぐるみで決起した沖縄県民の闘いに、明確な展望を与え、新たな段階に引き上げる武器となろう。
 われわれは、沖縄県の「国際都市構想」と「アクションプログラム」を支持し、自治体を含む広範な各界の共感を組織して政府に実行を迫る全国的運動を呼びかける。それは安保「再定義」に反対する闘いの重要な構成部分となるであろう。

地域の特性活かした画期的な構想
 「国際都市構想」はまず、「国際環境変化の中の沖縄」という国際的視野から沖縄の特性を設定している。かつての琉球王国時代の「大交易時代」にふれ、アジアの重要な貿易拠点だった沖縄は日本の中でも最も豊富な国際交流の歴史をもつ地域と述べている。そして現在、国際環境が大きく変化し、アジア地域が「成長センター」として二十一世紀の世界経済をリードする役割を果たすであろうことに着目、沖縄は東アジア(日本、中国、朝鮮半島)と東南アジア(フィリピン、タイ、マレーシアなど)の結節点に位置する。この歴史的、地理的条件を活かせば、「国際交流拠点」としての役割が果たせる、ここにチャンスを求めるべしと結論づけている。
 次に「わが国における沖縄の位置」「沖縄に期待される役割」が述べられる。「アジア唯一の経済先進国」となった日本の必須の課題は、アジアに残した負の歴史的遺産の清算もあり、「アジアの安定と発展に向けた平和的貢献」だと指摘する。
 わが国の中で最も「親アジア的」素養を備えている沖縄は、アジアと日本を結ぶ「南の交流拠点」を担える。沖縄の目指すべき方向は、「経済文化交流」「平和外交」「国際技術協力」に立脚した貢献を行う「アジアの掛け橋」を担う国際都市の形成である。
 以下、各地域の地域特性に合わせた整備計画のゾーニングを、マスタープランの素案に描いている。
 「基地返還アクションプログラム」は、この「国際都市構想」を整備していく上で、沖縄本島の二〇%を占める米軍基地が障害になるとして、二〇〇一年、二〇一〇年、二〇一五年の三段階に分けて基地の全面返還を求めるものである。
 「国際都市構想」は、地域が持っている特性、優点を徹底的に活かし、そこに住む県民大多数の立場に立って、その県民の知恵とエネルギーに依拠して主体的に県づくりをしようという点に優れた特徴がある。
 他の多くの県の基本構想が、国がつくった全国開発計画(上位計画)の引き写し、あるいは中央依存で、地域からの発想が弱いのと比較すると際だった特徴がある。借り物でない、土着の強さを感じさせる。
 それでいて独りよがりでなく、時代の流れを見据え、国際的にも受け入れられる現実に根拠のある構想となっている。県内の自治体はもとより、経済界も含む各界に歓迎されているのは、当然である。
 地元経済界の有力者である沖縄電力相談役の座喜味氏が「これまでみんな、沖縄をどうしようかと思い悩んできた。これほど国際化を際立たせ、大胆に構想を打ち上げたことはなかった」と国際都市構想の画期的意義を述べ、支持している。「(軍事)戦略的な沖縄の重要性を逆にみると、国際化に適している」と構想のポイントを評価し、「地方の時代とは地方が自立し独自に責任をもつこと」と指摘している。
 いまポスト四全総の全国総合開発構想づくりが国で進められ、地方でも地域開発構想が検討されているが、国際都市構想は重要な問題提起をしているように思われる。

21世紀の日本の進路に問題提起
 国際都市構想の持つもう一つの重要な意義は、二十一世紀のわが国のとるべき進路について日米基軸に代わる「もう一つの道」、アジアの一員として生きる道を提起し、その先べん役を買って出ていることである。
 吉元副知事は「東アジアにおける日本の役割、その先べんを沖縄でということだ。沖縄は自分たちの特性、地域性、技術を目の高さでやっていくことなら、十分になえる」といっている。
 冷戦後の世界の趨勢は多極化であり、アジアは世界経済の「成長センター」として急速な発展をとげ、EAEC構想、ARF(ASEAN地域フォーラム)など政治、安全保障面でも自立、自主を求めている。
 経済関係は急速に深まっているが、わが国はアジアに政治としてどう対応するのか。アメリカ一辺倒のこれまでの路線を継続するなら、アジアの期待に応えられず、アジアから孤立し、二十一世紀の繁栄は考えられない。安保「再定義」の道でアメリカの国益に追随する道ではなく、安保を破棄し独立・自主を確立してアジアの一員として生きる道にこそ日本の将来展望を見いだせる。
 「究極な点では日本政府が東アジアでどのような外交戦略を持ち、東アジア全体の安全保障にどのような手を打っていくのか」(吉元副知事)との指摘は、沖縄県がこの構想を通して鋭く提起している問題であろう。

政府に実行迫る全国的運動を
 沖縄県では、「国際都市構想」、「アクションプログラム」を具体化するための県民各界の合意形成が図られている。
 一月九日には、県と五十三市町村でつくる「国際都市形成等市町村連絡協議会」で「アクションプログラム」への基本合意がなされた。
 経済界はどうか。基地経済からの脱却のカギを握る県経済団体会議(商工会議所、中小企業団体中央会、経済同友会、農協中央会など八団体)は、一月二十二日の県との協議で「基地撤去の訴えだけでなく総合的な跡利用計画に着手したこと」を評価して賛意を表明し「実現には国の制度支援が不可欠」と指摘した。
 二月二十七日に沖縄タイムス社が実施した町村議員対象の緊急アンケートの結果によれば、「国際都市構想を評価する」八五%、「アクションプログラムを評価する」七五%と大方が支持を表明した。
 県民各層と自治体の期待は高まっている。沖縄では、戦後五十年続いた米軍基地からの脱却を目指す具体的な構想提起によって、基地縮小の闘いは、新たな展望と力を獲得しつつある。
 国会では沖縄県選出の議員が超党派で政府に対し「共同文書」への米軍削減の明記や「アクションプログラム」にもとづく基地縮小を提言するよう迫っている。
 われわれは沖縄県民の切なる願いに応え、「国際都市構想」と「基地返還アクションプログラム」を支持し、政府に実行を迫る運動を呼びかける。この運動の発展は、ひとり二十一世紀の「基地のない平和な沖縄」づくりに寄与するにとどまらない。安保「再定義」によって、わが国が米国の世界戦略に深く組み込まれ、亡国の道に踏み込むのを阻止する大きな力となる。独立・自主、アジアの一員として展望を切り開く、確かな力となろう。

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