19960215

96春闘

財界の本格的攻撃にストライキで闘おう


 九六春闘が本格的にスタートした。
大幅賃上げ、首切り・失業反対、労働強化反対など切実な要求を実現するため、一千二百万の組織労働者はストライキにたち上がり、団結した力で資本家側に迫ろう。沖縄・安保、「住専問題」などわが国の命運にかかわる全国民的な政治闘争の先頭に立って橋本政権と闘い、財界の推し進める政治と対抗して国民的共同戦線を形成する役割を担おう。冷戦後の世界市場争奪戦に生き残るため、労働者に本格的攻撃を加えてきた財界・多国籍企業と根本的に闘える労働運動の再構築をめざして一歩を踏み出すときである。

現状にとどまれなくなった財界
 例年のごとく日経連は、「構造改革によるダイナミックな日本経済の実現に向けて」と題する今年度版労働問題研究委員会報告を発表した。 賃金決定に当たって、(1)「支払能力に余力があれば」、第一に「雇用の維持を最優先」し、第二に「賞与・一時金」に振り向けるべきで、ベース・アップはすべきでない、(2)「生産性の向上が見込めなければ」、ベース・アップは「論外」で、「昇給制度の見直し」「初任給の凍結」に手をつけるべきである、(3)労働時間の短縮に伴うコスト負担増に対処するために、「ホワイトカラーの生産性向上」のための「裁量労働制などの法的規制緩和」、「雇用を守る観点」から「ワーク・シェアリング(雇用の維持のために行う削減時間分に応じた賃金の削減)」を検討すべし、と提起している。
 要するに、財界は「これ以上の賃上げは困難」と四年連続の「ベア・ゼロ」論を主張し、春闘方式の見直しの対決姿勢である。
 だが、今年度報告の最大の特徴は、「定昇制度の見直し」、「初任給の凍結」、「ワーク・シェアリング」など、戦後長期間に形成してきた「日本的雇用慣行」を財界の側から撤廃し、労働者に容赦のない攻撃をかけてきた点である。
 昨年五月、日経連は「新時代の『日本的経営』」という新しい労務対策の指針を発表したが、その線に沿って九六春闘に臨んでいる。
 「新時代の『日本的経営』」とは、なにか。労働者にとってどういうことを意味するか。
 それは、わが国の財界・多国籍大企業が、冷戦後の激しい国際的な市場争奪戦、「大競争時代」に勝ち抜くために打ち出した、新たな労務管理の指針である。そのポイントは、終身雇用制や年功序列型賃金制など「日本的雇用慣行」を撤廃し、より効率的な、安あがりの制度にとって替えようというものである。
 具体的には第一に、雇用の流動化、雇用形態の多様化である。企業が、必要なときに必要な労働力を、より安価に調達し、企業の思うように働かせ、かつ自由に解雇できる雇用システム、いわば「労働力のカンバン方式」をつくることをめざしている。労働者は「長期蓄積能力活用型」、「高度専門能力活用型」、「雇用柔軟型」の三つのグループに分けられる。第一のグループは、これまでのような長期雇用であり、賃金も従来と同じように月給制か年俸制で、昇給もある。他の二つは期限付きの有期雇用契約のグループであり、従来のような昇給はない。一番目のグループに属するのは企業の基幹的部隊で、少数にし、パート、派遣労働者のような「不安定雇用者」をたくさんつくって、総人件費を大幅に削る。
 第二に、年功的定期昇給制度を見直し、職能・業績重視の賃金制度の導入である。
 こうした新たな労務政策は、労働者にとって、戦後わが国の労働運動が闘い取ってきた成果、諸権利をすべて剥奪する容赦のない攻撃を意味する。「大失業時代」の到来である。

資本の側の攻撃は進んでいる
 すでにここ数カ年、現場ではそれを先取りするような資本の側からの攻撃が進んでいる。
 リストラ、規制緩和によって、労働者には首切り、人べらし、出向・配転、転籍、労働強化、賃金抑制などすさまじい攻撃が襲いかかった。それは全面的な攻撃で、中小企業だけでなく大企業でも、現場労働者だけでなく事務職や管理職でも、製造業だけでなくサービス業にも、中高年だけでなく若年層にも及んだ。
 その結果、完全失業率は昨年十一月にはついに三・四%、一九五三年の調査以来最悪となった。完全失業者は二百十八万人となった。とりわけ、十五?二十四歳までの若年の失業率が高い。学校を卒業しても就職の出来ない若者が急増した。
 さらに、「正規雇用者」の割合が減り、パートなど「不安定雇用者」が一千万人、二割を超えた。
 賃金抑制攻撃も進んだ。賃上げは、九一年以降五年連続で前年を下回る妥結、昨年は賃上げ率二・八三%と史上最低となった。実質賃金は九二年、九三年と連続して前年比マイナス、名目賃金でも民間労働者の九三年の「平均給与」は四百五十二万円で戦後初めてマイナスとなった。
 また、大企業と中小企業、組織労働者と未組織、正規と非正規、男と女、都市と地方など各方面で賃金格差は拡大した。国税庁の「九四年民間給与実態統計調査」によると、五千人以上の大企業の平均年収六百十五万円にたいして九人以下の中小零細企業では三百四十七万円である。 日経連の今春闘方針は、こうした労働者への攻撃をいっそう本格的に、全線にわたって拡大し、貫徹しようとするものである。

四千八百万労働者の力に依拠して
 四千八百万人余のわが国労働者階級はこうした状況に当面している。どう闘うべきか。
 わが国最大の労働組合ナショナルセンターである「連合」指導部の方針では、もはや闘えないことが明らかになってきた。先に述べたここ数カ年の労働者の労働条件、生活条件の実態は、「連合」指導部の方針の無力さを示すものである。
 すでに「連合」内部、金属機械、ゼンセン、ゼンキン連合など中小労組から厳しい批判が出ている。
 「成熟化社会への挑戦」と題する九六?九七年度運動方針は、財界のすすめる「経済構造の転換」と軌を一にしており、「企業内における付加価値配分・是正のみでは不十分であり、社会全体における公正・公平な分配を実現することがあわせて必要」と職場での労働者の団結、ストライキをますます回避する方向である。これでは、せいぜい大企業のひとにぎりの「正規雇用者」の要求を満たすのが精一杯で、大多数の労働者の要求は切り捨てられる。
 求められているのは、「不安定雇用者」、完全失業者を含む四千八百万労働者全体の要求を実現する方針であり、闘いである。敵の容赦のない攻撃は、労働者の反撃を呼び起こさずにはおかない。「連合」指導部の支配も不安定なものである。労働者の中に闘うエネルギーがあり、打ち破る力もここにある。ここに直接依拠して闘争を発展させよう。
 第一に、職場での労働者の不満、要求、怒りのエネルギーを汲みあげ、団結の力で、ストライキで断固闘おう。連合大会で全国一般の代議員が「連合の弱さは運動が欠けている点だ」と指摘したが、これは肝心な問題提起である。要求が実現できるかどうか、どの程度かは、決定的には労資の力関係である。労働者の団結した力、ストライキ、これだけが労働者の唯一の確かな武器である。この労働運動の基本が「制度・政策」の取り組みの中で忘れられてきた。これを復権しなければならない。  第二に、労働者の要求だけでなく、国の運命にかかわる全国民的な政治闘争を先頭で闘うことである。
 とりわけこの時期、沖縄県民と連帯して「米軍基地の縮小」「日米地位協定の見直し」を要求し、安保「再定義」に反対して闘うことは、重要である。沖縄県民は、わが国の進路に重大な問題提起をした。これを支持し、連帯できるかどうか、労働運動が問われている。また、「住専問題」で国民各層と共に闘うことも大切である。労働運動はこうした全国民的政治闘争に合流して闘ってこそ鍛えられ、国民各層の中に広範な支持を獲得できるであろう。
 第三に、こうした闘いを意識的に発展させるために、先進的活動家は「企業家なしに世界を運営できる」という社会主義的観点を確立しなければならない。「日本経済、企業がつぶれては元も子もない」といって賃下げや首切りを強いる財界に対して、「労資協調」で闘えないことは明白だからである。

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